ケータイ用語の基礎知識

第741回:UFSとは

 「UFS」とは、汎用的なフラッシュストレージを意味する英語「Universal Flash Storage」の略で、MLC/TLC NAND型フラッシュメモリーにコントローラーを搭載したものです。読みは、そのまま「ユーエフエス」と読みます。

 もともと、リムーバブルストレージと組込型ストレージの両方に使えるフラッシュメモリーのバスの規格として策定されましたが、2016年現在、製品化されたものは組込用途向けのみです。つまり、用途としては、現在スマートフォンなどで使われている内蔵フラッシュストレージであるeMMCと同様の使われ方をするものだと思えばいいでしょう。

 ノキアを中心として設立された非営利団体「Universal Flash Storage Association」(UFSA)で規格が策定されましたが、半導体の規格の標準化を行っている業界団体「JEDEC」で標準化が行われ、2011年にUFS1.0がJEDEC標準規格(JEDSD) 220として、2013年にUFS2.0と周辺規格であるUFS UME(Unified Memory Extension)1.0がJESD220B、223-1として公開されています。

 このUFSに準拠したフラッシュメモリーはすでに市販されているスマートフォンでも採用されています。たとえば、NTTドコモやソフトバンクなどが発売しているGalaxy S6 edgeは、製造元の韓国・SamsungがUFS2.0を採用したフラッシュメモリーを内蔵していることを公開しています(※関連記事)。

コンパクトで高性能

 UFSの特徴を簡単に言うと、スマートフォンなどに使われている「eMMC」程度の大きさや消費電力でありながら、パソコンなどに使われている「SSD」並の高速な読み書き性能を持つことです。

 そんなUFSへの注目が集まってきている背景には、スマートフォンやタブレットといった機器で、高精細な動画やゲームといったコンテンツを楽しむ機会が増えてきたことがあるでしょう。そのためには、高性能なプロセッサーなどが求められ、内蔵するストレージメモリーにもハイスペックが必要と考えられるようになってきたのです。

 たとえば、USBの最近の規格「USB3.0」では、最高速のSuperSpeedモードでは5Gビット/秒の伝送速度が定義されていますが、eMMC Version 4.3規格では最大52Mバイト/秒(=0.4Gビット/秒)となり、性能的に追いつきません。より高速な規格が求められるようになってきたわけです。

 UFSでは、eMMCと比較すると「高速なシリアルデータインターフェイスの規格」「マルチプルコマンドキュー機能の採用」「省電力化が可能なモードの設定」といった工夫をすることでeMMCより高速なNANDフラッシュメモリーの規格となっています。

 高速なシリアルデータについては、UFS 2.0では、最高速で11.6Gビット/秒(物理層にMIPI M-PHY、2レーン使用の場合)まで定義され、現在~将来までの高性能な移動体端末に十分対応可能なフラッシュメモリーの規格となりました。SSDと比較してもシリアルATAの速度が6Gビット/秒程度ですから、将来に渡っても十分競争可能な速度です。

 UFSでは、電気的な特性などである「物理層」で、MIPI Allianceが策定する小型端末内部でのデータのやりとりを定めたインターフェイス規格「MIPI」(Mobile Industry Processor Interface。読みは「ミッピー」)を採用しました。MIPIのM-PHY仕様は、400mVの差動振幅、つまり電圧の差で信号を伝えるタイプのシリアルデータバスです。クロック信号をデータ信号に重ねて伝送することで、高速にデータを伝送できるようになりました。1レーンの信号線で、最大データ伝送速度制御信号を含めて、最大5.8Gビット/秒の速度で伝送でき、2レーンを同時に使う使い方も規格化されています。これにより最大11.6Gビット/秒で通信できるのです。

 2番目「マルチプルコマンドキューの採用」ですが、これは簡単にいうと“フラッシュメモリーのどの部分を読み書きしたいか”という命令がフラッシュメモリーに届いた際、その命令を蓄えておいたり、複数のNANDフラッシュメモリーのチップへ渡る際に、あらかじめ「次は読みに行きますよ」と伝えておくという技術が使用できるようになった、ということになります。これまでのeMMCでは、たとえば、Webブラウザがインターネットからのデータをダウンロードする一方、音楽を再生するなど、同時に複数のアプリケーションが動いているの場合、どちらかを優先し、片方を止めておく必要がありました。これは実質的なデータ伝送速度の低下に繋がっていたのです。このような「ランダムアクセス」での読み込み、書き込み、および並列実行での実質的な速度向上にマルチプルコマンドキューは役立ちます。

 そして省電力化に関しては、たとえば、待機時の一部回路への電源カットというようなモードが追加されています。これによって、データ伝送時にはこれまでより大きな電力を必要としても、全体としては省電力化を可能としているわけです。