ケータイ用語の基礎知識

第894回:GaN(窒化ガリウム)半導体 とは

 今回紹介するGaN(窒化ガリウム)半導体は、窒化ガリウム、つまり窒素とガリウムという複数の元素を材料としている半導体です。ガリウム・ナイトライド半導体という名でも知られており、スイッチング素子のほか、青色LEDなどでも利用されています。

 半導体は、電気を通しやすい金・銅・アルミなどが「導体」、ゴム・ガラスなどの「絶縁体」の中間と言える存在です。条件次第で導体にも絶縁体にもなります。

 半導体として使えるものにはシリコン、ゲルマニウムなど数種類しかありません。なかでも半導体材料として安定しているシリコンは、現在の半導体材料のほとんどに使われています。

 元素としては、シリコンは半導体として非常に使いやすいのですが、それでも弱点はいくつかあります。そのひとつは、シリコン半導体デバイスは、動作時に発熱しやすいという点です。特に大きな電圧や電流を流す場合、より熱くなりやすく放熱の仕組みが必要です。

 そうした問題の解決手段のひとつとして、シリコンより優れた材料を用いる、という考え方があります。その可能性のひとつが、「化合物半導体」です。

 これは、ひとつの元素だけではなく、複数の元素を材料にして、半導体を作るものです。

 その組み合わせはいろいろあります。代表的なものとしては、化学で使う周期表で言うIII族とV族、つまりGaNやGaAs、AlNなどです。またII族とVI族(CdTe、ZnSeなど)、IV族同士(SiC)などです。それぞれ異なる性質があります。

 今回の紹介するGaN半導体もIII族とV族の組み合わせでできた化合物半導体です。

GaN半導体の特長

 GaN半導体の特長のひとつは、シリコン半導体と比べ、電力をONにした時の抵抗の低さがあります。

 たとえば、これまでのAC/DCアダプターに使われていたダイオードやトランジスターをGaNに置き換えると、電力の損失を抑えられます。電力損失が低減した分、発熱量が減ります。電力変換器の小型化も可能となるでしょう。タブレットやノートパソコン用のACアダプターもスマートフォン用と同じくらい小さいものが一般的になるかもしれません。

 GaN半導体を使ったデバイスは、シリコンパワートランジスタより小さくできます。そのため「デバイスが小さいので電子が遠くに移動しなくてよい」「GaN結晶中の電子の移動度が高い」という点から、スイッチング速度自体も非常に高速化されるというメリットもあります。

 スマートフォン関連では、アンカー(Anker)がGaN半導体を用いたUSB充電器を国内で発売しています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)