インタビュー
「Android Wear×Ingress」がついに実現! Niantic Labsハンケ氏に聞く
「Android Wear×Ingress」がついに実現! Niantic Labsハンケ氏に聞く
これからの最新機能、追加メダルも明らかに
(2015/2/27 23:00)
街中にあるアートや寺社を訪れ、リアルを舞台に“陣取り合戦”を楽しむ「Ingress」が、いよいよスマートウォッチのプラットフォームであるAndroid Wearと本格的に連携することになった。グーグル社内のスタートアップで、Ingressを開発・運営するNiantic Labs創設者のジョン・ハンケ氏が今回、テレビ会議での本誌インタビューに応じ、「もしジョギングをしていても、気軽に楽しめる。ユーザー体験をサポートするデバイスだ」と語った。
これまでも通知だけであればAndroid Wearでも受信できたが、本格的な連携では何ができるようになったのか。その詳細、そしてこれから導入される新機能と、エージェント必見の情報をお伝えしよう。
Android Wear×Ingressでできること
ハンケ氏
今回、案内するのは、「Android WearでIngress」がプレイできる“Ingress on Watch”、というものです。今後、1カ月程度で提供を開始する見込みです。全ての機能が利用できるわけではありませんが、ポータル(2つの陣営に分かれたユーザーが取り合う場所、街中にあるアートなどが登録されている)に対して、攻撃や占有(デプロイ)、アイテムを入手できるハックといった基本的なアクションが可能になっています。
基本的な流れを紹介しましょう。まずAndroid WearのIngressアプリをアクティブモードにします。これでポータルが近づけば通知してくれるようになり、一定の範囲の中であればハックなどが可能になります。攻撃を受けているときにはリチャージも可能で、ユーザーのエネルギー(XM、エキゾチックマター)がなくなれば、回復アイテムのPowerCubeもワンタップで利用できます。コンパス対応のAndroid Wearデバイスであれば近くのポータルまでの方向、距離も表示されます。
Niantic Labs 川島 優志氏(以下、川島氏)
レンジに入ったら通知という形にするかどうかは現在検討中です。Android Watchのディスプレイを長押ししてメニューを呼び出し、アクションを選ぶ形です。ポータルがレンジ内であれば、そこで操作できるアクションが表示されます。通常はまずハックでしょうね。画面をスワイプして他のアクションを選べます。
ハンケ氏
ウォッチ版のIngressのデザインは、個人的に好きな仕上がりで、たとえばレゾネーターもそのディティールがよくわかると思います。ウォッチフェイス(画面デザイン)は丸形、角形どちらもサポートします。
アクティブモードは、バッテリーのことを考慮して、1時間経てばオフになります。ユーザーの操作で延長することも可能です。
――より多くのアイテムを得られるグリフハック、あるいは周辺のポータルを訪ねていくミッションは利用できますか?
ハンケ氏
ミッションとグリフハックは検討中で、最初のローンチに含まれていません。基本的に全ての機能を提供するのではなく、よく使うアクションを簡単にスマートウォッチでできる、というコンセプトです。
――では、Android Wearだからこそ、という機能はありますか?
ハンケ氏
一度、ポータルをハックすると、次のハックまで一定の時間がかかるようになっていますが、この待ち時間を示す“クールダウンタイマー”機能を入れるかどうか検討していますが、まだ最終的に決まっていません。
繰り返しになりますが、ジョギング中などタップするだけでプレイする、つまりIngressだけではなく、他のアクティビティもあわせて楽しめるようにするという狙いがあります。デザインは川島さんが担当しました。ボイスコマンド(音声認識)による操作は面白いアイデアですが、まだ対応する予定はありません。
川島氏
Ingressをプレイする上で、簡単にアクションを起こせることを目指しています。ジョン(ハンケ氏)も述べましたが、フル機能を実装するのではなく、より安全な環境で楽しめるように、と思っています。
――スマートフォンなしで、つまりAndroid Wear単体でも楽しめますか?
ハンケ氏
スマートウォッチ用のmicro APKを用していますが、現在はまだスマートフォンが必要です。将来についてはまだ決めていませんが、いずれにせよ、みんなスマートフォンを持ち歩いているわけですから、スマホなしでいい、というのは最初の想定に含む必要がありませんでした。今後、スマートウォッチの機能が拡充され、スマートフォンに近づき、スマートウォッチだけ身に着けて過ごす、という状況になってくれば(単体アプリのことを)考えるかもしれません。今回の目的は、あくまでスマートウォッチでIngressへ簡単にアクセスできるということです。
――なるほど。もし、今、利用できるなら、このインタビュー中でもハックできますね……。
ハンケ氏
ええ、大事なひとと過ごすディナーの最中、あるいは重要なビジネスの会議の間であっても、さりげなくプレイできる、かもしれませんね(笑)。
あわせてNiantic Labsが提供するもう1つのアプリ「Field Trip」のことも紹介させてください。こちらもAndroid Wearに対応し、ロケーション情報や写真もスマートウォッチ上で楽しめるようになりました。
――Ingressのアプリは2週間ごとにアップデートすると、昨年5月、石巻でのインタビューで教えていただきましたが、Android Wear版はどうなりますか。
ハンケ氏
スマホのIngressアプリ、そしてAndroid Wearアプリはともに2週間ごとに最新版を提供していく予定です。
――このほか現時点で予定しているAndroid Wear用の機能は?
ハンケ氏
面白いアイデアはたくさんありますが、何も決まっていません。個人的には心拍計機能を活用すれば、何かクリエイティブな機能に繋がるのかなと思っています。
――近い将来、アップルから「Apple Watch」が登場する予定です。対応しますか?
ハンケ氏
ローンチの動向を含め、状況はよく見ていきますが、まだ決定していません。
より楽しめるようにバランスを調整
――近い将来にIngressに導入される新機能はありますか? ネットでは“ブーストリチャージ”という機能の噂が出ていましたが……。
ハンケ氏
そうですね、エネルギー(XM)全てを使う“スーパーリチャージ”が近く登場する予定です。誰でも利用できる機能です。高レベルのエージェントはエネルギーのタンクが大きいので、その分、リチャージの量も大きくなりますね。
――スーパーリチャージを導入するのはなぜですか?
ハンケ氏
この機能により、ポータルが攻撃されたときにスピーディに守れるようになります。長押しで利用できる機能として、以前より温めてきた機能ですが、スーパーリチャージを導入できる環境になったかと思います。
AXAシールドやスーパーリチャージの導入で、どうしてもゲームバランスが少し防御よりにシフトすることになると認識しています。
――それは攻撃についても、新しい機能、新しいアイテムが出てくる、ということになるのですか?
ハンケ氏
んー、そうですね。バランスも大事ではあるのですが、今回の新たなアイデアによるバランスでもさほど問題ないと思っています。我々としては、よりゲームを面白くする新しいアイテム、新しいオブジェクト、新しい振る舞い、といったところに注力できればと考えています。
新メダル「イルミネーター」やグリフハックで経験値入手
ハンケ氏
それから新しいメダルを今週、追加します(※編集部注:日本時間の27日早朝に実装)。これはフィールド構築時に取得できるMUs(マインドユニット、フィールドの広さに応じて得られる)に応じたもので、過去の実績を含みます。名前は「Illuminator(イルミネーター)」になります。
ローカライズも進めて、新バージョンではUIのほとんどが日本語化されます。具体的な時期は未定で、3月に京都で実施されるイベントより前になるかどうかわかりません。しかし近い時期になります。もちろん英語の方が良いという方もいるでしょう。デフォルトの言語設定があっても、表示言語を変更できるか検討しています。
もう1つ、新機能があり、グリフハックするとAP(経験値)がもらえるようになります。小さな変更ですが、エージェント(プレイヤー)の皆さんには喜んでもらえるかなと。
まだご紹介できるような詳細はないのですが、Intel Map(WebブラウザでアクセスするIngress用地図)から、近隣にあるミッションを探せる機能も検討中です。
――Intel Mapのスマホアプリ化は検討していますか?
ハンケ氏
短期的にはないですね。長期的には、Ingressのスマートフォンアプリと統合できればいいとは思いますが。
――コラボについても教えてください。昨年スタートしたローソンとのコラボですが、たとえば店頭でアイテムを入手できるようにはなっていませんが、近い将来、何か実施されますか?
ハンケ氏
現在のところ、何かアイテムをリアル店舗で入手できればいいなと話し合ってはいますが、近々に何かでるかというわけではありません。
他のパートナーとのコラボについては、現時点で明らかにできることはありません。今後、時間が経過すると新しいパートナーは登場するでしょう。
日本、世界で2番目の規模に
――インタビューの残り時間もあまりありませんが、いくつか教えてください。日本におけるIngressのユーザー数は?
ハンケ氏
日本のユーザー数で明らかにできるものはありませんが、グローバルでのダウンロード数は1000万件に達しており、日本の規模は、ドイツなどを抜いて米国に次ぐ2番目の規模になっています。
――12月に東京でイベントが開催されましたが、そこで見えた課題はありますか?
ハンケ氏
「Darsana Tokyo」はすごく参考になりました。(5000人という)あれだけのユーザーが集まるということで、ゲームのルールを変更することも必要で、サーバーでの対応も必要だということを学びました。そうしたテクニカルな面と、ユーザー人口を踏まえたルールの設計を3月に開催する京都でのイベントでも反映できればと思います。
それから、東京でトライしたことの1つは、ファンが作ったアイテムを頒布するというマーケットプレイスでした。これも非常に良かったので、京都でも実施することになりました。
――最後に1つ、新メダルの導入などがありますが、現在レベル16が最高となっている状況はどうなるのでしょうか。
ハンケ氏
短期的には、何も申し上げることはないのですが、エージェントの方々の労力に見合った報酬を出すべきだと考えています。
――今回はありがとうございました。