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各キャリアが採用する5Gベンダーは基本4Gを踏襲も、中国系は採用見送り

「5G」技術・設備投資・関連産業サービス開発動向2020(1)

 MCAは、5G技術が商用化され本格的に普及していく中で、国際動向や主要プレイヤー、テレコム業界と他の主要業界との関係などのさまざまな観点から5G市場動向を分析した調査資料「第5世代移動通信 技術・設備投資動向・関連産業サービス開発動向 2020年版」を3月に発刊した。今回から4回にわたり、同資料から5Gの最新動向を取り上げたい。1回目は、5Gインフラベンダーの状況を整理する。

世代交代と並行して国内でも進む、海外ベンダーの台頭

 国内通信事業者3社のベンダー採用方針は、3G CDMAから4G LTEへの世代交代といった技術の推移に沿って変化してきた。

 特に4Gでは、移動体通信技術の規格統一化により、海外の巨大ベンダー台頭が顕著となった。国内でも、コスト競争力や標準化でリードする海外ベンダーの前に国内ベンダーの牙城が侵食された。

各キャリアが採用する5Gベンダーは基本4Gを踏襲も、中国系は採用見送り

 NTTドコモの5G基地局ベンダーは4Gから変更はなく、NECと富士通だ。NECはサムスンと、富士通はエリクソンと協力し、機器提供を行うことになった。国内ベンダー協力の下、ドコモスペック開発というスタンスに大きな変化は無いが、次第に海外ベンダーに対する抵抗感も希薄化している。

 他のキャリアも基本的には4Gから変更はないが、中国勢がチャイナリスクにより勢いを失い、やはり欧州ベンダー勢が強く影響を持っている。

 KDDIは、従来行っていたKDDIスペックの開発を4G時代に中止し、ベンダー仕様を受け入れる方針へ転換している。現在は、KDDIに装置を提供する全てのベンダーが海外ベンダーであり、標準化技術をいち早く取り入れたい意向と見られる。

 ソフトバンクは、ボーダフォン時代から海外ベンダーを採用していた経緯からベンダー仕様に抵抗感がなく、先端技術を低価格でいち早く手に入れる方針がうかがえる。4Gでは中国ベンダーを採用していたが、米中貿易戦争を発端としたチャイナリスクを背景に欧州ベンダーに回帰している。

 新たにMNO事業へ参入した楽天は、ソフト・仮想化をベースとした新技術をいち早く投入し、既存MNOとの差別化を狙っている。世界初のオール仮想化のモバイルネットワークを構築するため、アルティオスター(Altiostar)を中心とした新技術を持つベンダーとの連携を強める。正式商用化で契約数の増加が見込まれる中で、品質が保たれるかが焦点だろう。

MCA

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。