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もうひとつのスタンダードタイプ「FOMA N2002」
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全国向けFOMA端末スタンダードタイプ
昨年、試験サービスから本サービスへ移行し、12月から東名阪地区にもエリアを拡大したNTTドコモの次世代携帯電話「FOMA」。この12月のエリア拡大に合わせ、新たに投入されたのがスタンダードタイプ「FOMA N2002」だ。FOMA端末としては2台目のスタンダードタイプということになる。筆者も実機を購入したので、使用レポートをお送りしよう。
動画再生「iモーション」対応端末第1弾
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NTTドコモ/NEC『FOMA N2001』。サイズ:52(W)×103(H)×22(D)mm(折りたたみ時)、107g。フォレストブルー(写真)、シルバーをラインアップ。
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大きな期待を持たれながら、ユーザーに支持を得ることができなかったFOMA。現行のPDCデジタル携帯電話に比べ、勝っている点は数多くあるが、安定性やエリア、コストなど、基本的な要素にデメリットが多く、まだまだ本領発揮には至っていない。しかし、FOMAそのものが持つポテンシャルは十分なものがあり、何らかのコンテンツやサービスをきっかけに、一気にブレイクすることも考えられる。おそらく多くの読者はFOMAに対して、「自分で買うかどうかはともかく、最も注目しているサービス」と見ていることだろう。
今回紹介するNEC製端末「FOMA N2002」は、FOMAで新たに提供が開始された「iモーション」に対応した第1弾端末だ。iモーションは端末上でダウンロードした動画を再生できるサービスで、ニュースや映画、音楽、スポーツなどのコンテンツが配信されている。
また、N2002は試験サービス以降、関東地区で販売されていた「FOMA N2001」の後継モデルとして位置付けられている。FOMAは12月から東海・関西地区でもサービスが開始されたが、これらの地区ではFOMA N2001が販売されず、スタンダードタイプの端末はN2002のみが提供される。つまり、関東以外の地域ではN2001が「幻の端末」的な存在にとなってしまった格好だ。もっともFOMAはUIMカードを差し替えるだけで、複数の端末を利用できるため、関東以外の地域でN2001を所有することがそれほど難しくないため、「幻」と言えるほどのものでもないのだが……。
ところで、N2002は出荷前後にいくつか混乱も見受けられた。NTTドコモはN2001を購入したユーザーに対し、N2002を安価に購入できる旨のダイレクトメールが送付している。これはFOMAの主力サービスのひとつであるiモーションをいち早く体験してもらいたいため、移行を促したかったのだろうが、筆者のところにダイレクトメールが届いたのは発売から数日を経過した後で、すでにN2002を購入した後だった。しかも不親切なことに、「どれくらい安価なのか」といった情報がいっさい書かれておらず、何のためのダイレクトメールなのかが今ひとつ理解できなかった。その後、インターネット上の掲示板で情報を集めたところ、どうも筆者が購入した価格はあまり安くなかったようだが、情報が不正確な上に、遅れて提供されるという非常に情けなく意味不明な販売施策となってしまった。こんなに後味の悪い買い物というのも珍しい。筆者は仕事なので、ある程度は我慢するしかないのかもしれないが、普通のユーザーだったら、怒り出しても不思議のない対応ぶりだったと言えるだろう。
もうひとつの問題は発売開始直後、不具合により、早々に回収が行なわれたことだ。昨年はじめの503iシリーズなどの回収同様、ダイレクトメールには金券が同封されていたのだが、相変わらず購入したコンテンツの移行もできず、すべてダウンロードし直しという形になってしまった。
とまあ、たいへん気分を害することばかりが続くN2002なのだが、端末としての仕上りやiモーションの魅力など、気になる部分は多い。N2001との違いなども踏まえながら、その出来映えを見てみよう。
ディスプレイをTFDカラー液晶に変更
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N2002(左)とN2001。形状の違いは背面ボタンのデザイン程度しかない。
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製品の細かい仕様などについては、NTTドコモやNECの製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただきたい。ここでは筆者が購入した端末を使用した印象を中心にお伝えしよう。
まず、ボディは基本的にN2001とほぼ同じデザインを踏襲しており、カラーリングやボタン類を除けば、大きな違いはない。外見でハッキリ違いが見えるのは、トップ部裏側の背面ボタンの処理くらいだ。従来は扇形のボタンを採用していたのに対し、今回は楕円形のボタンが採用されている。細かいところではバッテリー装着部にあるUIMカードスロットのロックレバーの形状が変更されている。N2001のときはロックレバーが小さすぎて、固定/解除の操作がしづらかったが、N2002では突起部が少し長くなったことで、操作しやすくなっている。また、N2001ではボディのきしみが起きていたが、N2002はわずかに改善されたようで、四六時中ギシギシ鳴るというほどではなくなっている。
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UIMカードスロットはバッテリー装着部の内側にある。スライド式のロックレバーの形状がN2001から改善されている。
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ディスプレイは65536色表示が可能な2.2インチのMD-TFDカラー液晶が採用されている。N2001では次世代ディスプレイとして期待されているカラー有機ELディスプレイをいち早く採用し、業界を驚かせたが、早くも姿を消すことになった。しかし、NECによれば、今回のディスプレイの変更は単純に量産性を重視したための措置で、カラー有機ELディスプレイに何らかのマイナス面があったとは考えていないそうだ。N2002で採用されたMD-TFDカラー液晶は非常にN503iで採用されたTFDカラー液晶よりも明るく、N503iSと比べてもまったく遜色がないほどの明るさだ。バックライトの明るさは3段階に調整できるが、FOMAの厳しいバッテリー駆動時間を少しでも伸ばすためには最も暗く設定した方がベターだろう。ちなみに、太陽光の下での視認性も良好で、オールラウンドに見やすいディスプレイと言えそうだ。
ちなみに、ディスプレイが変更されたことで、ディスプレイ側の厚みが若干、増しているが、実際の差はわずか2mmしかなく、実用レベルで違いを感じるほどのものでもない。むしろ、最近の端末の中ではかなり薄い部類に入るくらいだ。
ボタン類はN2001と同様で、中央のマルチファンクションボタンの周囲の色が少し変わった程度の違いしかない。操作性もほぼ同じだが、前述のように、N2001よりはボタンを押したときのきしみがわずかに減っているように感じられる。ちなみに、マルチファンクションキーは既存の端末の方向キーに比べ、上下左右方向のボタンサイズが大きいため、確実に入力できるというメリットがある。マルチファンクションボタンはデザイン上のアクセントでもあるが、実は操作性の面でも評価できる部分だ。
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ディスプレイはMD-TFDカラー液晶に変更されている。最近の端末の中ではトップレベルの明るさ。
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ボタン類はN2001のものをそのまま継承。中央のマルチファンクションボタンは方向ボタンが大きく押しやすい。
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次世代携帯電話らしい「iモーション」
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基本的なメニュー構成はN2001と同じ。操作性もまったく変わりない。
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一方、機能面についてだが、これも基本的にN2001と変わりはない。マルチアクセスや高速パケット通信といった機能もそのまま継承されており、同じように使うことができる。しかし、メールのフォルダ管理や振り分けなどの機能がないところも同じで、使い勝手はPDC端末のN503iやN210iなどに近い印象だ。試験サービスのときから数えて、N2001が登場してから約半年近くが経過していることを考慮すれば、せめてN503iS相当程度まで、細かい機能向上を図っても良かったのではないだろうか。
一方、N2002で新たにサポートされたのが動画コンテンツサービス「iモーション」への対応だ。iモーションそのものについては、すでに大和哲氏が「ケータイ用語の基礎知識」で解説しているので、細かい説明はしないが、簡単に言ってしまえば、今まで静止画で見ていたコンテンツが動画を含むものに進化したということだ。必要な場所でリンクをクリックすれば、動画コンテンツが端末にダウンロードされ、それを端末上でいつでも再生できるということだ。ちなみに、N2002には5~50件までの映像を保存でき、iモーションプレーヤーで連続的に再生したり、プログラム再生をすることができる。ファイルサイズは100KBと大きい(携帯電話向けとしては)が、FOMAの高速パケット通信のおかげで、数十秒でコンテンツをダウンロードすることが可能だ。つまり、iモーションはテレビ電話と並ぶ「次世代携帯電話らしいサービス」のひとつというわけだ。
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NECの公式サイトからダウンロードした「アジアアロワナ」の動画。こうした動きのゆっくりした動画はきれいに再生できる。
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実際にiモーションのコンテンツをいくつか見てみたが、実際に動画を作る段階で、どれだけ端末のことを考慮したのかによって、かなり見え方が違う。たとえば、NTTドコモが自社のテレビCMをiモーションの動画にして公開しているが、全般的に動きが早いため、部分的にコマ送りのように見えてしまう。これに対し、NECが自社サイト「みんなNらんど」で公開している魚などの動画は動きがゆっくりしているため、スムーズに再生しているように見える。このことから推測すると、iモーションで期待されている「巨人・松井のホームランシーン」をテレビ番組と同じように標準速でiモーション向けにコンバートすると、動きが早すぎてフォームや弾道などはまったく見られない可能性が高い。このあたりは映像の作り手のお手並み拝見という印象だ。
また、iモーションは従来の待受画面や着信メロディをダウンロードするときと同じ感覚で、非常に手軽に見られる。この手軽に見られること自体はうれしいのだが、手軽であるがゆえに、1本あたりにどれくらいの料金が掛かっているのかを常に意識していなければ、アッという間にパケット料金がたいへんな額になってしまう危険性をはらんでいる。
【約100KBのiモーションをダウンロードしたときのパケット料金】
パケットパック |
定額通信料(月額) |
1本あたりのパケット料金 |
パケットパック80 |
8000円 |
16~17円 |
パケットパック40 |
4000円 |
42~43円 |
パケットパック20 |
2000円 |
84~85円 |
パケットパックなし |
0円 |
168~169円 |
この一覧表を見てもわかるように、FOMAの場合、約100KBのコンテンツをダウンロードしたときの料金がパケットパックの契約によって、10倍も差がついてしまう。これはNTTドコモの事業者としての方針なのかもしれないが、同じコンテンツを見ながら、10倍もの料金差が出てしまうのはユーザーとして、かなり納得できないものがある。回線やサービスが違うのであれば、まだ理解できるが、料金プランが違うだけで、ここまで差が付くというのはどう考えても正常ではないだろう。
携帯電話のサービスを他のサービスと比較するには若干、無理があるが、同じPPV(Pay Per View)番組を同じタイミングで見たとき、あるいはレンタルビデオ/DVDなどで映画を見たとき、10倍の料金差があって、視聴者は納得してくれるだろうか。たぶん、そんなサービスは通用しないはずだ。そういう意味から考えてもNTTドコモは、もう少し格差の少ない料金プランを検討する必要があるのではないだろうか。iモーションが手軽で面白いものであるだけに残念だ。
また、iモーションのコンテンツはユーザー自身が自由に作成することが可能だ。現在、米VoiceAge社がAVIファイルからのコンバートツールを提供しており、2月末までの期間限定で無償でダウンロードすることができる。ただ、このコンバートツールはあまり使い勝手が良いものではなく、コンバート元になるファイルの形式も限定されている。auのムービーケータイ向けに提供されている環境と比べると、かなり見劣りがすると言わざるを得ない。できることなら、国内のソフトウェアベンダーに使いやすいiモーション用ユーティリティを開発してもらいたいところだ。
iモーションは手軽で面白いが……
さて、最後にいつものように、「買い」の診断をしてみよう。N2002は試験サービス当時から提供されてきたN2001をベースにしながら、iモーションに対応させたスタンダードなFOMA端末だ。ディスプレイも一般的な液晶ディスプレイに変更されたで、屋内外での視認性が良くなり、かなり実用性の高い端末に仕上がっている。ただ、FOMAサービスそのものについては、まだまだ途上中の印象が否めず、料金プランなどにも非常にアンバランスな面が目立つ。
まず、N2002を「買い」と言えるのは、iモーションをいち早く楽しんでみたいというユーザーだ。ただ、iモーションがFOMAのみで提供されるとは限らないということも念頭においておきたい。NTTドコモでは既存のPDCデジタル携帯電話のパケット通信を高速化することを予定しており、もしかすると、50xシリーズなどでiモーションが楽しめるかもしれないからだ。また、動画コンテンツを楽しみたいというのであれば、すでにPHS向けにM-stage visualが提供されており、こちらで楽しむ方がリーズナブルという捉え方もできるだろう。
また、N2002はN2001に比べ、ディスプレイが変更されたことにより、オールラウンドに使える端末に仕上げられている。ただ、機能面で見た場合、N503iSよりも明らかに劣っている部分があり、価格面から考えても今ひとつ納得できない部分が多い。NTTドコモがFOMAをPDCデジタル携帯電話の上位サービスとして位置付けているのであれば、FOMA端末がPDCデジタル携帯電話端末に機能負けしているような状況は避けるべきで、それができないのであれば、FOMAを本格的に普及させることは難しいだろう。
動画コンテンツにしてもPHS向けにM-stage visualというものを提供していながら、iモーションというまったく別のサービスを始めてしまったのは、どうも理解に苦しむ。こうしたサービスとしての統一感のなさは、ユーザーとしても非常に不安を感じる部分であり、今後のFOMAの普及にも少なからず影響を及ぼすかもしれない。ちなみに、こうしたサービスの統一感のなさはiモーションに始まったことではなく、NTTドコモは携帯電話でのiモードに対して、PHSのブラウザフォン向け、エクシーレなどのDoPa端末向け、moperaサービス向けなど、似たようなコンテンツをまったく相互関係なく、提供している。悪く言えば、統一感のなさはある意味、NTTドコモの得意技でもあり、iモーションは図らずもこれをくり返してしまったことになる。
さらに、冒頭で紹介したチグハグな販売施策と不具合の対応も非常に印象が悪い。端末が魅力的であってもこうした販売施策やサポート、対応などを誤ると、端末そのものの魅力をスポイルしてしまう可能性が高い。昨年末に掲載した「ケータイ・イズ・ノット・イナフ『ユア・ハンズ・オンリー 2001』」でも述べたことだが、NTTドコモはもっとユーザーに対して、真摯かつ優しく接することを真剣に考えるべきだ。消費者は一般的な生活の中で、いろんな企業や販売店と接することになるが、今回のような不可解かつ気分の悪い対応は業界の盟主たる企業が行なうものではないだろう。
問題点をいくつも指摘してしまうのは非常に残念な限りだが、iモーションそのものは手軽で楽しいサービスであり、それをいち早く楽しめるN2002は存在意義のある端末だ。できることなら、iモーションの魅力を活かすためにもサービス内容の充実や料金プランの改訂などを望みたい。
・ 「N2002」及び「iモーション」サービスニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew1114b.html
・ FOMA N2002製品情報(NTTドコモ)
http://foma.nttdocomo.co.jp/catalog/term/n2002.html
・ FOMA N2002ニュースリリース(NEC)
http://www.nec.co.jp/press/ja/0111/1402.html
・ FOMA N2002製品情報(NEC)
http://www.nec.co.jp/mobile/ja/lineup/n2002/
・ FOMA N2002(シルバー)
・ FOMA N2001(レッド)
・ FOMA N2001(試験サービス用)
・ ドコモ、iモーション対応の折りたたみ型FOMA端末「N2002」
・ 有機ELディスプレイを搭載したFOMA端末「N2001」
・ Act.3 トゥモロー・ネバー・BUY?
(法林岳之)
2002/01/08 13:56
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