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「Nintendo Switch」はUSB Type-Cスマホの“モバイルバッテリー”になるのか

【HTC 10 HTV32】

 3月頭に登場した新型ゲーム機「Nintendo Switch」。テレビにつなぐ家庭用ゲーム機ながら、外に持ち出して6インチ画面でゲームができるというギミックに惹かれて、飛びついてみた。

ガジェットとしても興味深い「Nintendo Switch」に「HTC 10」を繋ぐとどうなるのか

 ニンテンドー64の頃から「ゼルダの伝説」のファンだった筆者。仕事帰りの電車でハイラルの平原を駆け回り、リンゴや虫を捕り、矢や爆弾を放って敵を倒せる……というワクワクだけで、「買ってよかった」と感じている。

 ゲームの内容についてはGAME Watchのレビューを参照いただくとして、ガジェットとしての「Nintendo Switch」もなかなか興味深い。

 外部接続にUSB Type-C端子を採用しており、本体の充電と映像出力を兼ねている。自宅に家に帰ったらドックに挿すだけで、外で遊んでいたゲームがそのままテレビに表示されるというものだ。

 充電も同時に行うので、バッテリー残量を気にすることも少ない。さらにモバイルバッテリーからも給電できるという、いわば“タブレット端末的”な便利さを備えている。

SwitchのType-C端子

 ところで、「Nintendo SwitchからMacBook“に”給電できた」と話題になっている。AV Watchでは西田宗千佳氏による検証が掲載されているが、筆者も手持ちの「HTC 10」で試してみた。

 USB Type-C規格は、給電側(ホスト側、パソコンやACアダプターなど)と充電側(ゲスト側、パソコンにとってのスマートフォン、Switchにとっての周辺機器など)で、同じ接続端子を使用する規格だ。

 そのため、給電する方向を決定する必要があり、Type-Cデバイス同士を接続した段階でケーブル間で通信を行い、給電方向が決定される。そこで、SwitchをType-C対応の「HTC 10」と接続すると、どちらの方向に充電するのか、を検証してみた。

 なお、以下の実験を行って端末が故障した場合、メーカー保証の対象外となる可能性がある。もし、同様の検証をされる場合は、自己責任で行ってほしい。

いざ、検証

 というわけで、両端がUSB Type-Cで2つのデバイスを接続。すると、SwitchからHTC 10への給電を開始した。Switchがスマートフォンを“周辺機器”と認識して、給電をしているようだ。

 ところが、何回か差し直しをしているうちに、HTC 10からSwitchへ給電するケースがあった。頻度にして10回のうち1回程度と少ないが、スマートフォン側の“周辺機器”としてSwitchへ給電しているらしい。

「Switch→HTC 10」の給電(左)と「HTC 10→Switch」の給電(右)

 HTC 10では、外部デバイスを接続した時のメニューが表示されている。「HTC 10→Switch」の充電では、このメニューの選択肢のうち「電源」が選択されていた。出力は5V/900mA程度。

 一方、「充電」や「ファイル転送」「MIDI」などを選ぶと、「Switch→HTC 10」への給電になるようだ。このときの出力は5V/500mA程度だった。

 この出力の差については、以下のような推測が成り立つ。

 まず、SwitchはUSB.orgが策定した電源規格「USB-PD(Power Delivery)」に準拠している。一方のHTC 10は、クアルコムの急速充電規格「Quick Charge 3.0」に対応している。そして、この2つの充電規格には互換性がない。

 よって、SwitchとHTC 10を接続すると、急速充電は行われず「5V/900mA」(USB 3.1の標準出力)か「5V/500mA」(USB 2.0標準出力)で給電される。

 つまり、Switchでは接続されるであろうデバイスを決め打ちして「USB 2.0の周辺機器」を想定して給電しているのに対し、スマートフォンのHTC 10では、Switchを「USB 3.1の周辺機器」として認識して出力しているのではないだろうか。

USB-PD準拠のスマートフォンと接続したら、給電方向を切り替えられる?

 また、もう1つ気づいたことがあった。HTC 10に表示される「USB接続」メニューでは、「電源」とそれ以外の選択肢の間で、切り替えができないということ。

 これは、給電方向を切り替える「ロール・スワップ」に対応していないからだと推測される。「ロール・スワップ」は、両方のデバイスがUSB-PDに対応している場合に利用できる機能だ。

 結論は、「Switchからスマートフォンへの給電も、スマートフォンからSwitchへの給電もできるが、出力が小さく給電方向が定まらないので、実用的ではない」というところ。もしかしたら、USB-PD対応スマートフォンでは、「スマートフォンからSwitchへの給電」がもう少し便利になるかもしれない。

 ただし、メーカーの想定外のトラブルを起こす可能性は変わらないので「自己責任の検証結果」という点は強調しておきたい。

 USB-PDやQuick Chargeも含めて、各社がバラバラに提供してきたスマートフォン向け急速充電規格だが、Quick Chargeの次世代規格「Quick Charge 4」はUSB-PDに準拠したものになると発表されている。この流れが拡大して、すべてのスマートフォンがUSB-PDをサポートすれば、より柔軟なバッテリー運用ができるかもしてないと感じた検証だった。