【CES 2020】
ソニーが語るスマホのイメージセンサー、多眼化や大判化が進む先にあるものは?
2020年1月9日 00:00
スマートフォンに搭載されるカメラのセンサーで、トップシェアを誇るのがソニーだ。
2019年度の売上高は、イメージセンサー事業で初の1兆円を超える見通し。金額ベースでのシェアは、2018年度時点で51%と好調で、ソニー全体の業績をけん引している。
自社グループのXperiaはもちろん、サムスンやファーウェイ、アップルなど、ほぼすべてのメーカーが何らかの形で同社のセンサーを搭載する。
スマートフォン自体は成熟化に伴い、出荷台数の伸びは緩やかになった一方で、カメラの多眼化が進み、センサーの需要は伸びている。
多眼化率は年平均15%程度で、1台の端末に、より多くのソニー製センサーが採用される状況が続く。ソニーによると、これに加え、年平均20%ほど大判化が進んでいるといい、これも好調な業績に貢献する。
CESでは、イメージセンサー事業の次の一手として、車載カメラで安全性能を高める「セーフティコクーン」のコンセプトを発表。そのモデルケースとして、ソニーが自身で開発したコンセプトモデルの自動車「VISION-S」を披露し、大きな話題を集めた。
こうした新規領域に注力することで、2025年度には上記の金額ベースのシェアを60%まで上げつつ、現時点では数%のセンシング領域の割合も30%に高めていく目標を掲げる。
このイメージセンサー事業を率いるのが、ソニーの清水照士常務だ。CESでは、同氏が報道陣からの質問に答え、イメージセンサー事業の今や今後の方向性を語った。ここでは、スマートフォンに関連する回答に絞って、主な一問一答をお届けする。
――海外メーカーでは、(他社製の)1億画素のカメラを搭載する流れもあります。ソニーはどちらかと言うと、高画素化より多眼化、大判化をやってきていますが、今後は高画素化にも向かうのでしょうか。
清水氏
確かにコンペティターは1億画素のものを出してきていますが、我々のコンセプトは色々なシーン、特に暗いシーンでも高画質な映像を出せることをコンセプトにしています。
画素数にこだわりするぎると、画素ピッチが小さくなり、それが損なわれてしまいます。
デジカメが始まったときも、20数メガピクセルまでいきましたが、そこから適切なピクセルサイズにして、画素数は10数メガピクセルでいいというところに落ち着いています。
5Gが出てくると、動画の性能も上げなければいけないため、多眼化を使いながらも、センサーそのものの性能は上げる必要があり、画素数にだけこだわると、やはり無理が出てきます。
――センサーにはいろいろな技術革新がありましたが、最新のテクノロジーはどういう方向に向かっているのでしょうか。
清水氏
64メガピクセルは量産に出ていますが、100メガピクセルまでいってしまうと、レンズも伴わず、すごく難しい。
64メガピクセルぐらいまでなら適正で、パフォーマンスも出せます。それとは別に、動画性能なり感度なりを保ったうえで解像度を上げていきたいなると、ピクセルサイズを大きくしなければなりません。ですから、どうしてもチップサイズは大きくなってしまいます。
その先には、有機光電変換膜のようなものを入れながら、ドラスティックに材料で性能を上げていくといったことはありますが、10年以上やっている話で、なかなか難しいですね。
――現状、ソニーのイメージセンサーは奪い合いになっていると聞きますが、その現状認識で合っているのかを確認させてください。
清水氏
当初予想した計画より、上乗せされているのは事実です。我々も前倒しはしていますが、想定より大判化の流れが速かった。シリコンが大きくなった半面、キャパシティが減って、計画比で数が供給できないということがあります。
――一部報道で台湾のTSMCに製造を出すという話もありますが、それで供給不足は解消できるのでしょうか。
清水氏
過去の経験からこれぐらいでいけるだろうということでキャパは作っていますが、毎年足りていない。この状況は今後も続くと覚悟しています。TSMCからオフィシャルなコメントが出ていないので、コメントはできませんが、ピクセルのウエハーを国内で作るというコンセプトは変えていません。
――多眼化や大判化はどこまで進んでいくのでしょうか。現時点では、ハイエンドモデルのアウトカメラは大型化が進み、数も3つから4つ程度になっていますが、今後もさらに増えていくとみているのでしょうか。
清水氏
2023年、24年までは大きくなっていくとみています。スマートフォン市場そのものは大きく変わっていませんが、その中で多眼化、大判化が進んでいる状況です。
現状では、一番多い端末で7つのカメラが載っていますが、我々は世の中の平均で何個ずつ載っていくのかというトレンドを見ています。
今は平均で2.X個で、これが毎年平均0.X個ずつ上がっています。ただし、数はいったん増えますが、その後、2個を1個にできないかという技術革新も問われるようになります。
――本日はありがとうございました。