【MWC19 Barcelona】

NTTドコモ、5G活用の幅広い提案

 NTTドコモは、昨年に引き続き、今回の「MWC19 Barcelona」でもNTTグループとして出展している。

NTTグループブース。この写真ではドコモロゴが前面にあるが、奥のNTTロゴも含めて映像表示で、定期的に表示が入れ替わっている

 日本以外では、今年から5Gを開始する事業者が多い。そのため、今回のMWCでは、5Gの商用向けスマートフォンが多数出展され、試験基地局からの電波で通信を行なうデモがそこかしこで行なわれている。

 そうした海外の動きに比べると日本は少し遅れていて、ちょうどMWC期間中に5Gの電波割り当て申請が締め切られ、4月に割り当てが発表されるという段階だ。今年中にプレサービスは開始するが、各社とも商用サービスは2020年を予定している。もちろん周波数の割り当て前から各キャリア、準備を開始しているが、サービスの詳細は発表しようがないので、展示もどこか抽象的なものになっている。

クアルコムの試験用端末。大きさのわりに画面が小さく、分厚い

 たとえば5Gのデモで使われているのは商用スマートフォンではなく、クアルコムのSnapdragonを搭載した試験用端末だ。もちろんこの端末、5Gサービス開始時に一般販売されるものではない。通信経路のデモでは、郵便ポストのようなサイズのインテル製の試験機が使われている。

通信デモで移動機側をになうインテルの「モバイルステーション」。本体は下部に見切れているでっかい箱である
エリクソンの基地局アンテナ。このように会場内で実際に5G通信をすることで、各種デモを行なっている

 しかし、商用スマートフォンを使った展示がない一方で、5Gネットワークの活用については幅広い提案をしている。

iPadを使ったジオスタのデモ

 たとえば昨年も展示していた、フジテレビと共同開発している「Diorama Stadium(日本名称ジオスタ)」は、今年はJリーグの試合の映像を使ってデモを行っていた。ジオスタは、スタジアム全体の映像から選手やボールを認識し、それぞれの3Dデータをリアルタイムで生成することで、自由視点での試合観戦ができるというシステム。

 今年のデモではiPadを用い、テーブル上のARタグにiPadを向けると画面内にスタジアムが表示され、スワイプやピンチインも使って、自由な視点から試合を観戦できるようになっていた。ちなみに昨年はTango対応スマートフォンが使われていた。

テレビの映像とiPad内の3Dモデルの動きが一致しているのが面白い

 リアルタイム処理が可能と言っても、若干の遅延は存在するが、たとえば地デジ放送にも遅延は存在するので、それとほぼ同タイミングでの生中継が可能だという。つまり、テレビやスクリーン上で中継映像を見ながら、同時に手元のiPadを使って立体的に試合を観戦する、といったことができる。

 こうした大容量のデータ通信と低遅延が要求されるアプリケーションにおいて5Gを活用しよう、という提案の展示だ。MWCの他社ブースを見てみると、商用5Gスマートフォンによる通信デモはインパクトがあるのだが、「5Gを使うことで、これまでにないどのような面白いことができるのか」というアプリケーション提案はそこまで多くはない。そんな中、NTTドコモは商用端末展示が出来ない代わりに、アプリケーションの提案が上手かった印象だ。

 ほかにもステージ上では1日数回、5Gを使った遠隔ライブセッションのデモも行なわれていた。こちらはヤマハの「NETDUETTO」というソリューションを使ったもので、ステージ上に居るギターの男性と遠隔地(といってもステージのすぐ脇のブース内)にいるキーボード&ボーカルの女性がセッションを行なうという内容。演奏セッションとなると、遅延が問題となり、また映像も送るとなるとデータ量も多いため固定回線が好ましいが、低遅延・大容量の5Gならば対応できる、というわけだ。

5Gを使ったライブセッションのステージ。左の女性は映像なのだが、おそらくステージ手前の半透過スクリーンに投影されている。影が不自然にキレイなのもポイント
キーボード&ボーカルの女性。別スタジオで演奏している

 こちらはMWCでは珍しい音楽を使ったデモで、NTTが開発しているテレプレゼンスシステムのKirariを使うなど見た目もユニークで、来場者の注目を集めていた。ちなみにNTTドコモは昨年、5G経由でロボットを遠隔操作して書道を行なうというデモをやっていて、そちらも多くの注目を集めていた。

遠隔医療のデモ

 このほかにも5Gを使ったデモとしては、救急医療分野での例が展示されていた。こちらは救急車などで緊急手術を行なう際、そこで撮影した映像を遠隔地にいる専門医に診てもらい、監修してもらおうというもの。4Gでも当然可能だが、より高解像度・低圧縮の映像転送ができることが5Gの利点となる。

 こうした遠隔医療の分野では、ロボットで遠隔地から手術するといったアイディアもあるが、通信速度が落ちたり途切れたりするモバイル回線が挟まると、通信が途切れた際に事故につながるので、そうしたことは想定していないという。

映像比較。5Gの方が情報量が増えるので、全体的にキレイになる
遠隔地から監修する専門医側のイメージ。同時に各種バイタルデータなども送っている