ケータイ用語の基礎知識
【第1010回】スマホのバッテリー寿命に影響? 「ゲームしながら/動画見ながら充電はNG」の理由
2024年5月31日 00:01
高温が招く、バッテリーのこれだけの問題
ゲームをしたり動画を見たりと、高負荷な作業をスマートフォンに行わせながら充電を行うことは、あまり勧められません。
理由はいくつかあります。
一番大きなものは「負荷による加熱」です。
端末が熱を持つことで、特にバッテリーが影響を受けます。
現在のスマートフォンのほとんどがリチウムイオンバッテリーを使用しています。
リチウムイオンバッテリーは、リチウムコバルト酸化物で作られた正極(プラス極)と炭素などの物質でできた負極(マイナス極)があり、その間にリチウム電解液で満たされています。
この正極と負極の間を、リチウムイオンが行ったり来たりすることで、充電・放電を行います。
バッテリーが高温になると、内部で起こる化学反応が活発になりすぎます。これは、電解質が分解してしまうなどの化学反応を引き起こす原因になります。電解質は、リチウムイオンが正極と負極の間を移動するのを助ける重要な役割を果たしますが、このせいで、イオンの移動がスムーズにいかなくなるのです。
熱によって材料が変質すると、バッテリー内部の抵抗が増加します。これにより、充電や放電の効率が悪くなってしまいます。
つまり、バッテリー性能が劣化してしまうのです。
また、バッテリーが高温で使用されると、リチウムが不均一に析出しやすくなります。これは、樹枝状の金属リチウムの構造体です。充電時にリチウムイオンが還元されて金属リチウムとして析出する際、局所的な電流密度の高い部分から優先的に成長するため、樹枝状の構造体が形成されるのです。
デンドライトが形成されると、当然、使えるリチウムイオンの量が減少しますから、バッテリーの容量が減少してしまい、性能劣化につながります。
このデンドライトが電極表面を傷つけます。これによっても、容量低下や寿命低下を引き起こします。また、極端な例ですが、デンドライトが成長した場合、バッテリーの内部短絡や発火の原因となる可能性もあります。
電極としては、炭素で出来た負極側が高温による障害を受けるという問題もあります。バッテリーの負極側には、正確には固体電解質界(SEI)層と呼ばれる面が形成されます。これは充放電の安定に重要な役割を果たすのですが、高温などによって劣化・分解したりというようなことがおきます。これによって、リチウムイオンの効率的な移動が阻害され、やはりバッテリー性能の低下がおきます。
この「熱を持つ」問題に対する対応策としては、スマートフォンを高負荷で使用する時には充電をしながらにしない。また、十分に冷却する(もちろん結露のしない範囲で)がよい、と言えるでしょう。最近では、スマートフォン用の外付けヒートシンクなども発売されていますので、適宜これらを使うのもいいかもしれません。
接触不良になる可能性も……。
また、もうひとつの問題としては(熱の問題よりは小さな問題ですが)、充電ケーブルの問題があります。
もともと充電ケーブル(一般的なUSBケーブル)、スマートフォンのコネクタは、接続しながら端末が動くような動作をするような設計はされていません。
つまり、使いながらの充電は、断線や接触不良の可能性が出てくるのです。
そのうち、充電しているはずなのになぜかされない、ケーブルを認識しないというような故障につながる可能性もあります(つまり、ケーブルが断線、あるいはコネクタの接触不良に陥ることがありうるということです)。
この接触不良にしないための、解決策としては、「充電時は、スマートフォンを使用せず、安定した場所に置く」ことをお勧めします。
スマートフォンは様々な部品から構成されています。プロセッサ(SoC)、メモリ・ストレージ(RAM・フラッシュメモリ)・カメラ機能をつかさどるイメージセンサーなどは半導体チップでできていますね。有機ELや液晶を含むディスプレイもあります。カメラモジュール中にあるレンズは通常、ガラスまたは高品質なプラスチックで作られています。主要な電子部品が取り付けられるプリント基板は銅のトレースと絶縁材料で構成されており、部品間の信号などを伝えるフレキシブルケーブルにはポリイミドやポリエステルも使用されています。筐体はアルミニウム合金やプラスチック製ですね。
いずれも十分な強度をもって設計されていますが、精密機器であることには変わりありません。取り扱いは慎重に、十分注意を払って、優しく使いましょう。