ケータイ用語の基礎知識
第836回:Jアラート とは
2017年12月19日 06:00
緊急事態を速やかに伝える
正式名が「全国瞬時警報システム」という「Jアラート」は、日本国内に緊急事態が予測される場合、瞬時に地域住民へ情報を伝えるためのシステムです。
2004年、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)が成立しました。この法律で、国を始めとする関係省庁、自治体などが外国などからの武力を使った攻撃から、国民の生命、身体、財産を保護し、生活への影響を最小にするよう行動することが定められました。そのための仕組みの1つとして整備されたのが「Jアラート」です。対処に時間的余裕のない事態に関する情報を、携帯電話などへ緊急速報メールで配信し、また市区町村の防災行政無線などを使って、国から住民まで瞬時に伝達します。
2007年から運用が開始されており、「Jアラート」により、特に日本の領土・領海に落下または通過が予想される弾道ミサイルなどから住民が早く避難したり、予防措置をしたりして、被害を軽減することが期待されています。
特に、近隣国からの弾道ミサイルは、発射から10分もしないうちに目標へ到達する可能性もあります。ミサイルが日本に落下する可能性がある場合は、Jアラートによってサイレン音とともにメッセージが流されます。国民は、行政からの指示に従って、落ち着いて速やかな避難活動を行うことになります。なお、ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性がないと判断されたときには、発射されてもJアラートは使用されません。排他的経済水域(EEZ)内にミサイルが落下する可能性がある場合は、Jアラートは使用されず、他の方法で船舶、航空機に対して警報が発せられます。
運用開始からしばらくの間、Jアラートが運用される機会はなかなかありませんでしたが、最近では、2017年8月29日、北朝鮮がミサイルを発射。太平洋の北海道・東北地方沖に落下させた際に、発射のおよそ4分後にJアラートを使って、東日本の12の道と県に「ミサイルが東北地方の方向に発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難してください」という警報が発せられました。
その後、同じJアラートによって「地域上空を通過した模様」と報じられるまで、約12分の余裕を作ることに成功したわけです。
Jアラートの伝達は二経路、携帯電話事業者と地方公共団体へ
Jアラートの情報ソースは、内閣官房による「国民保護情報」などがあります。こうした情報は地震津波警報と同様に消防庁を経由して、携帯電話事業者を通るか、通信衛星やLGWAN・インターネット地方公共団体を通じて報じられることになります。
放送事業者、携帯電話事業者のなど一部は、Jアラートに関して「指定公共機関」として、国や地方公共団体と協力して国民保護措置を実施する機関として指定されています。緊急事態が発生した際に、避難の呼びかけなどを放送や、配信(通知)を通じて行うわけです。
携帯電話事業者としては、2017年現在、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクが指定されています。携帯大手3社が販売する携帯電話では、Jアラートが受信されるようになっています。
携帯電話へJアラートを配信するための仕組みとして、地震・津波警報などを地域に一斉同報配信する「ETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)」を利用します。この仕組みを利用した同報メールをドコモでは「エリアメール」、auやソフトバンクでは「緊急速報メール」と呼んでいます。
ただし、Jアラートが受信できると動作確認されているのは、ほとんど場合、携帯大手3社が販売する携帯電話が中心です。SIMロックフリースマートフォンの場合、ETWSへ対応し、正しく動作するものもありますが、対応しつつも信号を識別できず、Jアラートを正しく表示できない機種もあります。
そうした機種でもJアラートを受信する仕組みとして、ヤフーやgooのアプリでJアラートを受信できるものがあります。本当に通信が混雑する場合は、パケット通信も届きにくくなりますが、そうしたアプリを使うのも一手です。ETWSを利用した警報の仕組みでは、エリア内に一斉に信号を配信するというその性質から、端末が本当にメッセージを受信したかどうか確認できません。たまたま圏外に居れば通知されないこともあり得ます。そうした場合も、防災無線などからJアラートを聞くことはできますから、万が一の事態では、何らかの方法で情報を入手し、避難に向けて冷静に判断する必要があるでしょう。