石野純也の「スマホとお金」

あの「ナビダイヤル」が固定電話のIP化で料金改定、新料金の内容と気をつけたいポイントを解説

 「0570」で始まる電話番号が出てくると、身構えてしまう人もいるのではないでしょうか。いわゆるナビダイヤルの番号が、これ。音声通話定額サービスに加入していても、時間課金で料金が発生してしまうため、特にネットでは親の仇(笑)のようにナビダイヤルを嫌うコメントを見かけることがあります。

 実際、仕組みが分かりづらいこともあり、一部の自治体がコロナワクチンの予約用電話番号に採用した際には、キャリア各社だけでなく、提供元であるNTTコミュニケーションズからも注意喚起のお知らせが出たほどです。

1月1日に料金が改定されたナビダイヤル。音声通話定額とは別に料金がかかるため、これを嫌うユーザーは少なくない

 筆者もカスタマーサポートの電話番号にナビダイヤルが掲示されていると、代替の連絡先がないかを探してしまうことがあります。「03」や「06」など市外局番からはじまる「0ABJ」形式の電話番号であれば、基本的に音声定額サービスの範囲内に収まり、プラスαの料金がかからないからです。

 そんなナビダイヤルも、1月1日に料金が変更されました。これは、いわゆるPSTNマイグレーションと呼ばれるIPネットワークの移行に伴う改定です。ここでは、その新料金を携帯電話からの発信に絞った形で解説するとともに、ユーザーが注意すべき点を解説していきます。

不満の要因は「定額サービス範囲外」かつ「分かりづらい料金体系」か

 携帯電話から発信する際のナビダイヤルは、昨年まで、3つに金額が分かれていました。

 1つは、平日の8時~19時までで、この場合、11円で20秒の通話ができました。

 平日の19時~23時までは、この時間が22.5秒になります。また、休日の8時~23時までも同料金で、11円あたり22.5秒で利用できます。

 23時~翌8時までの深夜~早朝に関しては、11円あたり25秒という時間が設定されていました。

 時間帯によって、同じ11円でもかけられる時間が変わっていたというわけです。

 たとえば、1分間通話した場合、平日昼間であれば33円になります。平日夜間や休日、深夜・早朝に関しても、1分という区切りで見ると33円と変わりません。しかし、1分30秒通話した場合、平日であれば55円の通話料がかかるのに対し、平日の夜間や休日であれば、44円に収まります。

 一般的な携帯電話のように30秒あたりいくらという形で料金が決まっているのではなく、時間によって11円でかけられる時間が異なる点は、ユーザーにとって分かりづらい要因と言えるでしょう。

12月31日までは、時間帯や曜日に応じて料金が変わっていた。11円あたりでかけられる時間がかわる料金体系。コロナワクチン接種開始時に料金が高額になるおそれがあるとして、注意喚起されていた(NTTコミュニケーションズのお知らせから引用)

 携帯電話からの発信はまだマシな方で、基本的にはどのキャリアからかけても料金は同じ。場所も問いません。

 一方で、固定電話の場合、時間に加えて「距離」という概念も加わってくるため、料金表がかなり複雑になっていました。ここでの本題はスマホも含めた携帯電話からの発信なので詳細は割愛しますが、最安である区域内の深夜・早朝料金の240秒あたり9.35円から、昼間でかつ100㎞超の県間通話料金である22.5秒あたり11円まで大きな幅がありました。

 ナビダイヤルの電話番号は、「0570」という1つの番号を使用しているため、ユーザー側からは、どこに電話をかけているのかが分かりません。採用している側がルーティングしているため、近くにある会社に電話したと思ったら、かなり遠くにある拠点にかかり、料金が跳ね上がってしまったということもありえます。

 通話開始時に「この電話は○分ごとに○○円の通話料がかかります」とアナウンスは流れるものの、時間と料金という2つの要素が絡んでくるため、音声で一度聞いただけではすんなり理解するのが難しいと思います。

NTTコミュニケーションズのパンフレットに記載されていた旧料金。距離や時間帯に応じて、複雑に料金が変わっていた

 採用する企業側からすると、掲示する電話番号が1つでよく、通話料もユーザー持ちになるためメリットはありそうですが、ユーザー側からすると、かけてみるまで分からない料金の不透明さは不満につながります。

 通話定額サービスの範囲外で、これを契約しているユーザーにとっては追加コストがかかるだけでなく、その料金がいくらになるのかが分かりづらいというわけです。利便性などのメリットがあることは理解できますが、注意喚起がなされるようなサービスという点に関しては、採用時によくよく考えてほしいと感じています。

固定電話のIP化に伴い料金を改定、携帯電話からの発信も一本化

 こうした分かりづらさのあったナビダイヤルですが、固定電話のIP網への移行に伴い、1月1日には料金が大幅に改定されました。

 固定電話からの発信に関しては、IP網ということもあり、距離による区分がなくなっています。時間帯ごとの料金差もなくなり、固定電話、携帯電話、公衆電話の3つに料金が整理されています。理解のしやすさという観点では、大きく前進したと言えるでしょう。

 ただし、一般のコンシューマーの利用が多いと思われる携帯電話からの発信に関しては、料金が安くなったわけではありません。

 時間や平日・休日といった区分はなくなった一方で、料金は20秒あたり11円と「2023年12月31日までの最高値」に合わせられています。夜間や休日、深夜・早朝といった区分がなくなり、平日昼間の料金に一本化されてしまった格好です。

 込み入ったサポートの相談などをしたり、電話がなかなかつながらずに待たされて10分程度通話してしまうと、料金は330円にもなります。

1月1日に料金が改定され、携帯電話からの発信も時間帯や曜日の区分がなくなった。ただし、料金は20秒あたり11円で、これまでとほぼ変わっていない

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、音声通話定額サービス未加入の場合、30秒あたり22円の通話料が発生します(楽天モバイルはRakuten Linkを利用しない場合)。1分で44円。これと比べるとナビダイヤルの方が33円と11円ほど割安ではありますが、音声通話定額サービスの範囲外になり、プラスαの料金がかかってしまう点は変わっていません。

4キャリアの通話料は横並びで、「30秒あたり22円」。音声通話定額を契約していない場合に関しては、「20秒あたり11円」に設定されているナビダイヤルの方が割安に通話できる計算になる

 また、割安といっても、これはあくまで普通に4キャリアの音声通話を利用した時との比較。オートプレフィックスを利用しているMVNOの場合、通話料は「30秒あたり11円」に設定しているところが多く、こうした事業者と比べるとやはり割高。ドコモからの卸価格を引き下げることに成功した日本通信から回線を借りる「HISモバイル」に至っては、「30秒あたり9円」に設定されています。

 トラフィックの増加に伴い、Mbpsあたりの料金が下がっているデータ通信に対し、音声通話は高止まりしたままと指摘されています。実際、4キャリアの通話料は10年以上、変わっておらず、先に述べたように現時点でも「30秒あたり22円」です。ナビダイヤルの「20秒あたり11円」に関しても、高止まりしている通話料を反映しているような印象があります。

21年5月に総務省の有識者会議で提出された資料では、10年以上、大手キャリアの通話料が変わっていないことが指摘されている

 一方で、固定電話からの発信に関しては、何パータンもあった料金が「180秒あたり9.35円」に固定されました。県間通話料がかかっていたケースと比較すると大幅に割安になっているため、値下げしたようにも見えます。

 ただし、「180秒あたり9.35円」という価格は、23年12月31日までの区域内料金と同じ。電話をした相手が同一区域だった場合で比べると、料金は据え置きになっています。

かかるなら、安く済まそうナビダイヤル

 ナビダイヤルの料金は、キャリアから請求がされるため、各社が課金しているように見えますが、実態は異なります。

 サービスを提供しているNTTコミュニケーションズが料金設定権を持っており、その料金が電話をかけたキャリアを通じてユーザーに請求されている形です。そのため、請求書には、「他社接続サービス通信料」といった形で費目が上がっています。

 ドコモの料金明細を見てみると、ここにも「他社接続サービス通信料[5G]」とあります。これが、ナビダイヤルにかけた料金。ユーザーである筆者から料金を徴収しているのはドコモですが、ドコモにこの料金を請求しているのは、ナビダイヤルのサービス提供元であるNTTコミュニケーションズ。ドコモはあくまで、料金の請求を代行しているにすぎません。音声通話定額サービスの範囲外になるのもそのためで、キャリア各社が料金をコントロールできないからです。NTTコミュニケーションズはドコモの100%子会社なのがイマイチ釈然としないところですが……。

キャリアはあくまで料金回収を代行しているだけ。ドコモの明細にも、「他社接続サービス」と記載される。「他社といっても100%子会社では」とツッコミたいところだが……

 この通話料を抑えるには、主に2つの方法があります。

 1つは何とかしてナビダイヤル以外の電話番号を探すこと。企業によっては、音声通話定額サービスに加入している人のために、「0ABJ」の電話番号や「050」のIP電話番号を併記しているところもあります。こうした会社は非常に良心的。個人的には、その時点で心の中の評価が大きく上がります(笑)。

 一方で、いくら探してもナビダイヤルしか案内していない会社もあります。

 このような場合は、あきらめてナビダイヤルで発信するしかありません。ただし、携帯電話からの発信は上記のように料金改定後も割高なため、固定電話を契約しているのであれば、それを使った方がいいでしょう。

 残念ながら新規申し込みを終了してしまいましたが、「050 plus」の契約が残っている人は、それを使って電話するのもオススメ。スマホから発信ができ、料金は「180秒あたり9.35円」まで下がります。上記のように、携帯電話からだと10分で330円もかかりますが、050 plusであれば720秒(180秒×4)の通話となり、37.4円で済みます。通話料が1/10程度になるというわけです。

050 plusは、同じNTTコミュニケーションズのサービスのため、料金は固定電話と同じレベル。スマホで簡単に利用でき、“ナビダイヤル対策”にもなって便利だった。新規契約を終了したのが残念だ

 また、NTT東西や光コラボレーションを通じて提供されている「ひかり電話」の契約があれば、そちらから電話をかける手もあります。この場合の料金も、050 plusと同様、180秒あたり9.35円です。ドコモの「homeでんわ」のように、モバイルネットワークに「0ABJ」の電話番号が振られるサービスも、固定電話扱いになり割安な価格で通話ができます。

 ひかり電話の場合、自宅にVPNサーバーを立て、出先でそこに接続すると、スマホのアプリから「0ABJ」番号で発信ができる裏技もあります。ユーザー側の自衛策として、覚えておいても損はないでしょう。

画像はAGEphoneというIP電話のクライアント。モバイルネットワークからVPNに接続し、自宅のひかり電話にログインした。この状態だと、外出先から自宅の固定電話を発信できる
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya