法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

AI対応とLeicaダブルレンズカメラで最高画質を目指した「HUAWEI P20」

 ここ数年、各社から相次いで複数のカメラを搭載したスマートフォンが登場する中、積極的にデュアルカメラを手がけ、市場をリードしているのがファーウェイだ。その主力モデルのひとつであるHUAWEI Pシリーズの最新機種「HUAWEI P20」がSIMフリースマートフォンとして国内でも発売された。実機を試すことができたので、そのレポートをお送りしよう。

ファーウェイ「HUAWEI P20」、約149.1mm(高さ)×70.8mm(幅)×7.65mm(厚さ)、約165g(重量)、ミッドナイトブルー(写真)、ピンクゴールド、ブラックをラインアップ

HUAWEI P20シリーズのメインモデルが登場

 諸外国に比べ、各携帯電話会社が強いとされる国内の携帯電話市場。MVNO各社や端末メーカー各社の取り組みもあり、ここ数年はようやくSIMフリー端末を中心としたオープン市場が起ち上がってきたが、それでもまだ市場に10%にも満たないと言われる。

 そんな国内のSIMフリー端末の市場において、存在感を示しているのがファーウェイだ。同社は元々、各携帯電話会社のモバイルWi-Fiルーターなどで実績をあげてきたが、スマートフォンについては数年前に1~2機種を納入するくらいに留まっていた。その代わりというわけでもないが、オープン市場向けには「HUAWEI Mate」シリーズや「HUAWEI P」シリーズなどの最新モデルを次々と投入し、ユーザーの支持を獲得してきた。

 なかでもコンパクトで持ちやすい「HUAWEI P」シリーズでは、昨年、ドイツの老舗カメラメーカーであるLeica(ライカ)との協業によるダブルレンズカメラを搭載した「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」で高い評価を得る一方、その勢いをうまく活かし、オープン市場ではMVNO各社が扱うものも含めた「HUAWEI P10 lite」を展開し、ベストセラーを記録した。

 今年3月、ファーウェイはフランス・パリでイベントを開催し、「HUAWEI P10」シリーズの後継機種として、フラッグシップモデル「HUAWEI P20」シリーズを発表した。発表イベントではトリプルレンズカメラを搭載した「HUAWEI P20 Pro」、ダブルレンズカメラを搭載した「HUAWEI P20」が大きく扱われ、会場に現われたファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏からも「HUAWEI P20シリーズは日本市場向けにも投入します」とコメントが得られていた。この時点で筆者や同業のライター諸氏は、発表会で大きく扱われた「HUAWEI P20 Pro」「HUAWEI P20」の2機種のほかに、昨年同様、普及モデルの「HUAWEI P20 lite」を加えた3機種が国内のオープン市場に投入されるだろうと予想していた。

 ところが、5月に入り、各携帯電話会社の発表会が開催されると、最上位モデルに位置付けられる「HUAWEI P20 Pro」は、おサイフケータイなどの日本仕様が搭載されたモデルとして、NTTドコモから『専売』という形で販売されることが明らかにされた。つまり、HUAWEI P20 ProのSIMフリーモデルは、国内向けに発売されないことになった。この点について、6月11日に行なわれたファーウェイの発表会後の囲み取材において、呉波氏は「日本のスマートフォンの8割は3大キャリアから販売されており、端末の購入には補助がつき、買いやすい」とコメントし、「HUAWEI P20 Pro」を消費者がより買いやすい形で提供できると考え、NTTドコモのみで販売することになったことを明らかにした。

 SIMフリーモデルを期待していたユーザーにとっては、やや残念な形となったが、NTTドコモでの「HUAWEI P20 Pro HW-01K」の一括購入価格が約10万円であることを考えると、月々サポート割で少しでも安く購入できるという選択は、現実的な判断だったと言えるのかもしれない。

 さて、こうした経過を経て、「HUAWEI P20」シリーズの国内向けのSIMフリーモデルは、「HUAWEI P20」と「HUAWEI P20 lite」が販売されることになった。両モデルとも6月15日から販売が開始されているほか、MVNO各社からも「HUAWEI P20 lite」の取り扱いなどが発表されている。気になる価格については、「HUAWEI P20」が6万9800円(税抜、以下同)、「HUAWEI P20 lite」が3万1980円となっており、昨年の「HUAWEI P10」シリーズが発売されたときとほぼ同じ価格帯に設定されている。

 「HUAWEI P20」シリーズの大きな違いを少し説明しておくと、「HUAWEI P20 Pro」はLeicaトリプルレンズカメラに、6.1インチのフルHD+対応有機ELディスプレイを搭載しているのに対し、「HUAWEI P20」はLeicaダブルレンズカメラに、5.8インチのフルHD+対応TFT液晶ディスプレイを搭載する。

最上位モデルの「HUAWEI P20 Pro HW-01K」(左)とSIMフリーモデルの「HUAWEI P20」はほぼ同じ基本デザインを採用するが、サイズは「HUAWEI P20」がわずかにコンパクト

 「HUAWEI P20 lite」はダブルレンズカメラ(Leicaとの協業ではない)に、5.84インチのフルHD+対応液晶ディスプレイを搭載するが、チップセットは上位2モデルよりも1クラス下のものを採用しているため、カメラなどのAI対応機能はない。

 これらを総合すると、「HUAWEI P20 Pro」と「HUAWEI P20」はスペック的にもかなり近い兄弟モデルだが、「HUAWEI P20 lite」は3万円台という価格を実現するため、スペックを抑えているという印象だ。それぞれの機種との違いも踏まえながら、「HUAWEI P20」の内容をチェックしてみよう。

縦横比18.7:9のノッチ付き縦長ディスプレイを搭載

 まず、外観から見てみよう。HUAWEI PシリーズはファーウェイのもうひとつのフラッグシップモデルであるHUAWEI Mateシリーズよりもコンパクトで持ちやすいという特徴があり、大画面ディスプレイを搭載しながら、今回のモデルも持ちやすく仕上げられている。

 まず、ボディの基本的なデザインは最上位モデルの「HUAWEI P20 Pro」のもの継承しており、ロゴなどのレイアウトも横向きでデザインされている。背面は光沢感のあるガラス仕上げを採用しており、薄さ7.65mm、幅70.8mmに抑えられている。ディスプレイサイズが異なることも関係しているが、「HUAWEI P20」は「HUAWEI P20 Pro」に比べ、薄さも幅も高さもひと回りコンパクトに仕上げられている。

右側面には電源キーと音量キーを備える
背面は従来の「HUAWEI P」シリーズと違い、横向きのデザイン
底面にはUSB Type-C外部接続端子を備える。3.5mmイヤホンマイク端子は廃止された
ノッチ(切り欠き)部分はソフトウェアで表示/非表示を切り替えられる
「HUAWEI P10 Plus」(左)と「HUAWEI P20」。ディスプレイサイズが上下に大きく拡がり、指紋認証センサーは小型化。ボディ幅はスリム化された

 パッケージには他のファーウェイ製品同様、クリアタイプの樹脂製のカバーが付属しているため、購入直後からクリアカバーを装着した状態で使いはじめることができる。約7.65mmというスリムなボディながら、3400mAhの大容量バッテリーを内蔵しており、付属のACアダプタを利用した「HUAWEI SuperCharge」による急速充電に対応し、バッテリー残量がゼロの状態から、約30分で約58%まで充電できるという。

 ちなみに、防水・防塵性能については、IPX3準拠の防水、IP5X準拠の防塵に対応するが、「HUAWEI P20 Pro」のIPX7準拠の防水、IP6X準拠の防塵に比べ、性能が抑えられているため、水廻りやほこりっぽい場所での取り扱いには少し注意が必要だ。

 本体の右側面には音量キーと電源キー、左側面にはピンで取り出すタイプのSIMカードトレイ、下面にはUSB Type-C外部接続端子を備える。イヤホンマイクなどを接続する3.5mmステレオイヤホン端子がないため、パッケージにはUSB Type-C外部接続端子に接続する「USB-C to 3.5mm ヘッドフォンジャックアダプタ」が同梱される。

 本体前面には2244×1080ドット表示が可能な5.8インチのTFT液晶ディスプレイを搭載する。縦横比は18.7:9と縦長で、上部には「HUAWEI P20 Pro」と同じようなノッチ(切り欠き)があり、デザイン上のアクセントになっている。ノッチ部分にはAndroidプラットフォームの通知が表示されるが、ユーザーの好みに応じて、ノッチ部分の表示をON/OFFすることができる。

 チップセットは最上位モデルの「HUAWEI P20 Pro」と同じAI対応のKirin 970、4GB RAMと128GB ROMを搭載しており、microSDメモリーカードに非対応である点も共通仕様となっている。NTTドコモ向けの「HUAWEI P20 Pro HW-01K」にはUSB Type-C外部接続端子に接続するmicroSDメモリーカードリーダーが同梱されていたが、「HUAWEI P20」には同梱されていないため、バックアップやデータ移行などで、microSDメモリーカードを利用したいときは、別途、市販のmicroSDメモリーカードリーダーなどを用意する必要がある。

 本体前面にはロック解除などに利用できる指紋認証センサーを備える。ロック解除は指紋認証以外に、顔認証にも対応しており、画面点灯時は画面を見るだけでロックが解除される。スムーズな顔認証のために、端末を持ち上げたときに画面を点灯する機能も用意されており、顔データ登録時にいっしょに設定することができる。この連動を設定した状態でもムダに画面が点灯することはなく、端末をポケットなどから取り出して、すぐに使いはじめることができる。室内など、明るいところでは瞬時に認証するうえ、真っ暗な部屋でも明るいところよりもわずかに遅いものの、スムーズにロックを解除できた。指紋認証と組み合わせれば、ストレスなく使うことができるはずだ。

本体前面下には指紋認証センサーを装備。ディスプレイの保護フィルムが貼付された状態で出荷される
指紋認証センサーの登録画面は図解入りで、はじめてのユーザーにもわかりやすい
顔認証も利用できる。顔認証利用時、端末を持ち上げると、画面をONに切り替える設定もできる

 ネットワーク関係については、FDD-LTE/TDD-LTE、W-CDMA、TD-SCDMA、GSMのモバイルネットワークに対応する。対応バンドについては本誌の速報記事やニュースリリースを参照していただきたい。

 実際に各社のSIMカードを装着したところ、モバイルデータ通信はNTTドコモ及びNTTドコモ系MVNO、au系MVNO、ソフトバンク(ワイモバイル)で利用できた。音声通話については、NTTドコモ及びNTTドコモ系MVNOが3Gによる通話ができたのに対し、ソフトバンク(ワイモバイル)はVoLTEによる通話ができた。

 au系MVNOについては「HUAWEI P20」がCDMA2000のネットワークに対応していないうえ、au VoLTEにも対応していないため、音声通話が利用できなかった。ファーウェイはau向けに「HUAWEI P20 lite HWV32」や「HUAWEI nova 2 HWV31」などを供給していることを鑑みれば、今後のバージョンアップで、SIMフリーモデルの「HUAWEI P20」もau VoLTEでの利用を実現して欲しいところだ。

 デュアルSIM・デュアルVoLTE(DSDV)にも対応するが、VoLTEはソフトバンク(ワイモバイル)のみの対応となっている。ちなみに、詳しくは後述するが、SIMフリーモデルの「HUAWEI P20 lite」では、au VoLTEの利用が確認できている。

出荷時に設定されていたNTTドコモ系MVNOのAPN。NTTドコモのspモードは登録されていない
出荷時に設定されていたau系MVNOのAPN。UQモバイルやBIGLOBE タイプAは登録されているが、auの「LTE NET for DATA」は登録されていない
出荷時に設定されていたソフトバンク系のAPN。
SIMカードトレイには2枚のnanoSIMカードを装着可能。microSDメモリーカードには非対応
SIMカードはデュアルSIM&デュアルスタンバイ対応
VoLTE対応SIMカードを装着したときは、[VoLTE通話]という項目が表示される

 Wi-Fiについては2.4GHzと5GHzの両対応で、IEEE 802.11 a/b/g/n/ac準拠のアクセスポイントなどと高速通信が利用できる。Bluetoothは4.2に対応し、高音質コーデックはaptX/aptX HD/LDACのほかに、ファーウェイ独自のHWAにも対応する。

 ホームアプリはおなじみの「Huaweiホーム」が設定されており、設定画面の[画面]-[ホーム画面のスタイル]で[標準]と[ドロワー]を選べるようにしている。この選択項目はグローバル版の「HUAWEI P20 Pro」やSIMフリーモデルの「HUAWEI P20 lite」にも用意されていたファーウェイ端末の標準的な機能だが、NTTドコモ向けの「HUAWEI P20 Pro HW-01K」では削除されている。

 Androidプラットフォームの操作に欠かせないナビゲーションキー(ナビゲーションバー)もカスタマイズすることができる。[戻る]キーと[履歴]キーの並びを変えられるほか、ワンタッチで通知パネルを表示するキーを追加することもできる。また、前述の指紋認証センサーを使い、ナビゲーションキーの機能を割り当てる「画面外ナビゲーションボタン」も設定できる。指紋認証センサー部分を短くタップして「戻る」、ロングタップで「ホーム」、左右へのスワイプで「履歴」の機能が割り当てられており、画面内のボタンを非表示にできるため、画面をより広く使うことができる。日本語入力は従来の「HUAWEI P10」シリーズなどでも採用されていたオムロンソフトウェア製「iWnn」が搭載される。かな入力、英字入力でキーボードの配列を切り替えたり、キーボードのデザインを変更できるようにするなど、好みに合わせて、カスタマイズできる。

 実用面の機能としては、着信音の鳴動時、本体を伏せて(裏返して)着信音を消す機能や、前述の顔認証との連動も可能な端末持ち上げ時の画面点灯など、モーションセンサーを利用した動作が設定できる「モーションコントロール」、片手操作がしやすいように、画面を一時的に縮小表示したり、文字入力のキーボードを左右に寄せられる「ワンハンドUI」などが搭載される。新しいところでは三本指で画面をスワイプして撮れる「スクリーンショット」も実装されている。

ファーウェイ製端末おなじみのホーム画面。出荷時設定ではホーム画面上にすべてのアプリのアイコンが表示される
ホーム画面のスタイルは「標準」と「ドロワー」から選ぶことができる
Androidプラットフォームのナビゲーションキーは好みに合わせて、カスタマイズすることができる
[戻る]キーと[履歴]キーの入れ替えに加え、ワンタッチで通知パネルを表示するボタンを追加することも可能
指紋認証センサーを使い、Androidプラットフォームのナビゲーションキーの機能を割り当てることもできる

暗いシーンにも強いLeicaダブルレンズカメラ

 今回の「HUAWEI P20」の最大の注目ポイントのひとつは、やはり、何といっても背面に搭載された「Leicaダブルレンズカメラ」だ。ファーウェイは2015年に国内向けに発売した「honor 6 Plus」ではじめてデュアルカメラを搭載し、2016年発売の「HUAWEI P9」でLeicaとの協業による「Leicaダブルレンズカメラ」を初搭載。それ以降、同社のフラッグシップモデルの「HUAWEI P10」「HUAWEI P10 Plus」「HUAWEI Mate 9」「HUAWEI Mate 10 Pro」に次々と搭載してきた。

背面にLeicaダブルレンズカメラを搭載

 ちなみに、昨年の「HUAWEI P10 lite」や「HUAWEI Mate 10 lite」、今年の「HUAWEI nova 2 HWV31」や「HUAWEI P20 lite」など、普及モデルにもダブルレンズカメラは搭載されているが、これらのモデルのダブルレンズカメラや画質のチューニングは、Leicaとの協業によるものではなく、ファーウェイ独自の技術によって実現されている。ハードウェアとしてはLeicaレンズが搭載されていないこと、画像処理エンジンが異なることなどが挙げられている。

 今回の「HUAWEI P20」の背面に搭載されているダブルレンズカメラは、1200万画素のRGBカラーセンサーにF1.8のレンズ、2000万画素のモノクロセンサーにF1.6のレンズで構成されており、カメラ部にはLeica製レンズを表わす「SUMMILUX-H 1:1.6/27 ASPH」という表記が「LEICA」のロゴと共にあしらわれている。イメージセンサーのピクセルサイズはライバル機種よりも大きな1.55μmで、センサーサイズそのものもコンパクトデジタルカメラとほぼ同等の1/2.3インチのものを搭載する。ダブルレンズカメラ部横のフラッシュ部分には色温度センサーが内蔵されており、Leicaのチューニングを活かした美しい色彩を再現した写真を撮影できるようにしている。フォーカスは像面位相差AF、コントラストAF、レーザー(赤外線)AF、デプス(深度)AFに対応する。

 また、AIを活かしたシーン認識にも対応しており、19の被写体とシーンを自動的に認識し、それぞれのシーンに最適化した設定で写真を撮影することが可能だ。実際に、どのようなシーンとして認識されたかもファインダー内に表示されるため、非常にわかりやすい。AIは手ぶれ補正にも活かされており、夜間モードでの撮影時、周囲の状況を判断し、露光時間やフレーム数などを自動で設定される。暗いところでの撮影時に三脚などで固定しなくても明るく、色鮮やかな写真が撮影可能だ。

 撮影モードはダブルレンズカメラの特徴のひとつであるボケ味の利いた「ワイドアパーチャ」をはじめ、人物に適した「ポートレート」、細かく設定ができる「プロ」などが用意されており、その他にも「スロー」「コマ抜き」「文書スキャン」「ナイスフード」なども利用できる。いずれの撮影モードも美しく撮影することができるが、「HUAWEI P20」の場合、やはり、Leicaのチューニングによる色彩やコントラストなどが特徴的で、他製品にはないテイストの写真を撮影できることが魅力だ。実際に撮影した印象については、最上位モデルの「HUAWEI P20 Pro」には一歩譲るかもしれないが、他機種と比較しても確実に高品質な写真を撮影できる印象で、なかでも夜間など、暗いところでの撮影はトップクラスの仕上がりと言えるだろう。

 インカメラについては2400万画素のイメージセンサーとF2.0の固定焦点のレンズが組み合わせられており、ポートレートモードでは10段階の自然な補正ができるほか、おなじみのビューティー補正も搭載されている。セルフィーに陰影を加えることにより、多彩なライティング効果を作り出す「3Dライティング」機能も新たに搭載されている。

カメラのファインダー画面。画面中段の[写真]や[ポートレート]の部分を左右にフリックして、モードを切り替える
2倍ズームのファインダー画面。右端の[2x]をタップすれば、再び[1x]に戻る
カメラモードはファインダー画面中段の[その他]を選ぶと、さらにいろいろなものを選べる
カメラの機能を設定する画面。[プロ]モードではRAW形式での撮影にも対応する
ワイドアパーチャーに加え、フィルターを設定すると、こんな写真を生成することも可能
薄暗いバーで撮影。右側の瓶の透明感や背景の瓶の光なども美しく再現されている
照明などで少し明るめの夜景を撮影。手持ちで撮影しただけだが、特にぶれることもなく、きれいな仕上がりだ
高層ビルから建物と空を撮影。空の青さがやや強調される感はあるが、周囲の歪みもなく、バランス良く撮影できている

SIMフリーモデルの「HUAWEI P20 lite」は何が違う?

 さて、6月11日のファーウェイの発表会では、「HUAWEI P20」といっしょに、SIMフリーモデルの「HUAWEI P20 lite」が発表された。「HUAWEI P20 lite」はグローバル向けの発表後、国内ではauがいち早く「HUAWEI P20 lite HWV32」として採用し、本連載ではすでにレビューを掲載した。製品の詳しい内容はそちらを参照していただきたいが、SIMフリーモデルの違いなどについて、少し補足しておこう。

ファーウェイ「HUAWEI P20 lite」、約149mm(高さ)×71mm(幅)×7.4mm(厚さ)、約145g(重量)、サクラピンク(写真)、クラインブルー、ミッドナイトブラックをラインアップ
「HUAWEI P20 lite」の右側面には音量キーと電源キーが備えられている
「HUAWEI P20 lite」の背面。中央上の円は指紋認証センサー

 「HUAWEI P20 lite」のauからの発表後、UQモバイル、ワイモバイルなどでも取り扱いが発表され、今回の発表会ではMVNO各社での取り扱い、家電量販店などでの販売も合わせて発表された。SIMフリーモデルの「HUAWEI P20 lite」は、UQモバイルやワイモバイル、MVNO各社が扱うものと基本的に同じだが、au VoLTEの対応(ワイモバイル版はau VoLTE対応が表記されていない)などが異なる。

 また、auが販売する「HUAWEI P20 lite HWV32」は背面にauのロゴがプリントされ、ROM(ストレージ)が64GBに拡張されているが、これはauが出荷時にプリインストールするアプリが多いことを配慮したためだという。

 ちなみに、SIMフリーモデルはデュアルSIMに対応するが、3G/LTEが利用できるのは片方のSIMカードのみで、2枚目のSIMカードはGSMのみで利用するため、主に海外での利用が中心になる。

 auの「HUAWEI P20 lite HWV32」はSIMカードトレイの形状こそ似ているものの、当然のことながらデュアルSIMに対応しないが、片方のスロットはmicroSDメモリーカードで利用できる。SIMフリーモデルなどは、2枚目のSIMカードとmicroSDメモリーカードが排他利用になる。

 VoLTEについてはauのネットワークを利用したmineo AプランのVoLTE対応SIMカード、ソフトバンク(ワイモバイル)のSIMカードで、それぞれ動作の確認ができた。VoLTE対応SIMカードの場合、設定画面の[モバイルネットワーク]で[VoLTE通話]という項目が表示され、設定のON/OFFが操作できるようになる。NTTドコモの場合、spモード契約のSIMカード、NTTドコモのネットワークを利用したMVNO各社のSIMカードのいずれもVoLTE通話のメニューが表示されず、VoLTEを利用することができなかった。

「HUAWEI P20 lite」(左)と「HUAWEI P20」。本体前面の指紋認証センサーの有無が違うが、ノッチなどのデザインは共通
「HUAWEI P20 lite」の、左側面にSIMカードトレイを格納するレイアウト。nanoSIMカードとmicroSDメモリーカードを装着可能
nanoSIMカードを2枚装着するデュアルSIMに対応。ただし、3G/LTEは片方のみのサポート
出荷時に設定されていたNTTドコモ系MVNOのAPN。内容は「HUAWEI P20」と同じ
出荷時に設定されていたau系MVNOのAPN。UQモバイルやBIGLOBE タイプAは登録されているが、auの「LTE NET for DATA」は登録されていない。内容は「HUAWEI P20」と同じ
出荷時に設定されていたソフトバンク系のAPN。内容は「HUAWEI P20」と同じ

 チップセットなどの仕様は共通で、Kirin 657を搭載する。Wi-Fiは2.4GHzと5GHzの両対応で、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠となっている。Bluetoothは4.2対応で、コーデックはaptXをサポートする。

 「HUAWEI P20」に比べると、スペックが抑えられているが、前述のように価格も3万円台前半に抑えられている。楽天モバイルのように、既存契約ユーザー向けに割引販売を行なうMVNOもあり、「HUAWEI P20 lite」は機種変更ユーザーにも買いやすい製品と言えるだろう。

 ただ、ネットワークの対応を考慮すると、auのネットワークを利用するサブブランド(UQモバイルなど)やMVNO各社、ソフトバンクのネットワークを利用するワイモバイルなどの方が、VoLTEも利用できるなどのメリットがあるので、おすすめと言えそうだ。

「HUAWEI P20 lite」も「HUAWEI P20」と同じように、VoLTE対応SIMカードを装着すると、設定画面に[VoLTE通話]が表示される
「HUAWEI P20 lite」を使い、薄暗いバーで撮影。「HUAWEI P20」ほど、暗いところに強い印象はないが、ノイズを抑えたきれいな仕上がりだ
「HUAWEI P20 lite」を使い、高層ビルから撮影。歪みもなく、自然な仕上がりだ
6月15日から販売が開始されたSIMフリーモデルの「HUAWEI P20 lite」(左)と「HUAWEI P20」(右)

「HUAWEI P20」は最上位にモデルに迫る性能と仕上がり

 この夏、主要3社に加え、MVNO各社、オープン市場向けのSIMフリーモデルなど、多くのスマートフォンを国内市場に投入するファーウェイだが、そのラインアップの中軸を担うのが「HUAWEI P20」シリーズだ。

 「HUAWEI P20」シリーズの最上位モデル「HUAWEI P20 Pro」がNTTドコモ専売となったため、SIMフリーモデルでは本稿で取り上げた「HUAWEI P20」が主力モデルに位置付けられる。スペック的には最上位モデルの「HUAWEI P20 Pro」と比較して、ディスプレイやマルチカメラの仕様が異なるものの、基本的なユーザービリティやAI対応のチップセットなどは共通であり、3万円強の価格差を考えると、お買い得という見方もできる。

 カメラについてはイメージセンサーなどの仕様が違うが、「HUAWEI P20 Pro」が新しい方向に進化を遂げたのに対し、「HUAWEI P20」は「HUAWEI P10」などの流れを継承する正統進化モデルという印象だ。Leicaとの協業によるカメラの絵作りもしっかりと進化しており、これまでと同じように、さまざまなシーンで写真を撮って、SNSなどでシェアすることが楽しくなるモデルに仕上げられている。SIMフリースマートフォンとしては少し上の価格帯のモデルになるが、その価格以上に楽しめる一台と言えるだろう。ぜひ、実機を手に取って、そのポテンシャルを体感して欲しい。

「HUAWEI P20」にはこれまでの「HUAWEI P」シリーズを継承するのダブルレンズカメラを搭載。最上位機種のトリプルレンズカメラに迫る性能を実現

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone X/8/8 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂2版」、「できるポケット HUAWEI P10 Plus/P10/P10 lite 基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10 改訂3版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。