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「低料金、MVNO、固定代替回線」 5G開始から1年たった香港の現状

 香港の5Gサービスは2020年4月に開始され、それから1年が過ぎました。この1年を振り返るとiPhone 12を始めとしてハイエンドスマートフォンの新製品はすべて5Gモデルになるなど、「5G」の文字を街中で見かけることが当たり前になりました。通信キャリアの店舗でも5Gスマートフォンを安く売るプロモーションが増えています。

iPhone 12の割引で5Gサービス加入を促そうとしている

 5Gの利用エリアは繁華街を中心にかなり広がっています。一部のキャリアが4G 2100MHzを5Gと共用するDSS(Dynamic spectrum sharing)を始めて5Gエリアを見かけ上広くしていることもありますが、5Gスマートフォンのアンテナピクト横に常に「5G」の表記が出ているのは気分的にも高速サービスを利用できているという満足感を与えてくれます。

香港を走る2階建てバス。キャリアの5G広告もよく見かける

 通信料金は399香港ドル(約5600円)で毎月100GB、通話かけ放題が各社平均的な最低プランでしたが、新型コロナウィルスの影響で家にこもるケースも多く、自宅のブロードバンドを使う人には100GBでも多すぎるということからか、50GBなど低利用・低料金プランも出てきました。某キャリアは248香港ドル(約3500円)で20GBと、5G加入の敷居を下げています。

MNOの1つ、3HKの5Gプラン。248香港ドルプランを新設した

 一方、4月からMVNO各社も5Gサービスを開始します。料金は大手キャリアよりわずかに安い程度ですが、付加サービスや無料ギフトなどで差別化することで既存顧客の4Gからのアップデートを狙いたいところ。

 しかし、香港でMVNOを利用しているユーザーは料金の安さに魅力を感じていることから、高料金となる5G契約へ移行するかどうかは未知数です。MVNOの4Gサービス料金は毎月100香港ドル(約1400円)以下で低速ながらも使い放題となることから、MVNOはどうやって5G利用者を増やすか知恵を絞る必要がありそうです。

香港のMVNOの1社、HKBN(香港ブロードバンド)も5Gを開始

 また香港では、数多くのプリペイドSIMカードが売られていますが、サービス内容も1年で大きく変わりました。従来のプリペイドSIMカードは利用できるデータ量が4GBや8GB程度でしたが、2020年秋には20GBや50GBのものが当たり前となり、今では70GBや80GBのものが出てきています。筆者が最近見かけたものは80GBですが、ボーナス20GBで100GB利用可能、有効期限は365日、価格は188香港ドル(約2600円)でした。定価はこの倍以上するのですが、香港はなぜか町中のSIMカードショップでは格安販売がされています。

 この大容量プリペイドSIMで5Gが使えるようになれば、香港の5Gユーザーもさらに増えるでしょうね。

プリペイドSIMはついに100GBのものが出てきた

 さて、5Gならではのサービスは各社がモバイルゲームなどをアピールしているものの、まだまだキラーアプリにはなっていません。それよりも各社が力を入れているのが固定回線代替となるブロードバンドサービス。5GのCPE(固定5Gルーター)とセットで、データ定額を展開しています。香港の有線ブロードバンド環境は他国に比べても高速ですが、それは新しい住居のみ。昔からの住居は今でも数Mbps、という例も少なくありません。筆者の住居も古いことと、特殊な住環境のため光回線は引けません。

 しかし5Gを使った固定ブロードバンドサービスならば、CPEを設置するだけで数百Mbpsのデータ回線を利用できます。筆者の住居も下り200Mbps、上り40Mpbsを利用できる5G環境にあり、契約しているキャリアの固定ブロードバンドサービスに加入しようか考えているところ。光回線と違い工事が要りませんから、導入も簡単です。

5G CPEを使った固定ブロードバンドサービスも始まった。CPEもOPPOの製品が登場している

 ここ数年の筆者は1年中海外出張をしており、香港にいるのは1か月に数日程度でした。しかし新型コロナウィルスの影響で現在は香港から出られず、日々を当地で過ごしています。しかし5Gネットワークが1年で大きく広がり、いつでもどこでも高速なネットワークアクセスが可能になり、どこでも仕事ができる環境になりました。ミリ波の開始やSAサービスの導入など、香港の5Gサービスはこれからさらに快適になってくれるでしょう。