【Uplinq 2010 Conference】
モバイル業界期待の新ディスプレイ「mirasol」


Qualcomm MEMS Technologies、Director of Marketing & Publisher RelationsのCheryl Goodman氏

 これまで通信の分野で大きな実績を残してきたクアルコムだが、近年、それとは全く異なるディスプレイの分野にも進出しようとしている。同社が開発したディスプレイ技術「mirasol」(ミラソル)について、Qualcomm MEMS Technologies、Director of Marketing & Publisher RelationsのCheryl Goodman氏が報道陣の取材に応じた。

 同氏は「モバイル端末はその宿命として消費電力を減らす、あるいは電池をもっとも使っている部分に対して何か解決策を提供しなければいけない。5~6年前からユーザーがリッチコンテンツを扱うようになると、端末側に求められる電池の容量と実際にバッテリーが提供できる電力とのギャップがこれまで以上に大きくなってくると言われるようになり、新しいディスプレイ技術の開発に取り組み始めた」とmirasol開発の経緯を説明する。

 mirasolは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる、微細な加工技術を使って、光の反射をコントロールすることで発色するという方式で、明るい場所ではバックライト不要で利用できる。原理的には、蝶の羽が見る角度によってきらめく原理を応用し、入ってくる光と出ていく光の角度をコントロールし、光を干渉させることでカラー表示を実現している。

 Goodman氏は、「電子ペーパーのように消費電力が低く、液晶のようにカラーかつ動画に対応でき、それぞれの良いところを併せ持つのがmirasol。iPadのようなものを想定すると、電池の持ちは3倍になる。消費電力が少ないという点に加え、構造がシンプルということで製造上も環境にやさしい」とmirasolの特性を語る。同社では、コストについては液晶と同等のレベルで、応答速度や耐衝撃性、耐熱性などの点でも液晶と遜色ない、としている。

 良い面ばかりのようにも思えるが、反射型という原理上、暗い場所では見づらく、真っ暗なところでは全く見えなくなってしまう。このため、同社では色むら無く表示できるフロントライトの開発も行っているとのこと。タッチパネル対応も含め、最終的にはセットメーカーがこうした追加要件を搭載するかどうかを判断することになる。

 同氏によれば、年末から来年初頭にかけて、mirasolを搭載した電子書籍リーダーが商用で出てくることになる。今後は出荷台数が多いスマートフォンや、その他のデバイスにも対応していくという。



(湯野 康隆)

2010/7/2/ 22:10