太陽、コーラ、自転車の次は?

 KDDI総研 山條朋子
KDDI総研 海外市場・政策グループ。米国を中心に海外の情報通信政策や市場動向調査を担当。今回、イギリス滞在中に受けた日本に関する主な質問は、きゃりーぱみゅぱみゅ、ワンピース(アニメ)、寿司(Sushi Chef修行に必要な年数)、琴欧州に関するものだった。どれもあまり得意分野ではなかったため、間違った情報を与えてないかちょっと不安。


 グリーンICTへの取り組みが注目を集める今日この頃、ケータイ業界では環境に配慮した充電器の開発が盛んになっている。日本ではソーラーケータイが相次いで登場し、中国では、コーラなどの炭酸飲料を利用したバイオ電池つきのケータイがNokiaのコンセプトモデルとしてデザインされている。また、Nokia自身は、つい先頃、自転車をこいでケータイを充電できるキットを発表して話題となった。

 世界のNokiaに続けとばかりに、英国第4位の携帯電話キャリアOrange UK(※7月1日付で、Orange UKはT-Mobile UKと事業統合し、英国第1位の携帯キャリアとなった。新社名は「Everything Everywhere」)も、エコ指向の新製品「Orange Power Wellies」を6月7日に発表した。Wellies=Wellington Bootsとは防水性のゴム製ブーツのことで、つまりケータイを充電できる長靴である。

 「最新のハイテクによる音楽フェスティバル用ファッションアクセサリー」と少々大げさに銘打たれたこの製品は、Orange UKが公式スポンサーを務めるロックの野外イベント、「グラストンベリー・フェスティバル2010」で試作品として展示される。

 このイベント、ロック好きの方ならご存知だと思うが、世界一の歴史と規模を誇るロックフェスティバルで、1970年からイギリス南西部のピルトンにある個人所有の農場で毎年6月下旬に開催されており、多いときで世界中から20万人近くのロックファンが集まるそうだ。ロックに長靴とは一見不釣合いなように思えるが、会場となる農場は天候が不安定な丘陵地帯にあって、毎年必ずといっていいほど豪雨に見舞われ、会場が水没して膝まで泥につかることもあるため、参加者は長靴の着用が必須らしい。さすがにステージは水没しないと思うが、もしかすると今年のメインステージに登場するミューズやスティービー・ワンダーも、一応長靴をスタンバイさせているのだろうか?

 Orange UKのこのハイテク長靴は、再生可能エネルギーのエキスパート、英GotWindの製品で、かかとの部分にとりつけられた特殊な発電装置によって足から発生する熱を電流に変える仕組みになっている。長靴をはいて12時間踊ったり、飛び跳ねたりした後、ケータイを長靴の上部にあるプラグに差し込めば、約1時間の充電が可能とのこと。足の温度が高くなればなるほど発電量もアップするらしいので、日本の夏フェスならさぞや……と思ったが、そもそも暑すぎて長靴なんか履いてられない。やはり、雨の多い英国ならではの製品なのかもしれない。

発電の仕組み

 実はOrange UK は、2007年のグラストンベリー・フェスティバルからGotWindとコラボを組んで、腕に取り付けて踊りながら腕を振るとその動力で発電する「Orange Dance Charger」などユニークなケータイ充電器の試作品を発表しており、今年の長靴は4作目にあたる。これまでの試作品はその後商品化されたのか、また来年のフェスティバルでは一体どんな発明品が登場するのかなど色々と興味はつきない。

2010/7/7 06:00