イベントレポート

注目の中国メーカー最新端末やキーパーソンが集結、MWC上海が開幕

 6月27日、中国・上海でMobile World Congress Shanghai(MWCS)が開幕した。会期は29日までの3日間。

 本家Mobile World Congressの“アジア版”という位置づけのイベントで、日本からもキャリアなどのキーパーソンが集まった。初日には、NTTドコモ 取締役常務執行役員 CTOの中村寛氏が、併催イベントのGTIで基調講演を行っている。また、おひざ元ということもあり、ファーウェイやvivoなど、中国メーカーも多数ブースを出展している。

中国・上海で開催中のMobile World Congress Shanghai
併催イベントの基調講演には、ドコモの中村CTOが登壇。5GやAIについての方針を語った

“ゲーミングスマホ”を紹介するファーウェイ

 メインホールで存在感を発揮していたのは、やはりファーウェイだった。本家MWCとは異なり、MWCSでは基地局などのインフラ部門と端末部門が合同で出展。インフラ側の展示は招待制だったが、HUAWEI P20シリーズやhonorシリーズは、来場者全員が触れられるようにブースの入り口付近に並べられていた。

 最新モデルと注目しておきたいのが、6月に発表されたばかりの「honor Play」だ。同モデルはファーウェイ初のゲーミングスマホ。チップセットには「HUAWEI P20 Pro」などと同じ「Kirin 970」を採用しており、メモリ(RAM)が6GBとハイスペックな端末になる。さらに、ゲーム利用時にGPU性能を60%向上させる「GPU Turbo」にも対応する。GPUの効率よく使うことで、消費電力も30%抑えることが可能だという。

「GPU Tubrbo」に対応した初号機となる「honor Play」

 残念ながら、展示されていた端末にはゲームがインストールされておらず、GPU Turboの力は実感できなかったが、グローバルでは他の端末にもアップデートで適用されるとのことで、日本で展開される可能性も高そうだ。また、ゲーム中に本体を振動させる「4Dスマートショック」にも対応。ゲームの迫力を増す機能が搭載されている。

ゲームを盛り上げる4Dスマートショックにも対応する

 P20シリーズと比べると、AI関連機能も増えており、ユーザーの趣向に応じたサービスをリコメンドする「スマートヒント」などの機能に対応する。背面には1600万画素と200万画素のデュアルカメラを搭載しているが、honorブランドの端末ではライカとの共同開発が行われていない。AIでモードを切り替える機能は共通しているが、絵作りが異なるほか、ユーザーインターフェイスにもP20シリーズとの違いがあった。

「AIカメラ」と銘打ったカメラを搭載。P20シリーズとは異なり、AIのオン・オフを撮影中に切り替えられる(P20シリーズは設定画面で切り替え)
スマートヒントなど、P20シリーズにはなかったAI関連機能も内蔵

飛び出すインカメラのスマホ、vivoが展示

 端末メーカーが集うホールでひときわ来場者が多かったのが、世界シェアで5位につけるvivoのブースだ。

端末メーカーが集うホールで存在感を発揮していたvivo

 同社のブースで注目を集めていたのが、インカメラが本体上部から飛び出す仕様の「NEX S」。チップセットにはSnapdragon 845を採用するプレミアムモデルで、ディスプレイ内部に指紋センサーを埋め込んでいるのも特徴。さらに、通話用のスピーカーもディスプレイと一体化することで、前面がほぼディスプレイだけの「Ultra Full-view Display」を実現した。

前面がほぼすべてディスプレイの「NEX S」
インカメラは本体に収納されており、利用時のみポップアップする
動画で見るvivo「NEX S」のポップアップ式インカメラ
指紋センサーは、ディスプレ内部に埋め込まれている

 「NEX」シリーズには、Snapdragon 710を搭載した下位モデルの「NEX A」と、Snapdragon 845を搭載した上位モデルの「NEX S」の2機種があり、NEX Aに関してはクアルコムのブースに出展されていた。こちらは、チップセット以外にも、指紋センサーが背面に搭載されるなど、一部仕様がダウングレードされている。

Snapdragon 710を採用する「NEX A」。クアルコムのブースに展示されていた

 両機種とも、Joviと呼ばれるAIエンジンを搭載。カメラのシーン認識や画像認識、翻訳などの機能に加え、ゲームモードなどもJoviによって実装されている。側面には、Joviを呼び出すための専用ボタンの「スマートボタン」を備えており、ボタンを押した際には音声エージェントか画像認識を呼び出すことができる。どちらを使うかは、ユーザーが設定で選択することが可能だ。

Joviと呼ばれるAI関連機能を内蔵
側面のスマートボタンで簡単に呼び出すことができる

 なお、6月にはvivoと同じBBK(歩歩高)傘下のOPPO(OPPO関係者はvivoとの関係を競合であると主張、グループとしての交流もないという)も、本体からインカメラがスライドして飛び出す「Find X」を発表しているが、こちらはMWCSの会場で見つけることはできなかった。上海市内にあるOPPOの店舗には、すでに広告が掲載されていたため、近く中国国内向けに発表されることが予想される。

 また、vivoはMWCSに合わせてスマートフォン向けの新技術を発表。人物の3Dスキャンができる「TOF 3D Sensing technology」がそれで、会場には試作機が置かれていた。3Dスキャン機能は、ソニーモバイルの開発したXperiaシリーズにも「3Dクリエイター」という名称で搭載されているが、説明員によると、vivoの3Dスキャンは専用の3Dカメラを搭載することで実現したという。

vivoは、新技術の「TOF 3D Sensing technology」を発表した

 ハードウェア的に3Dスキャンをサポートしているためか実際に試したみたところ、Xperiaの3Dクリエイターよりも素早く顔を読み取ることができた。インカメラのビューティモードを売りにしているメーカーのひとつなだけに、スキャンしたあとの顔のデータに補正をかけることもできた。この技術は顔認証やARなどに応用できそうだが、商用モデルに搭載される時期などは未定となる。

筆者の顔をスキャンしてみた。説明員によると、メガネは外した方がいいとのこと
美白など、読み取った顔に補正をかけることもできた

ZTEは直前で出展を取り止めか

 なお、イランと北朝鮮への機器輸出に伴う米国商務省からの制裁措置に揺れていた中国メーカー大手のZTEは、最終的にMWCSへの出展を見送った。商務省とは、14億ドル(約1542億円)の罰金や幹部の交代を条件に、制裁緩和の合意に至っていたが、米国の上院議員が見直しを求めるなど、事態は完全に収拾していない。こうした状況を受けてか、MWCSでは、ZTEが確保していたブースの場所が来場者用の休憩スペースになっていた。

ZTEブース跡地は、休憩スペースに。代替の企業が見つからなかったようだ

 ZTEは、ファーウェイやノキアといったインフラベンダーが集まるメインホール以外にも、端末メーカー向けのホールにブースを出展する予定だったが、そちらにも同社の姿は見当たらなかった。来場者向けの案内にはブースの場所が記載されているほか、会場内の地図にもZTEの名前があり、ホールとホールの間の通路には広告も出ていたことから、直前の出展取り止めだったことがうかがえる。

会場内の地図や広告からは、直前まで出展を予定したことがうかがえる

石野 純也