第443回:SDXC とは
「SDXC」は、新しいSDメモリカードの規格です。SDカードの規格を策定しているSDアソシエーションによって、2009年4月に仕様が発表されました。メモリカード製品は2010年春から発売される予定になっています。
特徴としては、より高速化、大容量化が図られたことが挙げられます。静止画、動画、そして今後はHD動画に利用されることを考えると、これらの機能は新世代のメモリカードには必須といえます。SDHCでは25MB/秒までだったデータ転送速度もSDXCでは50MB/秒、104MB/秒、300MB/秒とより高速なデータ転送モードが追加され、また、SDHCメモリカードでは最大32GBだったメモリ容量は、SDXCでは最大2TBまで拡張可能となりました。ちなみに、SDXCのXCは「拡大容量」を意味する英語「eXtended Capacity」の略です。
SDXCの形状は32×24×2.1mmで、SDカードと同じ寸法です。また、SDカードのバリエーションとして、携帯電話などで使われる小型の「microSD」があったように、SDXCも携帯機用として「microSDXC」の発売が予定されています。microSDXCも15×11×1mmと、microSDと同寸法・同形状になっており、書込防止スイッチがないなどの特徴も同じです。ただし、SDHCまであったminiSD型は、SDXCでは採用されていません。
■物理的特性などはSDHC拡張とともに「SD仕様 Ver3.0」に
SDカードの最新の仕様は「SD Card Specification Ver3.0」として定義されていて、ここにはSDHCの拡張仕様や、SDXCの仕様も含まれています。
SDHCからデータ転送速度の目安として「SDスピードクラス」が使われていますが、前規格のSpecification Ver2.0では、2MB/秒以上の速度を保証するClass2、4MB/秒以上のClass4、6MB/秒以上のClass6が定義されていました。
SD Card Specification Ver3.0では新たに10MB/秒以上のClass10が新たに定義されています。SDXCでは、SDHCと同じく、Class 2、Class4、Class6、Class10の製品が販売されることになります。
SD SpecificationとSDHC、SDXCの関係。SD specification 3.00~3.xxはSDHCの拡張と、SDXCを含んでいる。 |
このような条件があるために、SDXCでは物理的特性の多くはSDHCと同じになっています。たとえばデータバス幅は4bitのままで、これはSDHCと同じです。
SD Card Specification Ver3.0では、高速な転送に対応するために、高クロック化によってバススピードを上げることを選択しました。高クロック化という取り組みは、同じく4bitだったMMC(マルチメディアカード)が高速版のHS-MMCで8bitに変更したことなどと比べると、手法が異なります。一般的には、バスクロックを急激にあげると消費電力なども増加してしまうケースが多く、モバイル機器に利用するには不利になりやすいと考えられています。ただし、4bitのままという拡張方法をとったことで、もともと古い規格に準拠しているSDHCの拡張も、新規格に含められたというメリットもあります。
新規格のSD Card Specification Ver3.0では、UHS-I(UHS-104)という、クロックスピードを約4倍まで上げた高速バスインターフェイスを定義しています。これによって、対応リーダーライターとの間では、理論上、最高104MB/秒というスピードでデータをやりとりできます。
UHS-Iに対応したSDHCは、従来のSDインターフェイスにも対応しており、UHS-I以前の古いSDHCカードリーダライターで読み書きが可能です。また、SDXCもSDインターフェイスに対応しており、物理的には読み書きが可能です。
今後は、さらに高速なUHS-IIの仕様も定義される予定です。UHS-IIでは、低電圧で電気を送り、二線間での電圧の違いをデータ伝送に使うLVDS(Low voltage differential signaling)という技術などを使い、最大300MB/秒を到達するとしています。
ちなみにバス名の「UHS」とは超高速を意味する英語「Ultra High Speed」の略です。
■SDHCとSDXCはフォーマットが異なる
ただし、SDHCとSDXCでは、容量以外にも異なる部分があります。そのうちのもっとも大きなものは「フォーマット」でしょう。
SDHCではフォーマットに「FAT32」を使用しています。「FAT32」は、Windows XPやWindows 95などでも利用されているディスク管理形式で、32bitのファイル割り当てテーブルを持ち、1ファイルあたり最大4GBまで作ることが可能です。4GBというと十分なように聞こえますが、将来的にHD動画などを頻繁に使うようになると、足りなくなる可能性も出てきます。
そのため、SDXCではフォーマットに「exFAT」を採用しました。「exFAT」はWindows Embedded CE 6.0以降のOS、パソコンではWindows Vista SP1やWindows 7など、新世代のOSで利用できるようになったフォーマットです。理論上は、160億GBまでのサイズのファイルを作ることも可能となっています。
「exFAT」は“FAT”とは付いていますが下位互換性のないフォーマットです。つまり、これまでのSDHCで採用されてきた「FAT32」、あるいはSDメモリカードで利用されている「FAT12」「FAT16」しか読み書きできないOSでは、「exFAT」でフォーマットされたメディアは、認識できないのです。
たとえば、microSDXCをサポートする携帯電話が登場した場合、「FAT32」のmicroSDHCカード、「exFAT」のSDXCを読み書きできますが、microSDHCしかサポートしていない携帯電話では、「microSDXC」を装着してもファイルを読み書きできません。もしmicroSDXCカードを「FAT32」で再フォーマットすると、最大32GBまでのメモリカードとしてしか利用できない、といったことが起こり得るでしょう。
2009/11/11 12:41