【CES 2018】

LINEの翻訳イヤホン、首掛け型の360度カメラ~ユニークな製品が多数並んだ「CES Unveiled」

 CESの会期の前々日、主に中小の出展企業からユニークな製品を集めてプレスに紹介する公式イベント「CES Unveiled」が開催された。毎年開催されているイベントだが、今年は例年より広い会場となり、さまざまなジャンルのユニークな製品が集合している。

 このイベント、出展者数が非常に数が多く、すべてを紹介するのはとてもではないが不可能で、それどころか時間切れですべてを回ることができなかったくらいなのだが、この記事では筆者の目にとまったブースから、モバイルに関係しそうでユニークなをピックアップして紹介する。なお、ここで紹介する製品は特に記載がない限り、日本での発売の予定はアナウンスされていない。

Clova搭載のスマートイヤホン「Mars」

Mars(デザインモックアップ)

 左右別体型イヤホンはもはや珍しくなくなっているが、その左右別体型イヤホンに何らかの付加価値をつけた製品が増えている。NAVERとLINE、オーディオメーカーのOrfeo SoundWorksは、共同でスマートイヤホン「Mars」を出品している。MarsはCESのINNOVATION AWARDでBest of Innovationを受賞している。

 「Mars」はスマートフォンと連動するBluetoothヘッドセットで、ただのオーディオ機器ではなく、LINEが日本向けにスマートスピーカーとして先行投入しているAIエージェントの「Clova」と連携したり、NAVERの通訳機能「Papago」を搭載するなど、付加機能を搭載しているのが特徴。

 第3四半期以降に日本を含む地域での発売を目指しているという。現時点ではまだまだ開発中で、稼働モデルは安定通信のためにアンテナ線が伸びている状態だった。まだチューニング中といったところで、接続がうまくいかないことも見られた。

「Hi」が「Ice」に誤認識されているのはネイティブスピーカーでないせいかもしれない

目の前の人の声を強調する「LIZN」

LIZN

 「LIZN」もINNOVATION AWARDを受賞している左右独立型(完全ワイヤレス)イヤホンだ。こちらの製品は一般的なBluetoothヘッドセットとしての機能に加え、スマートフォンと接続していなくても、「自分の目の前にいる人物の声を強調する」という機能がある。周囲の音が多めの環境で、フェイス・トゥ・フェイスの会話をより円滑にするというもので、家族や友達との会話だけでなく、ビジネスでの利用も想定されている。こちらは3〜4月ごろに149ドルで発売予定。

Jabraの完全ワイヤレスイヤホン新モデル、日本で発売予定

Jabra Elite 65t

 特別な機能があるわけではないが、ヘッドセット大手のJabraも左右独立型の新モデル「Elite 65t」などを展示していた。こちらのモデルは大手ならではの音質や安定性を売りとしたモデル。第1四半期中に169ドルで発売予定。日本でも発売予定で、展示モデルの充電ケース側に「〒」マークが確認できた。

アナログ針もあるスマートウォッチ「ZeTime」

 スイスのスマートウォッチメーカーMyKronozは、KickstarterやIndiegogoでのクラウドファンディングで昨年の最高額を記録し製品化された最新モデル「ZeTime」を出展している。

ZeTime

 ZeTimeは丸形のディスプレイの中央に穴が開いていて、機械式のアナログ針も持っているのが最大の特徴となっている。Android Wearではない独自OSのスマートウォッチだが、通知確認やアクティビティトラッキング、光学心拍センサーなどの機能を搭載。44mmと39mmの2つのサイズがあり、それぞれ22mmと18mmの汎用バンドを付け替えられる。

 MyKronozは日本でも一部製品を展開していて、ZeTimeについてはMakuakeでクラウドファンディングを行ない、国内の認証なども通して販売された。欧州での販売価格は199ユーロ。

さまざまなデザインで展開

腕時計型の血圧計「Heart Guide」

 オムロンは腕時計型の血圧計「Heart Guide」を展示している。一見すると腕時計のようなデザインだが、バンドに血管を圧迫する機構が入っていて、血圧測定が可能となっている。以前のCESでもプロトタイプが出品されていたが、このモデルは今年秋に販売される予定。具体的な発売タイミングは医療測定器具なので政府の認可が必要となり、その認可次第ではあるが、日本、アメリカ、ヨーロッパでの販売が予定されてるとのこと。

Heart Guide。ディスプレイは反射型カラーの特殊なもので、明るい屋外での視認性が高い

骨伝導で通話する腕時計バンド「Sgnl」

sgnl

 スマート機能を持った腕時計バンド「Sgnl」も展示されていた。こちらは数年前からCESなどに出品している製品だが、KickstarterとIndiegogoでのクラウドファンディングを経て、今月より出荷が開始されるという。価格は249ドル。ちなみにこちらはサムスンの社内ベンチャー「 C-Lab (Creative Lab)」からスピンアウトしたプロジェクトだ。

 Sgnlは通知などの機能を持ったバンドで、ほかの腕時計やスマートウォッチに付け替えて利用する。最大の特徴は骨伝導スピーカーで、通話時、装着している腕の人差し指で耳穴を塞ぐと、通話音が聞こえるという機能を搭載している。

首掛け型の360度カメラ「FITT360」

首にかかっている赤いのがFITT360

 同じくサムスンのC-lab発祥のプロジェクトとしては、スピンアウト企業LINKFLOWによる首掛け型の全球撮影カメラ「FITT360」も展示されていた。これは首に引っかけるU字型のデバイスで、左前方、左右後方に3つのカメラがあり、それらの映像をスティッチして全球映像を撮影する。

 体に装着して撮影することを前提とした、いわばアクションカムだが、装着者の体がほとんど邪魔にならないというのが特徴だ。Wi-FiとBluetoothでスマートフォンと接続し、ストリーミング配信などもできるという。動画の解像度は最大4Kで最長90分。

 CES会期中にKickstarterでクラウドファンディングを開始する予定で、8月に700ドルで発売するという。日本と米国で先行展開するとのこと。昨年のCEATECにも出展するなど、日本での展開には力を入れているようだ。

 ちなみに有線電力供給も可能なよりごっつい「FITT360 SECURITY」という警備員など向けのビジネスモデルはすでに先行展開している。

サングラス型で360度撮影「ORBI Prime」

ORBI Prime

 装着型の全球撮影カメラとしては、サングラス型の「ORBI Prime」という製品も展示されていた。サングラスのフレーム、左右前方と左右後方の4カ所にカメラがあり、この映像をスティッチして全球映像を撮影する。こちらは8月に発売予定で価格は399ドル。最長60分の4K動画を撮影できる。スマホアプリ側でスティッチをするため、ストリーミングはできない。

量子ドットレーザーのヘッドマウントディスプレイ「Retissa」

 日本の企業QDレーザが手がける「Retissa」は、量子ドットレーザーを使ったヘッドマウントディスプレイだ。MEMSミラーを備え、網膜に結像するようにレーザーを照射する。

Retissa

 レーザーは目の焦点とは関係なく結像するので、強度の近眼など目のピント調整機能が失われていても、網膜さえ機能していれば利用できる。そのため、視覚障害者向けデバイスとしての用途が想定されている。一方でレーザー照射範囲が限定的なので、瞳孔位置がずれると見えなくなるなど、ほかのヘッドマウントディスプレイに比べると癖の強い特性も持つ。

 すでに何年もCESには出展しているが、今年、初めて開発者向けに製品を販売する予定とのこと。視覚障害者向けにカメラ搭載モデルも開発しているが、こちらは医療器具となると認可が必要になるため、行政と協議して製品化を進めるという。

低価格スマホでも動作するAR技術

uSensのAR APIを使ったアプリ

 uSensは同社のAR技術を使ったソリューションやデバイスを展示していた。

 スマホのARではグーグル・アップルがそれぞれAPIを提供しているが、いずれも比較的高性能なモデルが対象の機能となっている。しかしuSensの提供するAPIは、1万円前後のモデルでもARアプリを動作させることが可能となっている。実際にデモを見たところ、ハイエンドモデルに比べるとフレームレートは落ちるが、認識のずれなどはとくになく動作していた。

 同社のAR技術を使ったデバイス「FINGO」も展示されていた。これはユーザーの手の動きや形状をリアルタイムで立体認識するデバイス。VRゴーグルの前面に貼り付けることが想定されていて、デモではDayDreamでVR空間に自分の手の骨格フレームを表示させていた。すでに99ドルで発売中。

 同様のデバイスとしては「Leap Motion」が有名だが、「FINGO」は最初からVR/AR向けに特化して開発されていて、スマートフォンともUSBで直結できるのが特徴となっている。

FINGOのデモ
FINGO本体

Amazonに買収された「Blink」のスマートドアベル

 Blinkは急増しているスマート監視カメラ・スマートドアベルを手がける企業だ。2017年末にAmazonの傘下となり、製品はすでに100万台を出荷。CESではこれまで3度、INNOVATION AWARDを受賞している。

 ドアベル「Blink Video Doorbell」は、玄関のドアベルをスマート化するもので、ドアベルが押されるとスマホに通知が届き、そのまま外出先からでもビデオ通話で応答ができる。動体検知やナイトビジョンといった機能も搭載する。

右の白い細長い2台が「Video Doorbell」

 有線のドアベルを交換することもできるが、バッテリー駆動で無線稼働も可能。無線稼働時のための屋内チャイムもオプションで用意されている。ちなみに米国で有線のドアベルと言うと、ほぼ10〜30Vの交流電流を使い音が鳴るだけのタイプで統一されていて、日本のドアベルやインターフォンとの互換性は低い模様。

工事不要のドアモニター「DoorCam」

左からRemoBell、DoorCam、RemoBell W

 Remo+は玄関に特化した監視カメラやドアベルを手がけるメーカーだ。ドア越しに撮影する「DoorCam」はCESのInnovation Awardも受賞している。すでに199ドルで販売中。ドアベルを自分で交換しないでもよいのが特徴だ。ちなみに同様の機能を持つ製品は日本ではパナソニックが「ドアモニ」という製品をかなり前から販売中である。

 Remo+ではそのほかにもスマートドアベル製品の「RemoBell」も149ドルで発売中。これはバッテリー駆動の製品だが、有線タイプの「RemoBell W」も第3四半期までに199ドルで発売予定とのこと。

「AirPods」のカラビナジャケット

CatarystのiPhoneケース。

 タフネス系のスマホケースを手がけるCatarystは、最新製品としてiPhone X/8/8 Plus対応のタフネスケースを展示している。なお、これらの製品の一部は、すでに日本でも発売中となっている。

 ちょっと変わったところでは、アップルのワイヤレスヘッドセット「AirPods」の充電ケースのためのジャケットも販売されている。ラバー製で、不意に開かないような構造となっていて、カラビナ風金具でぶら下げられる構造だ。こちらの製品はCESのINNOVATION AWARDを受賞している。

AirPodsの充電ケースをカラビナ風金具で吊り下げられる

磁石マウントで充電、SpeckのiPhone Xケース

 iPhoneケースとしては、SPECKもいくつかの製品を展示している。中でも「Presidio MOUNT iPhone X cases」は、背面が磁石マウントに張り付く構造となっていて、磁石マウント機能を持つQi充電台と一緒に展示されていた。SPECKも日本で製品展開しているが、こちらの製品はグローバルでも未発売。

Presidio MOUNT iPhone X Cases