DATAで見るケータイ業界
苦境のコンシューマ向け携帯販売代理店事業、主要社の21年度は利益2桁減に
2022年7月26日 00:00
通信キャリア各社は、オンライン受付強化による直販シフトや、通信料金値下げを契機とした手数料条件改定など、店舗網の見直しを進めており、キャリアショップの運営を実際に手掛けている携帯販売代理店の業績にも大きな影響が出ている。
21年度の売上は前年度比ではプラスだが、コロナ禍前の水準には戻りきらず
まず前提として、代理店各社は法人向け事業や決済事業など事業多角化を推進しており、会社全体としての業績は比較的安定している。
全社の数字からは携帯販売代理事業単独の状況は見えないため、ここからは「コンシューマ向け携帯販売事業」の動向に絞って状況を整理してみたい。
具体的には、主にキャリアショップ運営事業や個人向けモバイル事業などの業績を開示している3社の数字を追っていく。
まず2021年度の売上高は、ティーガイア(モバイル事業)が4071.4億円(前年度比14.5%増)、ノジマ(キャリアショップ運営事業)が1879.5億円(同2.9%増)、コネクシオ(コンシューマ事業)が1768.9億円(同4.1%増)と、揃って前年度比プラスを確保した。
これだけ見ると好調そうだが、前年度(2020年度)は上半期を中心にコロナ禍による店舗臨時休業もあって売上が大きく落ち込んだ。前年度比プラスという数字は、前年度の売上大幅減の反動という可能性もある。
そこで、コロナ禍前の2019年度と2021年度の売上を比較すると、ノジマが9.4%減、コネクシオが7.8%減と景色は全く異なる。ティーガイアは19年度比で4.1%増だったが、これは2020年11月に富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を買収したことによる上乗せ分の影響が大きい。特殊要因を除けば、やはり非常に厳しい状況にあるようだ。
営業利益は前年度比で各社軒並み2桁減
同じように、主にキャリアショップ運営事業や個人向けモバイル事業などが含まれるセグメントの営業利益を見てみると、ティーガイア(モバイル事業)が82.5億円(前年度比24.9%減)、ノジマ(キャリアショップ運営事業)が58.9億円(同30.6%減)、コネクシオ(コンシューマ事業)が95.7億円(同23.2%減)と、総崩れの状況になっている。
その背景として、各社のIR資料からは「一部通信事業者の手数料条件改定や、メインブランド以外の販売割合増加で、手数料収入が減少した」(ティーガイア)、「出張販売等の販売促進費が増加したこともあり利益面は前年を下回った」(ノジマ)との指摘が聞かれた。
急激な収益環境の悪化から、コネクシオは昨年4月に策定した中期経営計画(2021~2023年度)を今年4月に取り下げている。同計画は、キャリアの料金競争激化による代理店手数料の減少を一定程度織り込んでいたが、足下で同社の想定をはるかに超える早さと規模で条件が悪化しているため、白紙に戻さざるを得なくなったようだ。
売上と利益の数字を整理したことで、通信キャリア各社の手数料改定やオンラインシフトの影響が極めて甚大だということが改めて浮き彫りとなった。今年度以降は店舗削減も本格化し、状況は一層厳しさを増しそうだ。今後も定期的に動向を整理していきたい。