「MIRACH IS11PT」開発者インタビュー

シンプルモードで幅広い世代がターゲット


 KDDIから発売された「MIRACH IS11PT」は、通常のモードに加えて、フィーチャーフォンの使い勝手を意識した「シンプルモード」を搭載するパンテック製のAndroidスマートフォン。防水性能を実現し、フィーチャーフォンからスマートフォンに移行するユーザーに焦点を当てている。

 開発を担当したパンテック・ワイヤレス・ジャパンの木村一氏、下村智紀氏、成田友依氏に同端末の特徴やコンセプトなどを伺った。

 

――まず最初に、製品コンセプトを教えて下さい。

左から成田氏、下村氏、木村氏

木村氏
 まず大前提は、オールマイティな端末であるということです。今、スマートフォンを使いたい、という人が増えていますが、操作に慣れないのではといった不安があります。オールマイティな端末ですが、そうしたスマートフォンは不安だと思う人たちに、どう提案していくか、というのがポイントでした。

 使い方がこれまでのフィーチャーフォンと大きく変わってはいけないだろうということで、「シンプルモード」を実装しました。アプリというより、より深い部分まで作りこんだものです。例えば、ホーム画面で右や左に移動するのはフィーチャーフォンから移行されてくる人達からすると混乱するのではないかと考え、左右に移動しない固定画面になっています。メニューもフィーチャーフォンと同じようなカテゴリー分けを行っています。使い勝手で、フィーチャーフォンと大きく変わらないようにしました。

 フィーチャーフォンから移行されてきたユーザーはまずこのモードで練習してもらい、慣れてきたら通常モードに切り替えて使っていただければと思います。通常モードの中にシンプルモードがある形なので、アプリではありませんし、データは共有しています。

 また、フィーチャーフォンから移行するユーザーにとっては、当たり前になっている防水や卓上ホルダーによる充電方式も提供しています。これはスマートフォンになってこれまでの使い勝手が変わると厳しいため、この端末でも防水性能を実現しています。また、どうしても充電回数が増える中、充電の際にパッキン付きの端子カバーを毎回開け閉めするのは面倒ですから、セットすれば充電できる卓上ホルダーも同梱するようにしました。

「MIRACH IS11PT」

 

――ハイエンドモデルとして先端ユーザー向けというより、使いやすさを追求したモデルですね。

下村氏
 シンプルモードと通常のモードは簡単に切り替えができますので、幅広い世代に対応できます。空いた時間に通常モードに変えて、練習するといったこともできます。当社の市場調査では、30歳代以上では、端末代が高いとか使いこなせるか不安といった声も聞かれました。そうした、ユーザーのネガティブな部分を打破できると思います。

木村氏
 フィーチャーフォンを使ってきた普通のユーザーにとって、ホーム画面が固定なのは当たり前ですし、画面がいったりきたりするのは困るということも、あると思います。また、スマートフォンに慣れたユーザーでも、特定の場面ではシンプルモードを使うと、便利さがあるかもしれません。性能のパフォーマンスを持ちつつ、いろんな使い勝手を追求したモデルですね。

――シンプルモードの作りなどを見ていると、日本のメーカーからもっと出てきてもよさそうなものです。

木村氏
 「簡単ケータイ」シリーズを開発してきた実績がありますし、苦労もありました。使いやすさや分かりやすさについては、日本の携帯メーカー以上に勉強してきたのではないでしょうか。

――充電ができる卓上ホルダーがパッケージに同梱されますが、最近のauの端末では珍しくなっていますね。

木村氏
 防水仕様の端末ですし、充電する度にキャップを開け閉めするのは、ユーザーにとってはストレスになると思います。スマートフォンでは現状、充電をする回数が増えるでしょうから、その都度開け閉めするといった、変な難しさを与えたくありませんでした。

下村氏
 microUSBなど、端子は小さくなっていますしね。卓上ホルダーなら、置くだけでセットでき、充電できます。


――日本で販売される海外メーカーのAndroid端末という点で、防水対応は初めてだと思います。パンテックの海外展開のラインナップに防水端末は?

 

木村氏
 無いですね。

――そうすると、「MIRACH」は海外市場でも使われているブランドですが、端末は日本向けに開発されたということでしょうか?

木村氏
 そうですね。

――日本向けに開発された端末だと、グローバル市場では展開しにくいのではないでしょうか?

木村氏
 パンテックとしては、ベースとなる標準プラットフォームは使いますが、各国ごとにアレンジして、小回りの効いた形でやるのが特徴だと思っています。ゴリ押しはせず、グローバルのよさと、日本でやってきた実績を上手く取り込めるのが強みではないでしょうか。

――販売店など、販売の現場の反響はどうですか?

重ね書きを認識できる手書き文字入力

成田氏
 問い合わせがたくさん入っていると聞いていますし、特にフィーチャーフォン、CDMA 1Xを使っているユーザーからが多いようです。「IS06」の端末のイメージが強いようで、シンプルモードを触ってもらうと「売れそうですね」という声はもらっています。また、細かな部分で「IS06」より改善・強化している部分もたくさんあり、ヘビーユーザーの方でも満足してもらえるという声もありますね。電池の持ちもそのひとつで、まったく違っています。auの夏モデルで、(カタログ値で)連続通話時間が500分を超えているのはこの端末だけだと思います。

木村氏
 最初の頃のAndroid端末からすると、不安になるぐらい持ちますね(笑)。

下村氏
 こういう端末を待っていた、という声もありますし、文字認識でも重ね書きを認識できるようにするなど、いろいろなターゲットに幅広く対応できるようにしています。

――フィーチャーフォンのようなテンキーは主流ではありませんし、不安を抱えながらスマートフォンを手にするユーザーは多いと思います。

木村氏
 当初は手書き入力まで必要かという考えもありましたし、使いづらいものが多く、不安でしたね。いくつかの方式を試すうちに、これだったらいけそうだというものを見つけ、搭載できました。慣れるまでの時間がみじかくなるようなものを選んでいます。

下村氏
 入力文字の種類はフィールドを選ぶと自動的に切り替わるようにしていますし、絵文字の予測変換にも対応しました。

――通信方式は、海外でW-CDMAも利用でき、ある意味ではフル対応です。実際に海外でヘビーに使うかどうかはどもかく、そういう狙いはあったのでしょうか?

木村氏
 海外でメールやWebを使うということは、増えているのではないかと思います。また、auさんからの要望もあって、データ通信速度の速いUMTS(W-CDMA)に対応したモデルを用意できました。

――デザイン面でのこだわりなどは。

下村氏
 (タッチ操作ではない)ハードキーを3つ搭載し、表記も分かりやすく文字表記にしました。キー周辺の装飾も高級感のある仕上がりにしています。また、ボディの周囲はボディカラーの色を加味した色にしています。

成田氏
 サイズ感もポイントで、あえて手にすっぽりと収まるサイズにしています。

木村氏
 持った感じも、かなり軽く感じると思います。さまざまなユーザーに向けたオールマイティな端末ということで、端末価格も高くすることはできないのですが、チープな感じにはしていません。

――ワンセグ、おサイフケータイは非対応となっていますね。

下村氏
 販売の現場からは、付いていたほうが売りやすいという声もありますが、お買い得な値頃感で、そのほかの機能はしっかりサポートしているのが特徴です。幅広いターゲットを想定していますが、その中には、“1番”を欲しがるのではなく、現状を維持できればいいというユーザーもかなりの数がいますから。

――そのほか、おすすめの使いかたや注目ポイントはありますか?

下村氏
 シンプルモードと通常モードの切り替えが大きな特徴ですが、戻し方は二種類あります。かんたん設定の中にあり、「設定」メニューの最後にも戻る項目があります。ワンタッチダイヤルも二種類のアクセス方法がありますね。

 また、キャンペーンサイトでは、画面の使い勝手や操作の様子が体験できるページも用意しています。

木村氏
 「IS06」と比較して使い勝手はチューニングしていますし、アイコンひとつ取っても、分かりやすい色を使ったり、ウィジェットを移動しやすくしたりと、ちょっとしたところまで改善を図っています。これまでの経験を全部入れて、「IS06」から移行しても満足できる端末になっていると思います。

――本日はありがとうございました。

 




(太田 亮三)

2011/9/22 15:58