法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
デュアルカメラ搭載で国内全キャリアに対応する「moto g6 plus」「moto g6」
2018年6月14日 12:29
ここ数年、国内市場のSIMフリー市場に積極的に新モデルを投入してきたモトローラは6月7日、主力モデルのMoto Gシリーズの最新機種「moto g6 plus」と「moto g6」を発表した。昨年、国内で好評を得た「Moto G5 Plus」「Moto G5」「Moto G5s Plus」の後継機種に位置付けられる。ひと足早く実機を試すことができたので、ファーストインプレッションをお届けしよう。
国内全キャリア対応を謳う
ここ数年、「格安SIM」「格安スマホ」というキーワードと共に拡大してきた国内のSIMフリースマートフォン市場。MM総研の調査によれば、2017年度通期の国内の携帯電話端末の出荷は、前年度比2.7%増の3746万台を記録し、スマートフォンは全体の86%を占める3258万台を出荷しているという。SIMフリースマートフォンの出荷台数も前年比11.9%増の315万台となり、スマートフォン出荷台数の9.7%まで拡大した。日本は販売奨励金などの施策の影響もあり、各携帯電話事業者の端末が圧倒的に強いと言われてきたが、それでもSIMフリースマートフォンが10%近くまで増えてきたのは、かなりの健闘と言えそうだ。
SIMフリースマートフォンが拡大してきた背景には、MVNO各社の料金の安さもあるが、当然のことながら、「端末も回線も自由に選びたい」と考えるユーザーが増えてきたことが挙げられる。ただ、国内で販売されているSIMフリースマートフォンは、本当に自由に選べる状況にあるかというと、必ずしもまだ十分ではない。たとえば、その一つがそれぞれのスマートフォンの対応する回線だ。現在、国内のMVNO各社は国内の主要3社から回線設備を借り受けて、サービスを提供しているが、端末側から見てみると、どの回線でも使えるというわけではない。たとえば、端末によってはNTTドコモ系のMVNOで利用できるが、au系MVNOには対応しないことがある。VoLTEについてはさらに厳しい状況で、各社のVoLTEに対応するSIMフリースマートフォンは非常に少ないのが実状だ。
今回、発表されたモトローラのmoto g6 plusとmoto g6は、いずれも従来のモトローラ製端末に引き続き、国内主要3社のネットワークとVoLTEへの対応を謳っている。各携帯電話事業者と契約した回線をはじめ、各社から回線を借り受けるMVNO各社の回線で利用することができる。実は、こうした対応を謳うSIMフリースマートフォンは少なく、いろいろな事業者の回線を乗り換えながら使いたいというユーザーにとっては魅力的なポイントとなっている。
モトローラはここ数年、国内市場向けにフラッグシップモデルのMoto Zシリーズをはじめ、Moto XシリーズやMoto Gシリーズなどを展開してきたが、これらのうち、Moto Gシリーズはもっとも販売数が多い主力モデルに位置付けられる。リーズナブルな価格帯の製品ながら、2016年に発売された「Moto G4 Plus」では他社に先駆けて「DSDS」(Dual SIM/Dual Stanby)に対応するなど、機能面でも他社をリードしてきたシリーズでもある。昨年はデザインを一新した「Moto G5 Plus」「Moto G5」、デュアルカメラを搭載した「Moto G5s Plus」も展開し、ユーザーのニーズにしっかりと応えるシリーズとして、定着してきた。
今回のmoto g6 plusとmoto g6は、ディスプレイやチップセットなどが最新スペックに更新されたほか、ボディも高級感のあるデザインに一新されるなど、まったく新しいモデルとして進化を遂げている。同社のラインアップとしてはさらにリーズナブルなMoto eシリーズも加わったため、Moto Gシリーズはより主力モデルらしい位置付けになった印象だ。moto g6 plusとmoto g6は基本的なデザインや機能などを共通にしながら、ディスプレイサイズやチップセット、メモリーなどの仕様が異なる兄弟モデルとなっている。moto g6 plusから順に内容をチェックしてみよう。
縦横比18:9のフルHD+対応5.9インチディスプレイを搭載
まず、外観から見てみよう。moto g6 plusは基本的なボディの形状を従来のMoto G5s Plusから継承しており、手にフィットする持ちやすいデザインに仕上げている。従来モデルがメタルっぽさを強調した仕上げだったのに対し、今回は背面も3Dガラスで仕上げたことにより、アンテナ部を格納していた継ぎ目などもなくなり、背面のCorning社製Gorilla Glassによる仕上げとも相まって、グッと高級感の増したデザインになっている。国内向けのボディカラーは、ディープインディゴのみが販売される。
moto g6 plusの外観が従来モデルから変わったのは、背面だけでなく、ディスプレイの進化により、前面のデザインも大きく印象が変わった。従来のMoto G5s Plusは縦横比16:9のディスプレイだったが、今回は縦横比18:9の5.9インチフルHD+対応IPS液晶ディスプレイが搭載されており、本体前面のほとんどをディスプレイが覆うデザインに変更されている。
表示可能な解像度は2160×1080ドットとなり、縦方向に240ドット分、拡がったことになる。縦方向により多くの情報が表示できる上、横向きに構えたときは映像コンテンツなどをワイドな画面で楽しむことができる。ディスプレイの前面は割れにくいCorning Gorilla Glass 3を採用する。従来モデルと比較して、本体の高さは約6.5mmほど、長くなったが、ボディ幅は約0.7mmスリムになっている。
ディスプレイの下側には指紋センサー、上側にはレシーバーやインカメラが搭載されている。指紋センサーは従来モデルに比べ、縦方向が狭いタイプに変更されているが、使い勝手は変わらず、認証のレスポンスも高速だ。従来モデルに搭載されていた「ワンボタンナビ」は継承されており、指紋センサーをスワイプしたり、長押しすることで、Androidプラットフォームのナビゲーションキーと同じ役割を操作することができる。
本体のロックについては指紋認証のほかに、新たに顔認証にも対応する。インカメラで顔を登録しておけば、ロック画面で端末を顔の前に持ってくるや否や、瞬時にロックが解除される。ただし、顔認証の設定時に「パターンやPINに比べ、安全ではありません」と表示されることからも分かるように、セキュアな利用にはあまり向いていない。兄弟姉妹など、よく似た顔でもロックが解除されてしまう可能性があるため、より安全に使いたいときは指紋認証がおすすめだ。
ボタン類のレイアウトも従来モデルと共通で、右側面に電源キーと音量キーを備え、下面側にはUSB Type-C外部接続端子と3.5mmステレオイヤホンマイク端子を備える。SIMカードスロットのトレイは従来モデルの左側面から上部に移動している。ピンで取り出すタイプのトレイ式であることは変わらないが、他製品に比べ、SIMトレイが長いこともあってか、一般的なピンではやや長さが足りず、付属のピンやクリップを伸ばした長めのピンを挿さないと、トレイを取り出せないので、注意が必要だ。
本体には3200mAhの大容量バッテリーを搭載しており、パッケージには15WのUSB Type-C接続のACアダプターが付属する。チップセットはクアルコム製のSnapdragon 630(オクタコア)を採用し、4GB RAMと64GB ROMを搭載し、最大128GBのmicroSDメモリーカードも装着可能だ。
モバイルネットワークについては前述の通り、国内の主要3社のネットワークに対応しており、MVNOについても主要3社から回線設備を借り受けた事業者で利用できる。従来モデルに引き続き、DSDSに対応しており、国内では片方が3Gになるものの、もう片方でLTEネットワークを利用できる。たとえば、昔から利用しているNTTドコモの回線を音声通話用に片方のトレイにセットし、もう片方には割安なデータ通信が利用できるMVNOのSIMカードを装着するといった使い方もできる。
VoLTEについてはNTTドコモのspモード契約のSIMカード、mineo(Aプラン)のVoLTE対応SIMカードで動作を確認することができた。モトローラによれば、ソフトバンクのVoLTEにも対応する。このあたりは従来のMoto G5s PlusやMoto X4、Moto Z2 Playなどと基本的には同じ動きのようだ。
多彩な機能を揃えた[Moto]アプリ
moto g6 plusにはプラットフォームとして、出荷時からAndroid 8.0 Oreoがインストールされている。モトローラは「ピュアAndroid」を謳い、これまで国内向けに販売してきたモデルでもセキュリティアップデートを含むAndroidプラットフォームのアップデートを提供してきた実績があり、安心して使うことができる。
ただし、ピュアAndroidを謳っているからといって、オリジナルの機能がないわけではなく、独自のユーザビリティを実現する機能が搭載されている。その入口となるのがプリインストールされた「Motoエクスペリエンス」とも呼ばれる[Moto]アプリだ。
まず、[Motoキー]は本体前面に備えられた指紋センサーを本体のロック解除以外に使う機能になる。たとえば、アプリやWebサイトへのログイン、Windowsパソコンのロック解除やWebサイトへのログインなどをmoto g6 plusの指紋センサーで操作できる。利用にはLenovo ID(Facebookアカウントなどでも可)の登録が必要だが、パソコンを併用するユーザーが多いことを考慮すると、便利な機能の一つと言えそうだ。
[Motoアクション]は本体のアクション(動き)によって、さまざまな機能が利用できるというもので、従来モデルからも搭載されていた。3本指で画面を長押ししての「クイックスクリーンショット」、前述の指紋センサーを利用したナビゲーションキーの「ワンボタンナビ」、本体を2回振り下ろすとライトがON/OFFできる「フラッシュライト操作」などのほか、本体を「持ち上げて着信音停止」、画面を下向きに置いての「下向きで無音化」などが用意されている。いずれも必要に応じて、ON/OFFができるので、自分の好みで設定するのがおすすめだ。
[Motoディスプレイ]も従来モデルから存在したメニューで、ブルーライトをカットする「夜間表示」、画面がOFFのときにフェードイン/フェードアウトで通知を表示する「Motoディスプレイ」が継承され、新たに画面を見ているときに画面をONのままにする「親切ディスプレイ」が搭載された。
[Motoボイス]は音声コマンドを使い、電話をハンズフリーで操作する機能だが、残念ながら日本語がサポートされていないため、実質的に利用することができない。
また、これらの機能はユーザーが逐次、設定しなければならないわけではなく、端末の動作状況によって、便利な機能を提案する[候補]メニューも用意されており、[Moto]アプリを起動した画面に加え、通知でもおすすめされる。ユーザーが機能を使うチャンスを教えてくれる仕様は好感が持てる。
ホームアプリについては「ピュアAndroid」を謳うこともあり、Android標準に準拠し、ホーム画面にはモトローラ製端末でおなじみの丸い時計ウィジェットがプリセットされている。中央の時計表示のほか、円内上段に天気、下段の日付をタップしてカレンダー、外周で電池残量を表現するなど、意外によくできているウィジェットなので、ユーザーは使い方を覚えておきたいところだ。
日本語入力はGoogle日本語入力を採用する。日本語入力はユーザーによって、好みがあるが、この部分もAndroid標準を採用することで、将来的なアップデートをより確実なものにしていると言えそうだ。この他に、「Outlook」や「LinkedIn」などのアプリが標準でインストールされている。
デュアルカメラとユニークな編集機能を搭載
今回発売されたmoto g6 plusは昨年のMoto G5s PlusやMoto X4に続き、デュアルカメラが搭載されている。
デュアルカメラの仕様としては、1200万画素のイメージセンサーとF1.7のレンズ、500万画素のイメージセンサーとF2.2のレンズを組み合わせた構成となっている。2つのカメラの内、500万画素カメラは深度センサーを基本としつつ、一部、明暗情報も補足的に利用することで、暗いところでも明るい写真を撮影できるようにしているという。実際に筆者が普段、よく暗いところでの撮影に使っている薄暗いバーでも室内やグラスをきれいに撮影することができた。この価格帯のカメラとしてはかなり優秀な部類に入るだろう。
また、デュアルカメラのもう一つのメリットは、被写界深度の差を活かし、メインの被写体の背景をぼかした写真を撮影できることだ。これも従来モデルからの継承になるが、ポートレートなどを撮影するときは人物をより強調した写真が撮影でき、SNSなどに投稿しても映えるため、デュアルカメラの定番機能として、ユーザーにも定着しつつある。
ただ、moto g6 plusは単にデュアルカメラを搭載するだけでなく、凝った写真を撮影し、面白く加工できる編集機能が搭載されている。従来モデルでは[深度の有効化]というカメラモードで撮影し、撮影した写真を[深度エディタ]で編集するという流れだったが、今回は目的別にカメラモードが用意されている。
まず、カメラを起動し、左からスワイプすると、撮影モードが表示される。[ポートレート]はその名の通り、人物などを撮るときのモードで、撮影時に背景のぼかし具合いを調整することが可能だ。[カットアウト]はファインダー内の特定部分を切り抜いて撮影し、すでに撮った写真や保存されている写真と合成することができる。[スポットカラー]はファインダー内の特定の色のみを残し、他の色はモノクロにできるモードで、少しアートな雰囲気の写真を撮ることができる。
これらのモードのうち、ポートレートで撮影した写真を[フォト]アプリで表示し、[エディタ]ボタンをタップすると、[肖像画エディタ]が起動でき、[選択的フォーカス]で特定のところにピントを合わせたり、[選択的モノクロ]で特定のカラー以外はモノクロに変換するといった編集ができる。撮影と編集は他機種にない面白い機能なのだが、従来モデルに比べ、やや操作の流れがわかりにくくなった感もあるが、モトローラ製端末お得意のチュートリアルなどでフォローして欲しいところだ。
また、メインカメラにはさまざまなモノを認識する「インテリジェントカメラ」と呼ばれる機能も搭載される。たとえば、バーコードやQRコードはアプリをダウンロードする必要がなく、カメラアプリを起動して、バーコードやQRコードに向ければ、自動的に認識される。ランドマークなどについてもカメラを向け、ファインダー中央下のボタンをタップすると、対象を認識し、そのランドマークに関する情報や地図をWeb上から検索して表示する。
今回は試用期間中にそういった場所に出かけなかったため、過去に旅行で出かけたときの写真をパソコンの画面に映し出し、そこにカメラを向けてみたが、多くのランドマークは正しく認識させることができた。表示内容も基本的には日本語のものが選ばれる。さらに、物体を認識する機能も利用できる。たとえば、ペットボトル飲料やお菓子などにカメラを向け、画面中央下のボタンをタップすると、対象物を認識し、商品情報や関連するWebページなどの情報を表示する。使い方にもよるが、なかなか便利で面白い機能の一つと言えそうだ。
兄弟モデル「moto g6」と普及モデル「moto e5」も発売
今回、モトローラはmoto g6 plusといっしょに、moto g6も発表している。デュアルカメラなど、基本的な機能は共通としながら、わずかにスペックや機能を抑えることで、実売価格で約1万円ほど、お手頃な価格を実現している。
moto g6の基本的なデザインはmoto g6 plusを継承しているが、ディスプレイがフルHD+対応5.7インチになり、チップセットはSnapdragon 450、メモリーはRAM 3GB、ROM 32GBを搭載し、最大128GBのmicroSDメモリーカードに対応する。ネットワークの仕様は基本的共通で、DSDSにも対応する。LTEは片方のSIMカードスロットのみで利用でき、もう片方は3Gでの利用になる。
アウトカメラは1200万画素イメージセンサーにF2.0のレンズ、500万画素イメージセンサーにF2.2のレンズで構成するデュアルカメラを搭載し、ボケ味を利かせたポートレート写真なども撮ることができる。インカメラは1600万画素イメージセンサーにF2.2のレンズを組み合わせたものを搭載する。イメージセンサーのスペックが異なる関係上、機能的にはアウトカメラの超高速フォーカスと超低光量での撮影には対応していない点などがmoto g6 plusと異なる。
また、今回は試用していないが、モトローラでは2万円台を切る価格帯を実現した「moto e5」もラインアップに加えてきた。詳細は発表会の記事を参照していただきたいが、ディスプレイはHD+対応5.7インチ、チップセットはSnapdragon 425を搭載し、カメラもシングルにするなど、ハードウェアのスペックは抑えられているが、DSDS対応を維持するなど、実用面での機能はしっかりとサポートしたお買い得なモデルに仕上げられている。
こうした普及価格帯のモデルをラインアップに加えてきたのは、ライバルメーカーの攻勢に対抗する狙いもあるが、モトローラによれば、店頭などでお客さんの反応を見ていると、老舗ブランド「Motorola」を知る40~50代の親世代が子ども用スマートフォンとして購入するケースが増えてきており、そういった若い世代のユーザーでも購入しやすいモデルという位置付けを狙っているようだ。
全キャリア対応とコストパフォーマンスの高さが魅力
年々、拡大を続けてきたSIMフリースマートフォンの市場は、冒頭でも説明したように、国内市場の約1割を占めるところまで来た。ただ、今年の春商戦を見ると、主要3社やサブブランドの攻勢もあり、昨年までの勢いが失われたのではないかという分析も聞かれる。とは言え、「回線も端末も自由に選びたい」というユーザーのニーズは多く存在し、今後も市場の成長が期待される。
今回、取り上げたモトローラのmoto g6 plusは、こうしたユーザーのニーズに対し、しっかりと応えられるモデルとして仕上げられている。縦横比18:9の縦長ディスプレイやデュアルカメラ、指紋センサーなど、スマートフォンの最新トレンドをしっかりと抑えながら、国内の主要3社のネットワークで利用可能な上、VoLTEについても対応を謳っており、DSDSで主要3社の回線と組み合わせた、MVNO各社を自由に乗り換えるといったニーズに対応することができる。Androidプラットフォームも標準仕様に準拠しており、これまで通りのアップデートが期待できるのもうれしいところだ。
価格的にもmoto g6 plusで4万円を切っており、初めてのユーザーも買い換えのユーザーも手を出しやすいところに収めている。SIMフリースマートフォンではコストパフォーマンスの高さを謳う機種が多いが、やはり、幅広いネットワークで利用できてこそ、『SIMフリー』の本領と言えるだろう。