本日の一品
久しぶりに登場したステッドラー社の“コンクリート軸ボールペン”
2019年2月18日 06:00
ボールペン(ボールポイントペン)は現代社会でごく一般的に用いられる筆記具の代表の一つだが、その歴史はまだ70~80年くらいだ。その間、インクの材料から肝心のボールの材質まで多くの改良が行われ、様々な派生モデルを生み出しながら現代に至る。
ボールペンの進化は、インクとボールの2つに依るところが大きい。この2つの要素を持ったボールペン・リフィル(交換軸)を供給できる企業は極めて少数に限られており、ボールペンメーカーの多くは既に、それらのリフィルを包むボールペンという筆記具の外装デザインメーカーだと考えても良さそうだ。
単なる鉄や真鍮からスタートした外装の素材も、まだまだ筆記力が大事な時代にはコスト競争に勝てるABSなどが一世を風靡した。そして、少し落ち着いたファッショナブルな時代を迎えると、ABSや金属系素材のコンビネーションが多用された。
時代は変遷し、歴史ある伝統的な筆記具メーカーにとっても、昨今では話題性やチャレンジマインド、SNSにおける評価などにフォーカスした風変わりな商品も不可欠な時代になってきたようだ。
筆者が初めてコンクリート(セメント)素材でできたボールペンを手に入れたのは約5年前。当時はとても、ごく普通の文具店やネットの筆記具ルートだけで売れる代物ではなく、扱っているのはコスパとは無縁のインテリアコンシャスなライフスタイルショップだった。
昨年11月、製図機器や画材を扱うドイツの老舗であるステッドラー社が、キワモノの「ステッドラー コンクリート ボールペン」を発売した。新しいモノが大好きな筆者が速攻で購入したのは言うまでもない。
以前の台湾製のコンクリートボールペンと比べても、よりコンクリートらしさが溢れ、粗削りで、使っていくうちに適度に汚れてくる様は、打ちっぱなしのコンクリートの壁面のように持ち主によって徐々に個性が現れてきて面白い。
付属のパーカー規格のリフィルは、ステッドラー社のボール径0.7㎜のブラックだった。同じ0.7㎜径でよければ人気のジェットストリームリフィルに交換する手もあるが、筆者はボールペンは青軸の太字と決めているので、パーカーの太字(Bold)リフィルであるボール径1.0㎜のブルーを購入し交換した。
手帳に細かなスケジュールや文章をたくさん書くのであれば1.0㎜径は適さないが、筆者が手書きを使う最大の目的は、大小のリーガルパッドや大学ノートクラスの方眼用紙に、思い付きやアイデアなどの最初のイメージを、図や文字を組み合わせて自由に大きく描くだけなので十分、いや最適なのだと思っている。
実際にステッドラー コンクリート ボールペンを使ってみた印象だが、手触りと、使い込んでいくうちに表面のテクスチャーが変化していく様は抜群だ。一般的なパーカータイプのリフィルを採用しているので、インクの色や素材、ボール径の自由度が高いこともなかなか嬉しい。
しかし一番の問題は、筆記スタート時にノックすると発生する独特の耳障りな“ノイズ”なのだ。自宅にあるノック系ボールペンを数種類引っ張り出して、実際にノックして芯先を出してみたが、やはりステッドラー コンクリート ボールペンのノック音が最も聞き苦しい感じだった。
感覚的には、内部に小砂が入ったような“ガリガリ、ジャリジャリ”とした濁音的なノイズだ。コンクリートの外装はあくまで金属メカのボールペンの機構を包んでいるだけのものなので、リフィルがコンクリートに直接触れているわけではなさそうだ。
分解してよく見たところ、ノイズの発生源は、ノックボタンとその周囲の軸受け辺りのようだった。このノイズを粗削りなコンクリートボールペンにマッチしているとするか、異論があるかはあくまで個人差だろう。
ステッドラー社のコンクリートボールペン、アプローチとテクスチャーの処理は大成功だ。しかし、個人的には金属メカ部分から発生する“ガリガリ、ジャリジャリ”ノイズは残念過ぎる。もし次期モデルがあるなら、是非ともメカノイズは改善して、多くの昭和な日本人が思い描く精巧なドイツデザインの復活を期待したい。
製品名 | 購入場所 | 価格 |
---|---|---|
ステッドラー コンクリート ボールペン | ヨドバシ・ドット・コム | 2910円(税込) |