ケータイ用語の基礎知識

【第1017回】もし偽基地局に遭遇したら 知識としての憶えておきたい対処方法
2025年5月2日 00:00
繁華街でスマホを狙う「偽基地局」詐欺
最近、報道されている”偽基地局”。総務省や携帯電話各社から、実在すると明言はされてはいませんが、SNS上での有志による報告によると、東京・大阪などの繁華街などでは未だに活動があるようです。
簡単にいうと、偽基地局は、その場にいる全てのスマートフォンの通話やデータ通信を妨害し正当な基地局とのやりとりを阻害します。そして、偽基地局(つまり自分)との通信を優先して行わせ、フィッシングメッセージを送ります。
これまでの報告から推察すると、2025年4月現在。日本で活動している偽基地局の運営者の場合は、中国人のスマホ利用者から銀聯クレジットカード・デビットカードの情報を引出し、お金を詐取する目的で行っているようです。
偽基地局の運営者の目的は、中国人スマホ利用者ですが、通信不能の影響はその場にいる全てのスマホで及びます。将来的には、日本人のスマホ利用者をターゲットにした同様の犯罪が出てくる可能性もあります。
そのときのことも考えて、一体、何がこの一連の騒動で何か起きているのか把握・対策を取っておきましょう。
偽基地局とスマホとの通信はこのように行われる
偽基地局(IMSIキャッチャーとも呼ばれます)は、ざっくりに言うと、車載の通信妨害発生装置と簡易2G基地局のセットです。
まずは、4G/LTE(5G)の周波数上で通信を妨害します。スマホ側は、通信の状態が悪い環境下となるものの、通信できる状態を維持しようとします。
この際、偽基地局側が「電波の状態が悪いので2G/GSM・指定のバンドで通信してください」という符丁を送ります。スマホはその指示に従い、2G/GSMまで通信規格を下げます。2G/GSMでは、偽基地局の通信機が待っていて、通信を始めます。
これで、スマホは偽基地局の通信を始め、フィッシングSMSの受信などが行われます。
なお、この手順自体は、電波が悪くなったり途切れた時に、普通に基地局と基地局の間でスマホが移動する正規の手順とそれほど大きな違いはありません。
ですので、もし、スマホが、この偽基地局のエリアから入ったり、あるいは出たりしてもピクト表示が変わる以外は、ユーザーは特に違いを感じないでしょう。
ユーザーはどのように対策すればいい?
少なくとも、日本国内で利用する範囲においては、2G方式での通信サービスは利用されていません。Androidスマートフォンの場合、2Gで通信できなくすることでこの犯罪の被害(フィッシングによる金銭被害)から逃れることができます。
具体的には、ネットワーク設定にある「2Gを許可する」という項目をオフにすることで、この基地局との通信は行われず、不審なSMSが送信されてくることはありません。ただし、4G/LTE通信が復旧するわけではありません。
2Gをオフにする機能は、全てのAndroidスマートフォンで用意されているわけではありません。ただ、海外で偽基地局には検挙事例もあるためか、一部の海外製Androidでは「偽物基地局ブロック機能」を備えたスマートフォンも存在します。確認してみるとよいでしょう。
iPhoneの場合では、残念ながらGSMのみを無効化する手段が存在しません。ですので、警戒すべきことは2つになります。
ひとつは怪しいフィッシングSMSにはには手を付けずに削除すること。
もうひとつは接続中は通信が傍受される可能性があるのでできるだけ行わないこと。具体的には「2G」「GSM」といった表示になるなら「機内モード」や通信を切断してしまったほうがいいでしょう。
というのも、偽基地局内で通信を傍受することが可能だからです。これは、たとえばPOP3メールのように暗号化されていないメール受信などはそのままメールの内容が偽基地局の運用者に見えてしまうことになるからです。HTTPS対応のWebサイトとの通信、あるいはVPNを利用していれば、よほどのことがなければ内容を覗くことはできません。