みんなのケータイ

サンフランシスコで活躍したGoogle Payのクリッパーカード

 「ケータイ Watch」にも記事を執筆させていただいたように、2月1日(現地時間)に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたGalaxy Unpackedを取材するため、22年11月ぶりに渡米した。渡米と言っても前回はハワイ、その前はマウンテンビュー&クパチーノだったため、サンフランシスコ市内に入るのは約3年ぶり。新型コロナウイルスが世界的なパンデミックになる直前の20年2月以来のことだ。

サンフランシスコの取材(の前後に実施した視察という名の観光)では、Galaxy Z Fold4に入れたクリッパーカードが活躍した

 サンフランシスコを含むベイエリアは、交通系ICカードとして「クリッパーカード(Clipper Card)」を採用している。空港から市内へアクセスできるBARTや、市内のバス、路面電車等々に、これ1枚で乗ることが可能だ。訪れる機会もそこそこ多かった筆者は、出張のためにクリッパーカードを1枚保有していたが、すでにそのカードは無効になっている。iPhoneでのサービスイン直後に、物理カードを取り込み、Apple Watchのウォレットに移してしまっていたからだ。

サンフランシスコ国際空港のBART乗り場。ここから市内中心部への移動は、Apple Payに入れていたクリッパーカードを使用した

 Apple Watchのウォレットには、なぜか世界各国の交通系ICをコレクションしているが、クリッパーカードもその一環。空港からサンフランシスコ市内へは、Apple Watchをかざして移動した。このようなグローバル対応はiPhoneやApple Watchの優位性……と思いこんでいたが、実はAndroidもクリッパーカードに対応していたようだ。気づいたのは、Galaxy Z Fold4でGoogleマップを開いたとき。経路検索をしたところ、「スマートフォンでお支払い」というメニューが表示された。

Googleマップでルートを検索すると、「スマートフォンでお支払い」というメニューが表示される

 最初は、「やれやれ、海外版のメニューがそのまま表示されちゃうのか」と思ったが、どうなるのか気になったため、軽い気持ちでタップしたところ、クリッパーカードを作成できてしまった。作ったクリッパーカードは、「Google Pay」アプリの「パス」内に表示されている。ちなみに、このパスを開き、「+パス」をタップしたあと、「交通機関」を選ぶと、世界各国の交通系ICが表示される。どうやら、これで交通系ICをGoogle Pay内に取り込めるようだ。

メニューの指示に従いタップしていったところ、すぐにクリッパーカードが作成された。作成やチャージにはクレジットカードが必要になる
取り込んだカードは、「パス」タブ内に表示される。dポイントカードやTポイントカードと並んでいるのが、なんだかシュール

 米国など、多くの国や地域ではGoogle PayがiPhoneと同じ「Google Wallet」に改称されており、機能的にも差分がある。日本はFeliCaを統合している関係で「おま国」状態になっていたため、海外の交通系ICにも非対応だと思い込んでいたようだ。Apple Watch側のウォレットに入れていたクリッパーカードがちょうどマイナス残高(一部の交通機関では、残高不足分がそのままマイナス残高になり乗車ができる)になったこともあり、以降はGalaxy Z Fold4側のクリッパーカードを使うようにした。

 同じ交通系ICカードという位置づけだが、Suicaとは異なり、端末の画面ロックは解除しなければならない。使い勝手は、クレジットカードのタッチ決済(NFC)に近いと言えるだろう。チャージはGoogle Payアプリ上から1ドル単位ででき、日本で発行されたクレジットカードも利用ができた。

 これはApple Payにも同じことが言えるが、交通系ICカードをスマホに取り込んでおけば、いつでもどこでもチャージができて便利だ。駅などにあるチャージ用端末を探す必要がないのは安心。バスに乗る場合、チャージ機が近くにないことも多いからだ。残高がすぐ確認でき、その場でチャージできるのはスマホに交通系ICを入れる大きなメリットと言えるだろう。

 海外の交通機関では、クレジットカードのタッチ決済対応が徐々に進んでいるが、サンフランシスコのように、独自方式を残しているところもまだまだある。Google Payのパスを新規追加しようとすると、その多さがよく分かる。ただし、すべてが独自ICカードというわけではなく、Webに飛ばしたり、クレジットカードのタッチを促す地域も目立つ。

交通系ICなどの追加は、「パス」タブ内で「+パス」をタップし、「交通機関」を選択するだけ。米国の数が非常に多いが、英国やシンガポールなどの記載もある

 たとえば、イギリスやニューヨークをタップすると、「クレジットカードでよろしく」的なメニューが表示されるだけ。日本のGoogle Payは、一部のクレジットカードやデビットカードがVISAのタッチ決済やマスターカードコンタクトレスに対応しているため、それで払えばいい。この場合でも、各地域で何を使って支払えばいいのかがパスを開けば分かるため、親切なユーザーインターフェイスと言えるだろう。

 なお、Suicaは完全に別建てでFeliCaが必須なため、訪日外国人が一般的に持っているAndroid端末では利用ができない。iPhoneやApple Watchは、海外モデルも含めて全モデルをFeliCa/NFC両対応チップにすることでそれを実現した格好だが、メーカーごとに仕様が異なるAndroidにとってはハードルが高い。ただ、自分たちが海外に行ったときは使えるのに逆はダメというのは、“おもてなし”を売りにしている国としてどうかと思うところ。2024年春に始まるというJR東日本のQRコード改札には、ぜひGoogle Pay(Google Wallet)対応にも期待したい。