【WIRELESS JAPAN 2009】
UQ要海氏、WiMAXの概要と次世代WiMAXについて語る
UQコミュニケーションズの要海氏 |
無線通信関連の総合イベント「WIRELESS JAPAN 2009」の技術系セッション「3.9G/LTE&4Gネットワークインフラ構築フォーラム」にて、UQコミュニケーションズのネットワーク技術部長 要海敏和氏が、「UQ WiMAXが創るブロードバンドサービスとこれを支える技術」と題した講演を行った。
まず要海氏は、UQ WiMAXの特徴として、WiMAXの技術的背景を紹介する。UQ WiMAXが利用するWiMAXは、WiMAX Forumで標準化された国際標準の無線通信技術となる。WiMAX Forumはシステムプロファイルを作成するとともに、機器間相互接続の認証プログラムも提供し、この認証プログラムをクリアした製品がWiMAX Certifiedのラベルを与えられる。現在、R1 Wave2/Phase1というバージョンの認証作業が行われており、認証された機器はWebサイト上で確認することもできる。
UQ WiMAXの特徴 | WiMAXの認証プログラム |
広帯域・大容量 |
さらにWiMAXの特徴として、要海氏は最大40Mbpsの大容量通信と時速120kmでの高速移動でも通信できることを挙げ、その背景として、OFDMAや64QAMの変調方式、MIMO、周波数ダイバーシティ、Proxy Mobile-IPなどといった技術が使われていることを紹介した。
UQ WiMAXではProxy Mobile-IPを実装し、通信中に移動して接続先の基地局が変わるハンドオーバー時にも、同一のIPアドレスが保持される仕組みになっており、日本全国どこにいても接続中にIPアドレスは変わらないという。
さらに常時接続性もWiMAXの特徴で、スリープモードとアイドルモードにより省電力化を実現し、ダイヤルアップのような操作は不要だという。要海氏は、「ユーザーが意識的にネットワークを切断しない限り、IPセッションは維持され、プッシュサービスも利用できる」と説明した。
高速モビリティ | 常時接続環境 |
こうしたWiMAX技術の上でUQ WiMAXが提供するサービスとしては、要海氏はまず現在サービス中の定額使い放題プランを紹介する。要海氏は「初期登録料はもらうが、期間拘束はなく、いつでも加入・解約できる」と説明した。
さらに24時間を600円で使い放題となるプラン(10月1日開始)や15日間限定の試用サービス「Try WiMAX」、月額200円で1台のWiMAXデバイスを追加できるオプションサービス、交通機関などで利用できるWi-Fi接続サービスなども紹介した。
基本となるUQ Flat | 1日限定のUQ 1Day |
買う前に試せるTry WiMAX | 機器追加オプションで同時接続できるのは1台のみ |
新しい製品が登場する |
UQ WiMAX対応端末として要海氏は、USBタイプ2機種とPCカードタイプ、Expressカードタイプの4種類に加え無線LANゲートウェイタイプの5機種を紹介し、「これらはオペレーターブランドとして提供する。しかし、今後はUQ自身が端末を提供するより、むしろベンダーが独自に開発したものを売ってもらうことを中心にWiMAXを展開したいと考えている。また、今はデータ通信端末とゲートウェイタイプだが、本命はWiMAX内蔵ノートパソコンだと考えている」と語った。
さらに今後の展望としては、「いくつかのノートパソコンがWiMAXを搭載して登場するが、今後はMIDやUMPC、さらに将来にはパソコンや情報端末ではないテレビや家電にも搭載していきたい」と語った。
UQブランドの端末 | 非PCデバイスへも展開する |
ユーザーがどうやって契約するかについて同氏は、「今のケータイは窓口手続きだが、UQではエアー(無線)経由でアクティベーション(認証)する、Over The Air(OTA)を提供する。端末は契約のないいわゆる白ロム状態で購入でき、最初にUQのネットワークにつなぐと、WiMAXのポータルサイトに強制ルーティングする。ユーザーはそこで契約するISPを選び、オンラインで契約できる」と語り、どのように契約手続きができるかを説明した。また今後は、こうしたユーザーの手による契約だけでなく、従来のように販売店でも契約できるように、システムを準備しているという。
UQ Certifiedプログラム |
UQでは、端末についてはUQがコントロールして開発するのではなく、ベンダーが独自に開発することを支援するという。要海氏はそのために「UQ Certifiedプログラム」を提供すると説明する。このプログラムは、ベンダーが端末を開発する際、UQのネットワークに安定的につながることを確認し、認証するというもの。要海氏は、「審査と試験をクリアすると、UQ Certifiedのシールが貼られ、そのシールが貼られていればUQのネットワークに安定的に接続できる保証となり、製品の付加価値となる」と紹介した。
また基地局については、標準的に使われるマイクロ型BS(基地局)でもポリタンクほどのサイズで、アンテナを含めても重さは大人1人分程度という。さらに屋外のスポットや屋内に対応するために、超小型BSも導入していることを紹介した。
ネットワークの構築状況については、7月にサービスが開始され、東京では1500局が設置されたことを明らかにした。さらに要海氏は、「基地局建設のピッチは日々、あがっている。7月だけでおよそ450局以上を設置するが、どんどん加速していく。2012年には人口カバー率90%以上と宣言しているが、実際にはもっと早い段階で90%以上を達成することを目標としている」と語った。
導入している小型基地局 | サービスエリアの展開について |
さらにビジネスモデルについて要海氏は、「オープンなネットワークということで、MVNOを中心に展開する。3回のMVNO向け説明会を経て、すでに複数のMVNOと契約した。このやり方を、世界のWiMAXビジネスの標準としたい」と語り、ビジネスのオープン性をアピールした。
オープンなビジネスモデル | 新たなビジネス領域へも展開する |
各通信方式のスペック比較 |
さらに現在採用するIEEE802.16eからさらに高度化した仕様であるIEEE802.16mについても開発中であると紹介する。IEEE802.16mでは、2×2のMIMOで最大160Mbps、4×4のMIMOで最大330Mbpsの通信速度を目標にしており、高速移動についても新幹線並の時速350kmまでをターゲットにしているという。
講演の最後に要海氏は、「モバイルWiMAXの次のバージョンは、スペック的にはLTEを狙っていくものになる。UQのWiMAXはIEEE802.16eからスタートしたが、スタート直後の今の段階でも次のサービスも視野に入れている。まずはサービスエリアの拡大でユーザーの快適な生活に寄与できればと思うが、次のWiMAXの新しい世界にもご期待いただきたい」と述べた。
(白根 雅彦)
2009/7/23/ 21:39