第519回:排除措置命令 とは
「排除措置命令」とは、法の執行方法の1つです。、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)に触れるような行為を行い、かつ競争を実質的に制限する、あるいは公正な競争を阻害するおそれがある場合に行われます。
独占禁止法とは、不当に取引を制限したり、不公正な取引方法を行わないようにし、ある一社の支配力が集中しすぎることを防いだり、カルテルなどを禁止したりすべく、制定された法律です。
たとえば、役所が主導する工事が行われるような場合、入札が行われる際には、参加企業同士があらかじめ入札価格を決めてしまうようなことがあれば、独占禁止法に違反するということで、公正取引委員会(公取委)から、この談合に加わった企業に対し、法が執行されるわけです。
独占禁止法の執行方法には、
- 排除措置命令
- 課徴金納付命令
- 刑事罰
- 差止請求訴訟
があります。
今回紹介する「排除措置命令」とは、独占禁止法の規定に違反する行為をとった事業者に対して、公取委が違反行為をなくすために必要な措置を命じることです。
この命令では、違反行為の取りやめ、そして今後同様の行為を行わないよう求め、社員に定期的な研修を行ったり、行動指針を定めたりするよう、指示されます。
一方、「課徴金納付命令」は、課徴金を国庫に納付することを命じるものです。その算定基準は、違反行為の内容によって定められます。また、不当な取引制限だった場合は、大手企業と中小企業で異なる算定率となりますし、早期に違反行為を止めていれば算定率が20%軽減されたりします。逆に違反行為を繰り返した場合や違反行為において主導的な役割を果たした場合にはそれぞれ基準の算定率を50%加算などの基準も存在しています。ちなみに、以前は、「不公正な取引方法」の違反に関しては刑事罰や課徴金の対象とはなっていませんでしたが、2009年6月に改正された改正独占禁止法によって対象とされることとなりました。
このほか、「刑事罰」は、公取委の告発によって、違反した者が5年以下の懲役、または500万円以下の罰金に処せられることがあるというものです。また、先に「排除措置命令」が出たにも関わらず、これに違反した場合も2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることがあるという規定も存在します。
「差止請求訴訟」は、独占禁止法第24条により、原告が公取委に告発した上で、侵害の停止、またはあらかじめ防ぐために裁判所へ請求する、というものです。これは、公正取引委員会が裁定するのではなく、裁判所によって棄却や判決、あるいは和解斡旋を行います。
■携帯業界での事例
携帯電話関連でも、公正取引委員会による処置が下されたことがいくつかあります。たとえば2005年には、レコード会社に対して着うた配信に関して独占禁止法の疑いがあるとして排除勧告が行われました。
最近では、ディー・エヌ・エー(DeNA)に対して、排除措置命令が下されました。本誌でもニュースとしてお伝えしましたが、2011年6月9日、公取委は、携帯電話向けのポータルサイト「モバゲータウン(現:Mobage)」を運営するDeNAに対して独占禁止法で禁止されている不公正な取引方法の1つに該当する行為を行ったとして、排除措置命令を行いました。
携帯電話向けポータルサイトでは、ユーザーに対してソーシャルゲームが提供されています。そのゲームの製作は、ポータルサイト運営会社だけではなく、ゲーム提供事業者が行っていることがよくあります。
「モバゲータウン」と同様の携帯電話向けポータルサイトには、グリー提供の「GREE」などもありますが、ゲーム提供事業者の中には、モバゲータウンに加え、GREEにもゲームを提供したり、今後提供しようとしているところがありました。これに対し、DeNAは、GREEへのゲーム提供が行われれば、その企業が提供するゲームに対し、モバゲータウンの上のリンクを表示しないようにしました。これにより、DeNAは、結果として商売敵であるGREEを妨害していた、というわけです。公取委は、この行為を「競争者に対する取引妨害」であるとして、排除措置命令を出したわけです。
具体的には、
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というような命令が出されています。
2011/6/14 12:39