みんなのケータイ

arrows Fit F-01H

 SIMフリー端末の登場から、MVNO各社による格安SIM、そして格安スマホという流れを経て、お値段そこそこで性能もそこそこのミドルレンジ端末が今注目され始めている。これまでそういったミドルレンジ端末は海外製のものが元気だった印象だけれど、9月30日に発表されたドコモの2015~2016年冬春モデルでは、富士通も「arrows Fit F-01H」でそのジャンルに“本気で”参戦している。

 ARROWS NXシリーズをはじめ、歴代のフラッグシップを乗り継いできた筆者としては、それらより性能が抑えられたarrows Fitは「満足できるんだろうか」と不安な気持ちもあった。でも、しばらく試してみたところでは、いい感じに力の抜けた端末だなあ、これで十分だよな~、というのが率直な感想。

 OSはAndroid 5.1。チップセットはCPUクロックがやや低めの1.2GHzではあるものの、クアッドコアとしていて、メモリも標準的な2GBを搭載。ストレージは16GBで、ガンガン使うにはちょっと不足気味だから、この辺はAndroid 5.0から再び一般アプリでサポートされたSDカード(microSDXC 128GBまで対応)を上手に使いたい。おサイフケータイとNFCに対応し、arrowsシリーズではおなじみの指紋認証機能も搭載しているのもポイントだ。

シンプルな背面。指紋認証機能も搭載
おサイフケータイに対応する
ロゴがARROWSから、ちょっとかわいらしいデザインのarrowsに変わった

 arrows Fitのミドルレンジたるゆえんは、前述のCPUクロックに加え、ディスプレイが720×1280ドットと、フルHD以上が当たり前になってきた今の時代に、まさにミドルな解像度にしているところかもしれない。たしかに、以前のARROWS NX F-04Gのような高解像度で見る映像の美しさは「すげえ」と思うし、arrows Fitでは残念ながらそういう意味での感動はない。

上下側面のラウンド形状もかわいらしい
厚みはF-04Gとほぼ同等。カメラレンズの出っ張りの分だけ薄い
3DグラフィックだらけのFINAL FANTASY IVも快適にプレイできた

 のだけれど、逆に言うと映像や写真を鑑賞する以外では、実は高解像度の恩恵を感じる場面は少なかったりする。むしろ解像度が低くなるおかげでバッテリーもちが良くなったり、その分バッテリー容量を減らせて軽量化につながるのであれば、その方がうれしいと思う人も多いのではないか。3Dグラフィックを多用するゲームもサクサクプレイできるし、「ミドルレンジだから(体感的に)遅い」というようなことも今のところ一切ない。

 カメラは、リア810万画素、フロント240万画素。さすがに2000万画素を超えるフラッグシップ機には及ばないものの、機能面では以前の端末より使い勝手が良くなった。従来機種のカメラ機能は、あえて設定できる項目を減らし、誰でも簡単にきれいに撮れるように、という点にフォーカスしていたところ、arrows Fitでは露出やホワイトバランスを手動調節できるようになったのだ。

 露出とホワイトバランスが調整できるようになっただけで、何か変わるの? と思うかもしれない。が、例えば以下の比較写真をご覧いただくと分かるように、一部に太陽光が強く当たって反射しているような場面では、従来機種だと周囲の暗さに引っ張られて明るさを落とすことが不可能だった。一方、arrows Fitでは、露出をマイナス方向に振ることで、小さく反射した部分に合わせて明るさを調整できる。

両方ともarrows Fitで撮影。意図的に露出を下げた左側は、時計の針や文字盤がきちんと見えるが、従来機種と同じようにオートで撮影した右側は、反射して全く見えない
左がarrows Fit、右がF-04G。写真の最大解像度は異なるが、どちらも遠くまできめ細かく描写する。どうやら視野角はarrows Fitの方が微妙に広いようだ

 タッチした部分にピントを合わせ、同時にその部分の明るさ・暗さに合わせて全体の明度も自動調整してくれる「タッチシャッター」は便利な機能なんだけれど、ピントを合わせる場所と明るさの基準とする場所が同一になってしまうのが問題だった。arrows Fitなら、「手前の暗い部分を基準に全体を明るくしながら、ピントは奥に合わせたい」といったような撮影も可能で、個人的にはここがけっこううれしいところ。

 そして、ミドルレンジなのに米国防総省が用いている性能基準、MILスペックの14項目をクリアし、耐衝撃、耐温・湿度や、防水、防じんなどの性能を高めているのも面白い。ちなみに、同じタイミングで発表されたarrows NX F-02Hも同様にMILスペック準拠だ。今まで国産端末は、防水が大きな特徴として挙げられることが多く、それが端末選びの判断の1つになっていたと思うけれども、今後はMILスペックが国産端末(arrows)の標準的な仕様になっていくのかもしれない。

 arrows Fitは、画面解像度が低いことに加え、テレビ機能を備えないことも弱点ではある。とはいえ、それ以外はフラッグシップ端末と遜色のない機能をもち、さらに、10月15日時点で機種変更が実質1万8792円(ドコモの契約が10年超なら8424円)、MNPが実質2万8728円、新規が実質3万9528円という価格になっている(参考:docomo Online Shop)。

 機種変更の場合が最も安価に入手できる状況で、わりと気軽に「変えてみようかな」と思える値段に設定してきた。今回の冬春モデルの中で、最もコストパフォーマンスが高く、バランスの良い端末かもしれない。