昨年9月に発表され、2月20日から販売が開始されたNTTドコモの「BlackBerry Bold」。世界でもっとも売れているスマートフォンのひとつが日本向けに登場したことで、各方面から高い関心を集めている。筆者も実機を購入し、1カ月ほど使用したので、その印象を踏まえながら、レポートをお送りしよう。
世界でもっとも売れているケータイが先般、日本市場から撤退したノキア(Nokia)であることはよく知られている。しかし、その最大シェアを支えているのは、日本市場向けに展開されていた高機能な端末ではなく、どちらかと言えば、通話やSMSなどをメインにしたシンプルな端末が多いと言われている。これに対し、「スマートフォン」と呼ばれるケータイのジャンルにおいて、世界で広く使われていると言われているのがカナダのResearch In Motion社(以下、RIM社)が展開する「BlackBerry」シリーズだ。
BlackBerryは世界中を飛び回るビジネスエリートをはじめ、セレブリティと呼ばれる人たちにも広く愛用されていることで知られている。2009年1月に就任した米国のオバマ大統領がホワイトハウスへの持ち込み許可を要求したという話もあれば、日本でもおなじみのハリウッド女優が運転中の携帯電話利用で検挙されたときに使っていたのはBlackBerryだったなど、海外ニュースを見ているだけでもその人気ぶりがよくうかがえる。
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NTTドコモ/Research In Motion『PROシリーズ BlackBerry Bold』、サイズ:66(W)×114(H)×142(D)mm、137g。ブラック(写真)のみをラインアップ
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今回紹介するBlackBerry Boldは、NTTドコモがRIM社から供給を受けて2月20日から国内向けに販売された端末だが、BlackBerryシリーズは、ノキアやHTC、あるいはソフトバンク向けにアップルが供給するiPhoneなどのスマートフォンとは、位置付けやアプローチが若干、異なる製品だ。そこで、BlackBerry Boldの説明をする前に、“なぜBlackBerryなのか”について、少し説明しておこう。
まず、iPhoneやWindows Mobileなど、現在、市場にはさまざまなスマートフォンと呼ばれるケータイが存在するが、これらの多くは基本的に「端末」として販売され、利用されている。それぞれのプラットフォームに対応したアプリケーションをダウンロードし、ある程度、自由にカスタマイズして、使うことができる。
これに対し、BlackBerryシリーズは「端末」というより、企業向けに中心に「ソリューション」として提供されている。つまり、BlackBerry Boldはソリューションを利用するための端末であり、端末のみでBlackBerryならではの使い方ができるだけではなく、サーバーを含めたトータルソリューションとして利用することで、はじめて本領を発揮できる。
では、具体的にBlackBerryはどんなことができて、何が便利なのだろうか。たとえば、近年、企業では単独でパソコンを利用するのではなく、ネットワークを構築し、グループウェアを活用することで、スタッフのスケジュールや連絡先、仕事の進捗などを管理するところが増えている。しかし、スタッフは必ずしもオフィスのみで業務をするわけではなく、取引先に出向いたり、出張に出かけるなど、社外でも業務を行なうことがある。その場合、モバイルノートパソコンを持ち出し、公衆無線LANサービスやモバイルデータ通信サービスなどでインターネットに接続し、メールのやり取りやファイルの送受信、Webページの閲覧などをするわけだが、会社へのリモートアクセスを可能にするにはファイアウォールなどのネットワーク構成に変更を加えなければならないうえ、システム管理者としてもインターネットからの接続にはセキュリティ面でかなり神経を使わなければならない。同時に、社外でのパソコンの利用は、企業にとって、盗難や紛失などによる情報漏えいなどのリスクを伴う。
こうした状況を解決するために開発されたのがBlackBerryのソリューションということになる。BlackBerryでは企業で利用しているグループウェアと連動し、モバイル環境でもオフィスに居るときと同じように業務が遂行できることを目指している。
たとえば、オフィスに居るスタッフがグループウェアに明日の会議のスケジュールを入れたとしよう。すると、グループウェアに入力されたスケジュールは、インターネットと携帯電話会社(国内ではNTTドコモ)のネットワークを経由し、BlackBerry端末のカレンダー機能へすぐに反映される。もちろん、スケジュールだけでなく、アドレス帳の連絡先や会社のメールアドレス宛のメールなどもすぐにBlackBerry端末に届く。これらの情報の更新は一方的に送られてくるわけではなく、企業のグループウェアとBlackBerry端末を同期させ、常に双方の情報が更新され続ける仕組みとなっている。
端末についてはスタッフごとに利用できる機能やサービスを制限できたり、暗号化通信によるセキュリティ、盗難や紛失時のリモートワイプ(消去)など、企業が管理しやすい環境が整っている。つまり、スタッフにモバイルノートパソコンやPDAなど、複数の機器を持たせる必要がなく、BlackBerryの端末が1つあれば、大半の業務がこなせるように作られたソリューションというわけだ。
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BlackBerry Enterprise Serviceで利用するときのネットワークの基本構成例。社内のグループウェアはインターネットやRIM社のネットワーク設備を経由して、BlackBerry端末と接続される
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こうした環境を実現できているのは、BlackBerryのネットワーク構成に秘密がある。図は企業向けソリューションのネットワーク構成の基本例だが、企業で利用するグループウェア(Microsoft ExchangeやLotus Domino)は社内に設置したBlackBerry Enterprise Serverを通じて、RIM社の提供するBlackBerry Infrastructureと呼ばれるシステムとインターネットを経由して接続される。
BlackBerry Infrastructureは、FOMAネットワークと専用線で接続され、ユーザーのBlackBerry端末と相互に信号をやり取りする。BlackBerry Enterprise Serverは非常に短い間隔でグループウェアの情報を確認し、更新されたものがあれば、BlackBerry Infrastructureを経由して、ユーザーのBlackBerry端末に最新情報が送られる。ユーザーのBlackBerry端末もBlackBerry Infrastructureと常に連動しているため、情報が更新されれば、BlackBerry Enterprise Serverを経由して、社内のグループウェアに反映されるというわけだ。
ちなみに、この構成において、BlackBerry Enterprise ServerとBlackBerry Infrastructureの間はRIM社独自のプロトコルで通信が行われ、BlackBerry Enterprise Serverからインターネットに向かって、通信が開始されるため、社内のファイアウォールも最小限の変更で済む。BlackBerryがセキュリティ面で強いと言われる要因のひとつだ。
■ 個人ユーザーでも気軽に使えるBlackBerry Internet Service
こうした特徴を持つBlackBerryシリーズだが、ここまでに解説したような使い方ができるのは、基本的にグループウェアなどを導入している企業ユーザーが中心であり、NTTドコモがRIM社とともに提供する「BlackBerry Enterprise Service」を利用する必要がある。
しかし、筆者のような個人事業主やSOHOユーザー、あるいはビジネスパーソンでも個人的にBlackBerryシリーズを使ってみたいユーザーも存在する。そういったニーズに応えるために提供されているのが月額1575円の「BlackBerry Internet Service」だ。
BlackBerry Internet ServiceはBlackBerryシリーズが持つ多くの特徴を継承しながら、個人ユーザーがもっともよく利用するメールとWebブラウザを快適に利用できるように作られたサービスとなっている。まず、メールについては、会社やプロバイダー、独自ドメインなどのメールを送受信できるようにするもので、BlackBerry Internet Serviceで取得できる「○○○@docomo.blackberry.com」のメールアドレスのほかに、最大10カ所までメールアカウントを設定できる。そして、ここで設定したメールについては、すべてプッシュでBlackBerry端末に送信される。
会社やプロバイダー、独自ドメインなどのメールサーバーは、いずれも特に設定などを変更する必要はなく、基本的にPOP3形式およびIMAP形式のメールサーバーで、インターネット上からの受信を許可していれば、BlackBerry端末に対し、プッシュでメールが送信されてくる。仕組みとしては、前述のBlackBerryのネットワーク構成のBlackBerry Infrastructureの部分がBlackBerry Internet Serviceに置き換えられ、ユーザーが受信したいメールアカウントの情報はBlackBerry Internet Serviceに設定される。BlackBerry Internet Serviceのサーバーはインターネット経由で会社やプロバイダーのメールサーバーを非常に短い間隔でチェックし、メールが届いていれば、BlackBerry Internet ServiceのサーバーからユーザーのBlackBerry端末に送られるようになっている。
Webページの閲覧についてもBlackBerry Internet Serviceのサーバーが中継する。BlackBerry端末に搭載されているWebブラウザにURLを入力すると、BlackBerry Internet Serviceがインターネット経由で目的のWebページにリクエストを送り、送られてきたWebページの内容をBlackBerry端末用に最適化して、ユーザーのBlackBerry端末に送信する。最適化はWebページに使われる画像の圧縮などが行われるため、全体として、通常のフルブラウザで閲覧したときよりもパケット通信料は少なく済むとされている。
ちなみに、料金プランについては、FOMA向けに提供されている通常の料金プランを契約でき、パケット通信料については月額1029~5985円の定額で利用できる「Biz・ホーダイ ダブル」を契約できる。BlackBerry BoldにはIEEE802.11a/b/g準拠の無線LAN機能が搭載されているため、パケット通信料定額プランを不要と考える向きがあるかもしれないが、ここまで説明してきたように、BlackBerryシリーズは常にネットワークと接続した状態で利用するため、圧縮されているとは言え、外出中はほぼ絶えずにパケット通信をするため、Biz・ホーダイ ダブルの契約は必須と考えておいた方がいいだろう。ちなみに、2月20日に発売して以来、約1カ月近く利用したところ、パケット通信量は約8万パケット程度だった。最初は様子を見ながら、少しずつ利用する機能を増やしていった上、自宅では基本的に無線LANが利用できるので、パケット通信量としてはやや少なめかもしれないが、ほぼ同時期に購入した知人も約8~10万パケット程度に抑えられている。外出が多ければ、当然、パケット通信量はさらに増えることになるので、利用頻度にもよるが、約10万パケット程度がひとつの目安と言えるかもしれない。
ちなみに、BlackBerry Boldはiモードのコンテンツ閲覧が利用できないため、通常のFOMA契約から移行するときは、すぐにiモード契約を廃止してしまおうと考えるかもしれないが、My docomoでの手続きや利用状況の確認などはiモード端末から操作した方が簡単なので、もし、iモード端末が手元にあるのなら、しばらく契約を残しておくのも手だ。
■ コンパクトなボディにQWERTY配列フルキーを装備
さて、BlackBerryのサービス内容が理解できたところで、BlackBerry Boldについて、見てみよう。まず、ボディはQWERTY配列のフルキーボードを装備したコンパクトなストレートタイプ。同じスマートフォンのジャンルで言えば、X01HTやX01NK(NOKIA E61)などに近いサイズで、iPhone 3Gに比べると、若干、厚さが上回るものの、手に持ったホールド感は非常に良い。
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待受画面には6つのアイコンが並ぶ。一部を除き、アイコンは自由に並べ替えることが可能
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待受画面で[メニュー]キーを押すと、アプリケーションや機能の一覧が表示される。使いたい機能をここから選ぶ
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たとえば、メールの一覧画面で[メニュー]キーを押すと、こんな項目を選ぶことができる
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QWERTY配列のフルキーボードを搭載。中央のトラックボールとその周囲のキーで、多くの操作ができる
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QWERTY配列のフルキーボードとディスプレイに間には、トラックボールとその左右に2つずつのキーが並ぶ。左端の[発呼]キー([発話]キー)と右端の[終話/電源]キーはアイコンですぐにわかるが、トラックボールの左側にあるBlackBerryのロゴがあしらわれているのは[メニュー]キー、右側に戻るような矢印のアイコンがあしらわれているのが[エスケープ]キーだ。[メニュー]キーはその名の通り、端末に登録されているアプリケーション一覧が並ぶメニュー画面を呼び出したり、各機能を利用しているときにその場面で呼び出せる機能の一覧を表示したりする(日本のケータイでソフトキーを押して表示される「サブメニュー」の使い方に近い)ときに利用する。[エスケープ]キーは[クリア]キーに相当するもので、ひとつ前の操作に戻るときに使う。トラックボールは回してカーソルを移動するだけでなく、押して、項目をクリックしたり、決定操作をするときに使う。このトラックボール、[メニュー]キー、[エスケープ]キーは、BlackBerry Boldを使う上で、頻繁に操作するものだ。
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フルキーを装備したストレートタイプのスマートフォン3機種。NOKIA E61(左)、BlackBerry Bold(中央)、X02HT(右)
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QWERTY配列のフルキーボードは、他の同様のスタイル(どちらが先なのかは別にして)を採用するケータイとほぼ同じだが、キー先端部分に独特のカーブが付けられ、突起具合いが左右で差が付けられており、操作感はかなり良い。左下に装備されている[alt]キーは、右半分の数字をはじめ、他のキーに割り当てられた記号などを入力するときに使うもので、[alt]キーを押した後、それぞれのキーを押す。左下の↑矢印がプリントされているのは[Shift]キーで、アルファベットの大文字などを入力するときに使うが、大文字の入力は各キーの長押しでも入力できる。記号類は[Space]キーの右隣の[記号]キーを押すと、一覧が表示される。
意外に便利なのは[Space]キーで、メールアドレスやURLの入力で「.(ピリオド)」や「@(アットマーク)」を入力するとき、[alt]キーとの組み合わせや記号一覧から選ばなくても[Space]キーを押すだけで入力できてしまう。日本語入力については、右下の[文字]キーを押して、かな入力モードに切り替えてから入力する。学習や予測変換にも対応し、ユーザー辞書に単語を登録することもできる。
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3.5mmイヤホンジャック、miniUSBポート、microSDメモリーカードスロット装備。中央のボタンを押すと、出荷時設定では音声ダイヤルが起動してしまう
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右側面にはシーソー式の音量キー(上)と自由に機能を割り当てることができる右サイドキーが装備される
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左右のサイドキーで起動する機能は、自由に変更できる
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背面には200万画素カメラを備える。カメラなしモデルも選べる
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本体の右側面にはシーソー式の音量キーと右サイドキー、左側面にはmicroSDメモリーカードスロット、miniUSBポート、3.5mmイヤホンジャック、左サイドキーなどが装備され、背面には200万画素カメラも備える。これらのうち、左右のサイドキーは任意の機能の起動を割り当てておけるのだが、右サイドキーがやや堅めでボタンであるのに対し、左サイドキーが軽く押せる形状で、使い始めの頃は出荷時に設定されている音声ダイヤルを呼び出してしまうことがあるので、別の機能を割り当てるか、何も起動しないように設定しておくと安全だろう。
また、BlackBerry Boldはストレート型の形状を採用しているにもかかわらず、ボディ周囲に誤操作防止のロックキーなどが装備されていない。キー操作をロックしたいときは、[メニュー]キーで一覧画面を呼び出し、「キーボードロック」を選ぶ。解除するときは[*/A]キー、[発呼]キーの順に押す。あるいは、端末上部に装備された[ミュート]キーを長押しすると、スタンバイモードに切り替えることができる。
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パッケージに標準で添付される「ホルスターケース」(左)と海外で販売されている純正の「Leather Pocket」。いずれも磁石が仕込まれていて、ケースに入れると、スタンバイモードに移行する
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キーボードロックにしろ、[ミュート]キーでのスタンバイモードにしろ、誤操作防止ロックのための操作はちょっと面倒なのだが、端末のパッケージに付属する「ホルスターケース」に収めると、自動的にスタンバイモードに移行するので、ケース類をうまく使うのもひとつの手だ。ホルスターケースには磁石が内蔵され、BlackBerry Boldのキー部分に内蔵されたセンサーがこれを検知し、ロックが掛かる仕組みとなっている。ただ、付属のホルスターケースはかなり磁力が強く、クレジットカードなどの磁気を使うアイテムに影響を与えるかもしれないので、注意が必要だ。筆者はRIM社が海外で販売するBlackBerry Bold Leather Pocketというケースを使っているが、こちらは磁気もあまり強くなく、安心して利用できる。同様の商品はNTTドコモもBlackBerry Bold Pocketとして販売している(ブラックだけだが……)。
ちなみに、RIM社は海外でBlackBerry Boldの純正カスタムパーツを数多く販売している。たとえば、背面カバーなども5色のカラーバリエーションをラインアップしているのだが、国内では端末技術適合基準の関係上、基本的にこれらのパーツを装着して、端末を利用することはできない。ちょっと残念なところだが、その分、ケース類などを工夫して、少ししゃれた持ち方をしてみたいところだ。
■ 利用状況に合ったメールの使いこなしが求められる
BlackBerry Boldを使う上で、もっとも便利なのは、やはりメール環境だろう。前述のように、会社やISPのメールアカウントを登録しておけば、BlackBerry Bold宛にメールがプッシュで届く。国内ではiモードメールなども直接、プッシュで端末に届くため、「直接、端末に届く」という部分だけにフォーカスをすれば、別に目新しい要素でもないのだが、ケータイ専用のメールアドレスではなく、普段の仕事やプライベートで利用しているメールアドレスのメールがプッシュで届くのは、実際に使ってみると、かなり魅力的だ。
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メールアカウントは「Email Setting」から最大10個まで追加が可能
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メールアドレスやパスワード、メールサーバー名などを入力すれば、設定は完了
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メールの一覧画面。設定したすべてのアカウントのメールがメッセージの画面にまとめて表示される。フォルダへの振り分け機能などはない
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メールのセットアップは非常に簡単で、BlackBerry Boldの「Email Setting」というメール設定ウィザードに従い、メールアドレスやパスワード、メールサーバー名などを入力すれば、完了し、数十分後には自分宛てのメールがBlackBerry Boldに次々と届くようになる。このメール送受信に関する設定は見かけ上、端末に設定しているが、実際にはBlackBerry Internet Serviceの自分専用ページに必要な情報を登録する仕組みとなっており、BlackBerryがWebアプリケーションサービスのように動作していることがうかがえる一面でもある。
会社やISPのメールアドレス宛のメールが直接、端末に届くのは非常に便利である半面、メールアドレスの状態によっては非常に使いにくいケースもある。たとえば迷惑メールの処理だ。iモードメールなどのケータイ専用メールアドレスであれば、元々、プライベートの利用が中心のため、メールアドレスを友だちや家族にしか周知しない人が多い。一方、会社やISPのメールは、使い方によってはかなり広く周知するため、迷惑メールも増える傾向にある。
筆者や本誌記者、あるいは営業活動を行うビジネスパーソンのように、日常的にあちこちで名刺を配っていると、1日に数百通という単位でメールが届いてしまうケースもある。自宅の環境であれば、メールソフトの迷惑メールフィルタ機能で対応できるが、BlackBerry Boldのメールにはそこまでの機能はない。
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GmailはBlackBerry Internet Serviceに登録するだけでなく、アプリも配布されている
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NTTドコモが提供する「iモード.net」がモバイルモードに対応した
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そこで、活用したいのが今やWebメールの定番となったGoogleのGmailだ。会社やISPのメールをGmail宛に転送したり、Gmailから会社やISPのメールを受信しに行くという方法を使い、迷惑メールのフィルタはGmailに任せ、BlackBerry BoldにGmailのアカウントを設定して、送受信するわけだ。この方法を使えば、かなり快適にメールの送受信ができるが、BlackBerry Boldのメール機能にGmailのアカウントを設定した場合、届いたメールに対する返信は、発信元がGmailのアドレスになってしまう。Gmailには元々、登録した他のドメインのメールアドレスを使って返信する機能があるが、BlackBerry Boldのメール機能に登録した場合は、これが利用できない。Gmailについては、GoogleからBlackBerry向けアプリが提供されており、こちらを利用し、Gmailの設定Webページのアカウントの欄で、メッセージ受信時の返信を「メールを受信したアドレスで返信する」を選んでおけば、会社やISPのメールアドレスで返信することができる。
Gmailを組み合わせることで、快適に利用できるようになるBlackBerry Boldのメール機能だが、端末に搭載されているメール機能そのものはあまり高機能ではなく、少し割り切った使い方が必要になる。というのもBlackBerry Boldのメール機能には、フォルダによる振り分けなどの機能がなく、すべてのメールが時系列に並んで、表示される。メールアドレスや件名による検索はできるので、目的のメールは探せるのだが、フォルダによる整理に慣れたユーザーにとっては、ちょっと使いにくいところだろう。
メールについては、NTTドコモが提供する「iモード.net」がモバイルモードに対応したことで、Webメールという形だが、iモードメールも送受信できるようになった。欲を言えば、これもBlackBerry用アプリという形で提供して欲しいところだが……。
■ ブラウザやMessenger、音楽再生などの機能も充実
BlackBerry Boldにはメール機能以外に、ブラウザやメッセンジャーなど、ネット関連の機能も揃っている。
ブラウザについては、端末本体が2.7インチのハーフVGA液晶を採用し、トラックボールで操作できることもあり、快適に使うことができる。前述のBlackBerry Internet Serviceでの画像圧縮なども利いているのか、スマートフォンのフルブラウザとしては動きも軽快な部類で、ストレスなく使える。メッセンジャーはGoogle TalkやWindows Live Messengerに対応する。ブラウザはWebフィードにも対応するが、BlackBerry用アプリとして公開されている「Viigo」などを利用するユーザーも多いようだ。
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標準搭載のブラウザでケータイ Watchを表示。やや重量級のWebページだが、ストレスなく表示できる
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カレンダーの画面はシンプル。月表示のほか、週表示、日表示を選ぶことができる。Google SyncでGoogle Calendarと同期が可能
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BlackBerry Desktop Managerの画面。アプリケーションのインストールをはじめ、バックアップと復元などができる
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パソコンのカレンダーやメモ帳、アドレス帳、タスクと同期ができる。同期する項目は好みに応じて変更が可能
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スケジュールなどについては、カレンダーで管理することができ、パソコンにインストールしたBlackBerry Desktop Managerを利用すれば、Outlookなどとシンクロすることもできる。BlackBerry用アプリとして、Google Syncも公開されているので、Google Calendarをうまく組み合わせれば、他のプラットフォームなどとも連携しやすい。冒頭で紹介したBlackBerry Enterprise Serviceのようなグループウェアと連動した使い方ができるわけではないが、Webカレンダーを組み合わせることで、個人ユーザーでもこれに近い使い方が可能だ。
逆に、悩みどころなのはアドレス帳だ。これはBlackBerry Boldに限ったことではなく、どのスマートフォンでも共通していることで、以前から指摘しているが、ケータイの場合、プライベートな持ち物ということもあり、「○○ちゃん」のように、愛称やニックネームで登録したり、「ケータイ Watch 湯野氏」のように、社名や部署名と氏名を組み合わせて登録するなど、ユーザーごとに独特の登録スタイルが存在する。しかし、多くのスマートフォンはパソコン(Outlookなど)との連携を前提にしているため、姓、名、読みがな、会社名などをきっちりと登録する仕様になっている。
BlackBerry Boldもこれに準じており、何も考えずにOutlookとシンクロしてしまうと、Outlookの膨大なレコードがBlackBerry Boldに転送されてしまったり、「○○ちゃん」のような表記の連絡先がOutlookに反映されてしまう。なかなかいい解決策はないのだが、通常のケータイ的に使いたいのであれば、アドレス帳データはOutlookなどと同期せず、基本的には端末上で管理しつつ、BlackBerry Desktop Managerでバックアップを取るか、他のWebアプリケーションとの連動を検討するしかなさそうだ。
ちなみに、通常のFOMA端末から移行した場合のアドレス帳の移行については、NTTドコモのホームページに情報が掲載されているが、「ドコモケータイ datalink」→「アドレス帳移行ツール」→「BlackBerry Desktop Manager」の順にデータを変換しなければならないので、少々手間が掛かる。
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Desktop Managerに含まれる「Media Manager」と「BlackBerry Media Sync」
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Media Managerはパソコンに保存されている映像や写真、音楽ファイル、ドキュメントなどを転送できる。転送時には適切な形式やサイズに変換してくれるので、手間は非常に少ない
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オフィス文書を読み書きできる「Word To Go」「Sheet To Go」「Slideshow To Go」などもプリインストールされている
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メールやブラウザ、カレンダー、アドレス帳といった基本機能以外には、音楽再生やドキュメントビューアーなどの機能が標準で搭載されている。意外に秀逸なのが音楽再生環境で、BlackBerry Desktop Managerから起動できる「BlackBerry Media Sync」でiTunesと同期できるほか、Windows Media Playerで管理している音楽データも転送することができる。映像ファイルや画像、着信音、ドキュメントなども「Media Manager」で変換して転送できる。国内のケータイでもフリーソフトを利用し、映像ファイルなどを変換できる環境があるが、こうしたお手軽なツールをあらかじめ提供しているのは、海外で支持されているスマートフォンらしいアプローチと言えるだろう。
ところで、BlackBerryシリーズは最初にも触れたように、高いセキュリティも企業ユーザーなどを中心に支持される理由のひとつとなっている。たとえば、暗号化通信やリモートワイプなどの機能が挙げられるが、実は個人ユーザーが利用するBlackBerry Internet Serviceでは、残念ながらリモートワイプに相当する機能が提供されていない。紛失や盗難時の対策としては、BlackBerry Internet ServiceのWebページにパソコンでアクセスし、設定したメールアカウントを削除する程度しかないが、端末にパスワードを設定しておき、一定回数を間違えると、自動的に削除する設定も可能なので、これを設定しておくのがおすすめだ。通常のFOMA端末で「おまかせロック」が提供されていることを考えると、BlackBerry Internet Serviceでリモートワイプを提供して欲しいところだ。
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Google Mobile AppはMapsやNews、Reader、Calendarなどを起動できる統合アプリ。もちろん、検索も可能
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おなじみのGoogle MapsもGoogle Mobile Appから起動することができる
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また、今回は詳しく紹介しなかったが、スマートフォンのひとつであるBlackBerryシリーズには世界中でさまざまなBlackBerry用アプリケーションが提供されており、これらもダウンロードして、インストールすることができる。もっとも身近なところでは、「Google Mobile App」「Gmail」「GoogleMaps」などが挙げられるが、日本のケータイ向けアプリとして、高い評価を得ている「NAVITIME」も4月10日から提供が開始され、最新ニュースを確認できる「産経ニュース for BlackBerry Bold」もβ版が公開されている。RIM社が4月から開始したアプリケーションストア「BlackBerry App World」は日本で利用できないが、一般に公開されているアプリケーションだけでも十分な環境が整っており、当面はそれほど不満に感じることもなさそうだ。
■ スマートフォンに実用性と軽快さを求めるなら「買い」
さて、最後にBlackBerry Boldの「買い」について、考えてみよう。元々、双方向ページャー(ポケットベル)から進化を遂げてきたBlackBerryシリーズは、インターネットと常に連動することで、他のプラットフォームにはないユニークかつ実用的な環境を実現したスマートフォンだ。企業がスタッフに持たせるビジネスツールとしては世界中で実績を持っており、ビジネスエリートやセレブリティと呼ばれる人たちにも幅広く愛用されている。日本の個人ユーザー向け市場への本格参入はやや後発になったが、サクサクと使える軽快な動作とメールを軸にした実用的な機能構成は、非常に快適だ。以前、BlackBerryの取材をしたとき、「これを持つと、ノートパソコンの出番が減るんですよ」と関係者が話していたが、正直なところを書いてしまうと、筆者もBlackBerry Boldを使いはじめてから、試用などは別として、他のスマートフォンをほとんど使わなくなり、カバンからノートパソコンを取り出す頻度も確実に減ってきている。とにかくメールに関しては見逃すことが少なくなり、早いタイミングで返答ができるようになった印象だ。
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オプションで販売される卓上ホルダ。他の海外製スマートフォンなどと違い、置くだけで充電が可能
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これらのことを総合すると、BlackBerry Boldを買いと言えるのは、メールでのコンタクトが多く、あまり構えることなく、軽快にスマートフォンを使いたいユーザー向けということになる。どうもスマートフォンと言うと、操作のレスポンスが鈍かったり、いろいろな制約がある中を「頑張って使わなければならないもの」「趣味性の強いもの」が多く見受けられる。それはそれでひとつの世界として成立していることは否定しないが、ビジネスを効率良く片付けるという本来の目的を考えると、他のプラットフォームは必ずしも十分と言えない印象もある。
BlackBerry Boldはムダな要素を極力排し、仕事をスマートかつテキパキと片付けるためのビジネスツールとして作られており、スマートフォンがはじめてのユーザーでも「頑張らずに使える」という印象だ。よく「iPhone 3Gはエンターテインメント・スマートフォンだ」という声が耳にするが、BlackBerry Boldは「普通の人のための実用性を重視した着飾らないスマートフォン」という位置付けと言えるのかもしれない。
もちろん、BlackBerry Boldは通常のFOMA端末に比較すると、ワンセグやおサイフケータイがなく、メールで絵文字を使うこともできないなど、さまざまな違いがある。そのため、筆者もメインで利用するNTTドコモの回線契約をBlackBerry Boldに完全移行できないのだが、仕事で使う上での実用性は高く、2台目に持つ端末としては、まず最初に選びたい端末と考えている。
ただ、前述のように、BlackBerry Internet Serviceにリモートワイプがなかったり、アドレス帳の連携が日本ケータイユーザーの利用環境にうまくマッチしない面があるなど、日本のケータイ市場で展開していくうえでの課題もいくつか残されている。NTTドコモとRIM社には、ぜひ、日本のユーザーのニーズにもマッチした進化やサービス提供を期待したい。
最後に、宣伝をひとつ(笑)。本稿で取り上げたBlackBerry Boldの使い方をわかりやすく解説した「できるポケット+ BlackBerry Bold」が4月17日に発売される。BlackBerry Boldに購入した方はもちろん、興味を持っていて、これから購入を検討している方は、ぜひ、ご一読いただきたい。
■ URL
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/080929_00.html
ニュースリリース(Research In Motion)
http://press.rim.com/release.jsp?id=1863
製品情報(NTTドコモ)
http://smartphone.nttdocomo.co.jp/blackberrybold/
製品情報(Research In Motion)
http://ap.blackberry.com/jpn/devices/blackberrybold/
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(法林岳之)
2009/04/10 12:43
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