インタビュー
「ドコッチ 01」開発者インタビュー
「ドコッチ 01」開発者インタビュー
異色のウェアラブルデバイス開発の背景
(2015/2/4 09:00)
NTTドコモが小学生低学年向けに企画し、3月に発売される予定の腕時計型端末「ドコッチ 01」。近年登場したウェアラブルデバイスの中でも異彩を放つ端末だ。ドコモがなぜドコッチを販売するのか、開発の裏側を同社担当者に聞いた。
きっかけは店頭での保護者の声
ドコモがドコッチの開発に本格的に乗り出したのは2014年初頭のこと。4月の新料金プランの「カケホーダイ&パケあえる」発表を前に、月額500円の追加料金で通信モジュールを搭載したM2M機器を利用できる「デバイスプラス500」という料金プランが検討されており、同プランをうまく活用できるような商品が求められた。
「ドコッチ」が発表された時には「妖怪ウォッチ」のブームもあり、そうした玩具的な発想から登場したとみる向きもあったが、同端末の企画を担当したM2Mビジネス部 コンシューマM2Mビジネス スマートホーム担当課長の松藤英文氏はこれを否定する。
同氏は経緯について、「数年前まで地方の支店で営業を担当しており、ドコモショップや量販店などの店頭の販促企画を日々考えていた。当時、キッズケータイの販促企画をやって、法被を着て店頭に立つなどしていたが、実際に店頭でお客様に伺うと、『たしかにキッズケータイは女の子にはいいんだけど、男の子はなくしたり壊したりするし……』といった声が多く聞かれた。新料金もあるが、そうしたニーズを反映したのがドコッチ」と振り返る。
腕時計型やネックレス型など、さまざまなデバイスの形が候補に挙がる中、ドコモが重きを置いたのは、なくしたり壊したりしにくいことと、子どもが身に着けたくなる魅力があること。前者は保護者側の要望、後者は子供側の要望ということになる。
プロダクト部 第三商品企画担当の塩川直人氏は、「壊れにくさについては、スマートフォンと同じ品質要求で開発を進めた。落下試験も子供の背丈ではなく、大人の背丈と同じ基準で行っているし、ディスプレイを周囲のフレームからコンマ何ミリという単位で低くすることで割れにくくするなどの工夫も行った」と語る。
疑問その1:音声通話に対応しなかった理由
ドコッチについては、いくつかの疑問もある。一つは、音声通話に対応していないところだ。
これについて松藤氏は「最初は我々も通話と位置情報と考えていたが、全国でマーケティング調査を行い、ヒアリングしていったところ、ほとんどの保護者から『通話機能はいらない』という回答があった」と明かす。というのも、小学生低学年となると、そもそも通話しても何を言っているのか分からない、というリアルな実態に加え、保護者にとっては、勝手に知らないところに電話してしまったり、変な人から電話がかかってきたりといった不安の方が大きい。
同氏は、「子供が安全に遊んでいることさえわかれば、それでいい、という親心をドコッチには反映させた。どうしても通話が必要ということであれば、キッズケータイという選択肢もある」と割り切る。
疑問その2:BREWを採用した理由
第2の疑問は、プラットフォームとしてAndroidやTizenといったスマートフォン系のOSではなく、BREWを採用したところ。BREWと言えば、KDDIがフィーチャーフォンで使用していたプラットフォームで、ライバル関係にあるドコモがこれを採用するのは異例とも言える。
M2Mビジネス部 コンシューマM2Mビジネス スマートホーム 主査の大場隆司氏は、「どのプラットフォームを使うかという前に、どういう機能が必要かというところからスタートした結果。子供が使える機能、保護者が子供に連絡できる機能に絞った。ウェアラブルデバイスの課題はバッテリーのもちだが、少しでも電池がもつようにするということもBREWを選んだ理由の一つ。いかに価格を抑えて提供できるか、という点も重視した」と説明する。単体で3Gの通信機能をサポートしながら、販売価格を1万円程度(2年契約の場合)に抑えるためにはBREWが最適だと判断したのだという。
久々にキャリアとしてのこだわりを感じる端末
今回の取材を通して印象に残ったのは、キャリアのカラーが表現しづらいスマートフォン全盛の時代において、担当者がいかにも楽しそうに端末について語る姿だ。決して市場でメインストリームとなり得る商品ではないものの、久々にキャリアが明確な意思をもって企画した端末とも映る。
「お客様に本当に喜んでもらえる商品を作りたいということで、このプロジェクトを立ち上げた。お客様の声をデータとして集め、それを示して社内を動かした」という松藤氏。その言葉からは、製造を担当するファーウェイのスタッフを含む関係者がドコッチに注ぐ熱意が感じられた。