【IFA2018】

ファーウェイCEOが「Kirin 980」を解説、「Mate 20」は10月16日に発表

「P20 Pro」の革パネルモデルも

 ファーウェイのコンシューマービジネスグループCEO、リチャード・ユー氏は、8月31日(現地時間)、独ベルリンで開催中の「IFA 2018」で基調講演に登壇した。

 基調講演では、同社傘下のハイシリコン(HiSilicon)が開発した最新のチップセット「Kirin 980」が発表されたほか、「HUAWEI P20 Pro」の新色や、Alexa対応でLTEモデムを内蔵したスマートスピーカー「HUAWEI AI Cube」が披露された。ユー氏は、このKirin 980を搭載したスマートフォンの「HUAWEI Mate 20」シリーズが、10月16日(現地時間)に英ロンドンで発表されることも明かした。

基調講演で「Kirin 980」を披露したリチャード・ユーCEO

 冒頭で「AIのスマートフォンとAIのサービスを、ファーウェイがリードしていく」と語ったユー氏が最初に紹介したのは、チップセットのKirin 980だった。同氏によると、Kirin 980は「世界初の7nmプロセスで製造されたチップセット」で、機械学習の処理を担うNPU(Neural Network Processing Unit)はデュアルに進化しているという。

AIスマートフォンのトレンドをリードしていくという
「Kirin 980」は世界初の7nmプロセスで製造するモバイル向けAIチップセットとアピール
デュアルNPUを搭載し、機械学習の処理能力が大きく上がった

 この強化によるメリットの1つが、機械学習を活用した画像認識の処理が高速化だ。ユー氏は、クアルコムのSnapdragon 845や、アップルのA11と処理速度を比べた映像を披露。全500枚の画像認識をKirin 980はわずか6秒で終えたのに対し、Snapdragon 845は倍の12秒、A11に至っては4倍強の25秒もかかったという。

500枚の写真を画像認識にかけた結果、Kirin 980はわずか6秒で処理を終えたという

 処理能力の高さは、動画にも生きる。一例としてユー氏が紹介したのは、ランニング中の人物が写った動画の背景を、リアルタイムに差し替えるという映像。人物の範囲を瞬時に特定し、それ以外の部分になる背景を、別の映像と合成するというものだ。ユー氏は、この処理も、Kirin 980で行っていると語った。

ランニングを写した動画の背景だけをリアルタイムに差し替えた

 NPUだけでなく、Kirin 980は、CPU、GPU、ISPなどが総合的に強化されている。CPUは、Arm社の「Cortex-A76」がベースになっており、Kirin 970比で処理能力が75%、電力効率が58%向上しているという。特徴的なのがオクタコアの使い方で、Kirin 980は、「BigとLittleだけでなく、Middleも搭載している」(同)。

「Cortex-A76」ベースのCPUを採用し、処理能力が大きく上がった

 これまでのモバイル向けCPUは、パフォーマンスの高いコアと、省電力なコアを組み合わせることが一般的だったが、Kirin 980では、その中間となるMiddleコアも採用された。Bigに相当する2コアは、ArmのCortex-A76がベースになっており、クロック周波数は2.6GHz。これに対し、Middleコアは同じCortex-A76をデュアルコアで利用しながら、クロックを1.92GHzに落としたものだ。なお、Littleはクアッドコアで、ArmのCortex-A55(1.8GHz)が採用されている。

Big、Middle、Littleの3段構成

 ユー氏によると、音楽再生のようにパフォーマンスを必要としないアプリでは、Littleのコアのみで駆動するのに対し、SNSなどの中程度のアプリではMiddleとLittleのコアで処理を行うという。ゲームでは、すべてのコアを使うといった形で、スケジューリングを柔軟に行えるのが特徴だ。

アプリによって、利用するコアを柔軟に変更していくという

 GPUはKirin 970比で46%ほどパフォーマンスが向上。消費電力は178%も効率化されているそうだ。ユー氏は、実際のゲームでフレームレートがどの程度になるのかをSnapdragon 845と比較。「GPUを中心に使う有名ゲームでも、Snapdragonよりフレームレートが高い」と自信をのぞかせた。さらにKirin 980は、Kirin 970が対応したGPU高速化技術の「GPU Turbo」にも対応する。

GPUも処理能力が向上した

 カメラなどの映像処理を担うISPも、「レコーディングパワーが向上し、レイテンシー(遅延)が低くなっている」(同)という。低照度時のノイズ処理を効率よく行えるようになった結果、「より細部までクリアな写真が撮れる」(同)。このISPを活用したMate 20シリーズは、P20 Pro以上の画質が期待できそうだ。

デュアルISPによって、暗所で撮影した際のノイズ処理がさらにうまくなった

 モデムはカテゴリー21のLTE Advanced Proに対応しており、下りの速度は最大1.4Gbps。5CCのキャリアアグリゲーションに対応する。基地局などを手掛けるファーウェイならではのチューニングも施されており、「地下鉄や高速鉄道では信号を失いやすいが、(Kirin 980は)弱電界でも高いパフォーマンスを発揮できる」(同)という。

 さらにKirin 980は、同社が2月にMobile World Congressで発表した、5G対応の「Balong 5000」もサポートする。これによって、「キャリアが5Gのライセンスを取れば、(Kirin 980搭載の)対応端末を投入できる」(同)ようになった。

モデムは下り最大1.4GbpsのLTE Advanced Proに対応
Kirin 980は、5Gモデムと組み合わせることもできる

革パネルのP20 Proなど追加色、Alexa対応スマートスピーカーも

 Kirin 980の紹介を終えたユー氏は、おもむろにP20シリーズの実績を紹介。グローバルでの合計では、P20シリーズはわずか5カ月で1000万台以上の出荷を実現したという。売上も、各地域で大幅に伸びていることが紹介された。こうした人気の高さを受け、ファーウェイはP20 Proの新色を投入する。新色は全4色で、内2色は背面パネル素材を本革に変えたものになる。

新色計4色を披露したリチャード・ユーCEO
本革を採用した2色は、RAMのスペックも強化されている

 これに続けてユー氏は、スマートスピーカーのAI Cubeを紹介。このモデルはAmazonのAlexaに対応しており、ファーウェイが得意とするLTEモデムも内蔵しているという。ユー氏は、スマートスピーカーとしてだけでなく、ルーターとしても利用できると語った。

リチャード・ユーCEOが「HUAWEI AI Cube」を掲げた
LTE対応でルーターにもなるスマートスピーカーの「HUAWEI AI Cube」

 ファーウェイは、個人向けのIoT機器にも進出。基調講演では、ペットや子ども、スーツケースなどに装着し、位置を特定するNB-IoT対応の「HUAWEI Locator」が披露された。

NB-IoT対応の「HUAWEI Locator」も発表された