温泉宿で高齢者向けタブレット体験講習会

2011年10月6日 06:00
(すずまり)

 台風15号が日本列島を直撃しているとき、私は法事で山形県米沢市におりました。本来なら20日の晩に温泉で1泊して帰宅するはずが、山形新幹線が運休。福島までいけば……という話もありましたが、方角的には台風に向かっていくわけですから、何がどうなるかわかりません。せっかく温泉旅館にいるのです。チェックアウトして駅で右往左往するより、キャンセルする客も多いだろうと見越して、そのまま1泊延長することにしました。電車の中で立ち往生が一番困りますし。

 観光もできないわけですが、持参したiPhone 4、GALAXY Tabのほかに、父が持ってきた初代iPad(私のお古)があったので、集まっていた暇をもてあます親戚のおじさま、おばさま(孫あり)相手に、即席のタブレット体験講習会を開催しました。今回は、そのときの様子をレポートさせていただきます。

iPad標準の「メモ」で文字入力に挑戦

 持っていたコンパクトカメラで撮影した写真や動画を、父に渡すためにiPadに取り込んだのですが、それをたまたま食事時に見せたら、「あら~きれいに見えるのね~」と一同感心。画面を顔から離さなくても見えるサイズですから。そこで一気に興味に火がついたようで、質問の集中砲火を浴びました。1つの質問に答え終わる前に、別のおじさまから質問が飛んできます。そして、みなが親指と人差し指を開きながら「私もこうやって写真とか拡大してみたい!」というのです。

 iPadで写真を、GALAXY Tabでは電子書籍で文字の拡大縮小を体験してもらいつつ、アダプタを使った写真取り込みを披露。その後自由に質問を受け付けつつ、文字入力をしてもらったり、地図を見てもらったり、電話をかけてみたりしました。

 まず、あこがれの拡大縮小ですが、おそるおそる触るせいか、拡大しないで次の画像にスライドさせてしまうこと数回。慣れないので、指を開きながらも横に動かしてしまうようでした。電子書籍の文字を拡大したおばさまは「まぁ! でもこれじゃ本を読んでる気がしないわね」とストレートな感想。文字が大きくなったら「これで本が読みやすくなるわ!」と感動されると勝手に期待していたのですが、大きく裏切られる恰好に。あるおじさまには、iPadをカバーなしで持たせたら「意外と重たいな」とも言われました。「○○よりは何グラム軽い」などという比較がない、素直な感想です。

 質問では、テレビは見られるのか、テレビに繋げられるのか、録画はできるのかという、テレビ関連が多く、YouTubeはみられるのか、中の写真は印刷できるのか、アプリはどうやっていれるのか、これは電話なのか、どうやって話すのか、キャリアはどこのなのか、家ではどういうところで使えばいいのか、など聞かれました。持っているパソコンとの使い分けがイメージしにくいようでした。文字入力では、ローマ字入力の壁も感じました。手書きにすると、誤認識されたあとの修正に手間取りそう。これは慣れで解決できるかもしれませんが。

 私が一度にあれこれ言い過ぎたのか、最後には頭がボーッとしてきたらしいですが、「いい刺激になった」と感謝していただきました。何にでも興味を持って試せる若者とは違い、自分のライフスタイルに直結する使い方をベースに説明しないと難しい面もありそうですが、イメージしやすければ慣れるのも早いと思うのです。

 とにかく、買う買わない以前に、まずどういうものなのか、操作に慣れる機会は必要だと痛感した次第です。持っている人が近くにいれば多少触れる機会はあるでしょうが、プライベート情報が豊富なら、自由に触らせてはもらえないでしょう。

 ただ、高齢者にとって、ハードキーの存在感は結構大事かもしれません。GALAXY Tabを手渡したとき、どうしてもみな無意識にセンサーキーに触れてしまうので、画面が戻ったり、アプリが終了してしまうのには困りました。

iPadに取り込んだばかりの孫動画に触発された父「実はオレはiPod touchを持っているんだ」とまさかのカミングアウト! カメラ機能に期待して購入したらしいでも実家には無線LAN環境がないため、インターネットに接続してこそな機能の数々は使っていなかった模様。無線LANにしないのは「ただ乗り」と「不正アクセス」を恐れてのことらしい

 ちなみに、父が持ってきた私の古いiPadは、32GBのWi-Fiモデル。送ってから日が浅かったこともあり、中はスカスカだろうから写真と孫動画はすぐコピーしちゃえ、と思っていたら甘かった。新しいアプリはおろか、音楽すら入っていないのに、なぜか残りが2GB弱! 父が取り込んだ大量のビデオで占められておりました。ビデオ編集大好き野郎である父の偏った使い方があらわになった瞬間でした。おかげで大事な孫動画を取り込み切れず……。

 実は父は地図大好き野郎でもあります。昔は帰省のたびに「新しい地図のCD買ってこい」と言われたものでした。タブレットやスマートフォンならアップデート不要。インターネットにつなげば常に最新の「マップ」を見られますし、ナビゲーションもしてくれます。これを知った父の目の色が変わりました。ただ、生まれ故郷の地図を拡大して見て「やっぱり過疎地扱いだ! これなんだよ! こういうところは大まかな道くらいしか載ってないんだ!」と憤慨しておりました(笑)。是非田舎も広く隅々まで……何卒よろしくお願いいたします。