ケータイ用語の基礎知識

第895回:信用スコアとは

 信用スコアとは、個人にひも付く様々な属性を分析し、その人の信用力を数値・得点化したもの。フィンテック用語のひとつです。

 もともとクレジットカードが多く使われていた米国では、その人の経済的な信用度がどの程度あるかを示す「クレジットスコア」などがありました。

 しかし、2019年現在、世界的に信用スコアという言葉が注目されるようになった背景には、各個人の金銭における信用度合いを、もっとさまざまなデータから独自のアルゴリズムを用いてスコアリング・共有できるようになったから、という理由があります。

 特に、中国での信用スコアサービスの広がりに衝撃を受けた人が多いのではないでしょうか。

中国で使われている「芝麻信用」。社会的な信用として様々に使われている

 世界的にも有名になった信用スコア、中国の「芝麻信用」。これは総合サービスアプリ「支付宝(アリペイ)」の中に組み込まれています。中国国内では、個人間のお金のやりとりや、携帯電話の課金、シェアバイクを借りるとき、タクシーを呼ぶときなど、日常生活のありとあらゆるときに支付宝のスマートフォンアプリを使います。

 支付宝をどの程度使ったか、悪い使い方をしていないかなどを総合的に判断し、「ユーザーがどの程度信用に足るか」を数値化したものが芝麻信用のスコアです。支付宝で何ができるかが決まるだけでなく、社会的に何ができるかまで決まります。

 たとえば、700ポイント以上の芝麻信用報告を利用して、シンガポールのビザを申請することができます。普通の中国人であれば、シンガポールのビザ取得には、資産証明や在職証明、戸籍証明といった煩雑な書類が必要です。信用スコアが高ければ、これなしに海外旅行に行くことができます。

日本での動き

 ここまで社会にインパクトを与えるものではありませんが、主に個人向け融資などの分野で、日本でも信用スコアを作ろうという動きがあります。その上で必要とされるのは、ユーザーの行動・資産状況、身近なもので言えばスマートフォンの利用状況や料金支払い状況などです。

 そこで、日本国内の携帯電話事業者は、企業向けの信用スコアサービスの提供に動き始めています。NTTドコモは、金融機関向けに「ドコモ レンディングプラットフォーム」の提供を2019年春から提供を始めると発表しました。

 ドコモ レンディングプラットフォームは、ドコモ回線の利用期間、携帯料金支払い履歴、金融サービス利用状況、コンテンツサービス利用状況、契約内容などをもとに、契約者個々の信用スコアを算出。スコアは金融機関が審査・融資に活用します。

 また、ソフトバンクはみずほ銀行と共同で新会社J.Scoreを立ち上げ、ビッグデータとAI技術を活用したフィンテックサービス「AIスコア・レンディング」を2017年9月に開始しています。

 AIスコア・レンディングでは、ユーザーのライフスタイルやみずほ銀行・ソフトバンクとの取引状況から、融資の可否や融資可能金額などを算出します。

 国内では企業向けの展開が第一歩となっている一方、世界的に信用スコアが重視されるようになってきた背景には、B2C(企業対個人)だけでなくC2C(個人対個人)の取引、シェアエコノミーの考え方が活発になってきたことも挙げられます。

 たとえば、民泊などが一例です。家を貸す方はWebサイトなどで十分な情報を載せていても、借りる側の情報はこれまで、貸主にとって十分とは言えず、「信用のおけない人に貸して部屋を荒らされたら……」と不安を抱えていた貸主も多かったでしょう。しかし、このような時にある程度「信用スコア」のある人に貸せれば、貸主にとっても安心できるのかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)