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キャリア・SIMフリーの双方で拡大を図るファーウェイ、ゴ・ハ氏が語った日本戦略

 ファーウェイ・ジャパンは、Androidスマートフォン「HUAWEI P20」「HUAWEI P20 lite」をはじめ、この夏に提供するスマートフォンを紹介する発表会を開催した。

ファーウェイのゴ・ハ氏(左)とゲストとして登壇したモデルの西山茉希(右)

 発表会は、この日に発表されたSIMフリーモデル「HUAWEI P20」の日本展開や、ファーウェイ自身が販売することも明らかにしたミドルクラスのモデル「HUAWEI P20 lite」が発表の中心。

 一方で、NTTドコモから発売される「HUAWEI P20 Pro」は、国内でファーウェイ自身が紹介するのは初めてとあって、特徴が簡単に紹介されたほか、すでにキャリア各社から案内されていた「HUAWEI P20 lite」のキャリア向けモデルも簡単に紹介されるなど、この夏の同社の取り組みが広範囲に渡っていることが印象的な発表会になった。なおいずれのモデルも、6月15日に発売されることがこの日に発表されている。

キャリア向けモデルの紹介で登壇したのは元サムスンの阿部崇氏

 ファーウェイが11日に発表したSIMフリー端末の「HUAWEI P20」「HUAWEI P20 lite」については、それぞれのニュース記事を参照していただきたい。

 以下は、囲み取材とインタビュー取材で、ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏から語られた、日本市場への取り組みについて。

生き残ればチャンスが来る

発表会後の囲み取材に応じた呉波(ゴ・ハ)氏

――3キャリア向けに端末を提供し、SIMフリー端末も新たに発表された。意気込みは。

 2014年にSIMフリー市場に参入してから、端末の市場に注力してきた。SIMフリー端末を通じて、ブランド、品質、アフターサービスを確立し、さらにキャリアの販路を通して広くユーザーに届けたいと考えてきた。今年の夏はまさに結果を出すことができた。

 引き続き、日本のキャリア市場、SIMフリー市場に対して、さらに投資を拡大していく。

――P20 Proがドコモの独占だった。背景には何が?

 事実として、日本のスマートフォンの8割は3大キャリアから販売されている。さらに端末の購入に補助が付く。これが日本での一般的な買い方であると理解している。ドコモはAndroidスマートフォンのフラッグシップモデルを多数手がけ、どれも売れ行きが良く、実績が高い。P20 Proの独占提供は両社にとってWin-Winになると考えた。

――ドコモではすでに予約が始まっている。感触は?

 P20 Proは、ドコモと弊社の両方の期待を上回るできになっている。5月18日にソフトバンクから発売されたMate 10 Proも、大幅に予想を上回る結果になっている。

――P20 Proはいつ頃から話し合いを始めていたのか。

 2012年と2013年にドコモから(ファーウェイの)スマートフォンが発売されている。それ以来、ドコモから発売されることは一切諦めていなかった。半年ごとに、かなり踏み込んだ提案をしてきた。

 これまでも、日本市場での目標は“生き残ること”と皆さんに伝えてきた。生き残ることさえできれば、チャンスは転がり込んでくると信じている。

――防水・防塵とおサイフケータイへの対応はドコモ向けだけになった。SIMフリーでこれらへの対応は?

 おサイフケータイは、2012年にも出していて、それを踏襲した。技術的にボトルネックはなく、今後これらを搭載した製品を出していきたい。

――P20はSIMフリーのみだが、ドコモのP20 Proをみて、ほかのキャリアがP20を扱いたいとならないのか。

 それはぜひ、声をかけていただきたい(笑)。ちなみにP20 liteの64GBはauのみで、UQ mobileとY!mobile、SIMフリー版は32GB。ソフトウェアもそれぞれ若干異なる。

――P20の価格は少し高めでは? ポイントは。

 SIMフリー市場で10万円台や7~8万円台のモデルも出してきた。今回の価格は市場全体を見ながら決めたもの。さらに考慮に入れたのは、P20がDxOMark Mobileの写真のスコアではトップに位置づけているということ。P20よりもカメラ性能のスコアが劣る他社製品の価格を考慮して、価格を設定した。

P20は遜色のないフラッグシップモデル

――P20 Proは日本でも大きく注目された端末。SIMフリーで欲しかった人も多いのではないか。

 おっしゃる通りで、SNSやTwitter、価格.comでもそうした声があった。ただ、SIMフリーで出すP20も、カメラ性能ではP20 Proと遜色はない。ライカのダブルレンズカメラで、進化したAIも搭載し、機能面で遜色はない。P20はSIMフリーのフラッグシップモデル。使ってもらえれば満足いただけると思う。

――P20 Proがキャリアモデルになったことで、出荷台数はかなり増加を見込んでいるのか。

 Mate 10 Proがソフトバンクから発売されたことを含めて、確かに大きく飛躍するだろう。キャリアが販売することで、さまざまなユーザー層を引きつけることができるのではないか。今のSIMフリー市場と比べても、カバーできる範囲(販路)は数倍にもなる。

――ドコモ向けが成功したら、SIMフリー市場には注力しなくなるのか。

 それは決して起こり得ない。グローバルの事業展開のほとんどはSIMフリーだ。今後もSIMフリー市場に対して取り組んでいく。これは揺るぎないことだ。

――P20 liteも出荷数が見込める端末だ。どれぐらいの伸びを見込むのか。

 ~liteシリーズは4世代目となり、最近ではP10 liteがSIMフリー市場の拡大に大きく貢献し、ユーザーにとっても大きな存在感があり、1年以上安定して販売できている。P20 liteは販路が拡大しより多くの消費者にリーチできる。このシリーズの価格帯は、市場全体では300万~500万台の市場とされている。P20 liteは長く注目を集めることになると思う。

――高額な端末がキャリア向けになるといった棲み分けがあるのか。

 一面では事実だが、全体を見て考えると違う。P20もフラッグシップモデルだし、キャリア市場もミドルクラスを拡充するなど変化が見られる。(キャリアの)製品戦略は常にダイナミックに変わっている。

――ドコモからP20 liteが、あるいはauやソフトバンクからP20 Proが出る可能性は? GalaxyやXperiaは複数のキャリアにメインモデルを提供している。

 そうなれば出荷台数は増えるだろうが、今回のラインナップは各キャリアと協議した結果。

 GalaxyとXperiaは成功を収めているといえるが、では市場のシェアが(昨今)大きく上がったかといえば、そうとは言えない。それは、戦略が成功しているとは言えないのではないか。

 Android陣営という点でみると、iPhoneのように1モデルで3キャリアに提供するといったところまで、到達できていない。Android陣営としても、出荷数の増加は課題だと思っている。

――キャリアごとに意図的にモデルを分けたのか。

 理想は1つのモデルで対応できることだが、実際は難しい。ただ、これまで50カ国以上で勤務した私の経験では、各国のキャリアからは、排他・独占で取り扱いたいと言われる。これは各国で一致した傾向だ。どうバランスをとっていくかは難しい課題だ。

――ありがとうございました。

 発表会ではこのほか、ファーウェイが販売したSIMフリー端末について、修理を受け付ける拠点を6月20日付で全国7カ所に追加し、合計で全国9カ所の体制に強化することが発表された。修理受付拠点はさらに増加させていく方針で、アフターサービスの拡充も積極的に取り組んでいくとしている。

 ゴ・ハ氏からはまた、ファーウェイが提供するアプリストア(App Gallery)について、今後日本の記者向けに説明会を行う方針であることが明らかにされ、サービス面でも取り組みを拡充していく方針が明らかにされた。すでにグローバルでは提供されている枠組みとのことで、アプリに限らず無料のリソースを日本のユーザーに提供したり、ゲーム開発者向けのプラットフォームを提供して、100以上の国・地域にアプリを配信できるようにしたりする内容という。