今年2月、スペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress 2009で公開され、注目を集めていた東芝製のWindows Mobile端末「TG01」だが、国内向けモデルがNTTドコモのPROシリーズ「T-01A」として、発表された。ひと足早く、実機を試用することができたので、そのファーストインプレッションをお伝えしよう。
■ いつでもインターネットにアクセス
ウィルコムのW-ZERO3に始まり、昨年のiPhone 3G、今年のBlackBerry Boldなど、ここ数年、国内のケータイではスマートフォンと呼ばれるジャンルの端末が注目を集めている。通常のケータイと違い、パソコンとの連携が強化され、機能を自由にカスタマイズができるなどの魅力を持つ。
その一方で、昨年からはWindows XPなどを搭載したネットブックも人気を集めている。5万円前後から購入できるという手頃な価格も魅力だが、コンパクトなボディながら、通常のパソコンと変わらない環境を外出先でも利用できるなどのメリットを持っており、ビジネスユーザーだけでなく、幅広いユーザー層に受け入れられている。
今回発表されたNTTドコモの東芝製端末「docomo PROシリーズ T-01A」は、開発元の東芝としてはスマートフォンとネットブックの両方のメリットを取り入れた「MID(Mobile Internet Device)端末」と呼ばれる新しいカテゴリーに位置付けている。常に持ち歩くことができ、ポケットにも入れられるサイズでありながら、フルサイズのインターネットにすぐにアクセスすることができ、パソコンに近い快適さでインターネットを利用できることを目指した端末として、開発されている。
T-01AはスマートフォンでおなじみのWindows Mobile 6.1 Professionalを搭載しているが、MID端末という新しいカテゴリーを目指そうとした取り組みは、そのサイズがスペックからもうかがえる。
ディスプレイは4.1インチのフルワイドVGA液晶が採用されている。通常のケータイでは3.5インチ程度が最大サイズだったが、それよりもさらにひと回り大きなディスプレイで、Webページの閲覧やメールの作成、オフィス文書の編集、地図アプリなどを快適に利用できるようにしている。
液晶ディスプレイは抵抗膜式のタッチパネルを採用しており、基本的な操作をタッチ操作のみで利用できるようにしている。本体には3軸のモーションセンサーも内蔵されており、設定を変更することにより、端末を横に傾ければ、画面表示を横向きに切り替えることも可能だ。
スペック面で、もうひとつ特徴的なのは、CPUに最大1GHzのクロック周波数で動作する米クアルコム製「SnapDragon」を採用していることだ。通常、ケータイに搭載されるCPUは300~500MHz程度のものが採用されているが、T-01Aに搭載されるSnapDragonシリーズ「QSD8250」はCPUコアに、その約2倍以上のクロック周波数で動作させることができる「Scorpion」が採用されている。Windows Mobile端末というと、通常のケータイなどに比べ、今ひとつ操作感に快適さが欠けていた印象もあったが、T-01Aでは高速なCPUが搭載されたことで、操作ももたつくことがほとんどなく、快適に操作ができる。
ボディは液晶ディスプレイを前面にレイアウトしたフラットなストレートタイプを採用する。端末を単体で見ると、iPhone 3Gなどと近いような印象も受けるが、実際のサイズはiPhone 3Gと比べ、幅で9mm、高さで14.5mmの違いがあり、ひと回り大きい印象だ。しかし、厚さは1cmを切った9.9mmに抑えられており、手に持った印象はかなりスリムだ。
本体左側面には電源ボタンと音量スイッチ、右側面にはmicroUSB端子、カメラキーを備える。micro USB端子は端末の充電に利用するほか、パソコンとの接続にも利用する。パッケージには従来のFOMA用ACアダプタをmicroUSB端子に接続する変換アダプタが付属する。
背面にはオートフォーカス対応3.2Mピクセルカメラを内蔵する。フラットに仕上げられた背面パネルは、側面のmicroUSB端子のカバーを開けると、縦方向にスライドさせて、外すことができる。内部には1000mAhの電池パックが装着され、これを外すことで、FOMAカードスロットやmicroSDメモリーカードスロットにアクセスできる。
■ フル画面ディスプレイを活かすユーザーインターフェイス
前述の通り、T-01AはWindows Mobile 6.1 Professionalを採用し、1GHzで動作するCPUのSnapDragonを搭載するが、ユーザーインターフェイスについても新しい取り組みを採用することで、従来のWindows Mobile端末とは違った快適な操作環境を実現している。従来のWindows Mobile端末では、基本的にスタートメニューから操作するか、一部の端末で独自のシェル的なアプリケーションランチャを採用していたが、T-01Aでは画面に三分割した縦方向の帯状のメニューを並べた「ストライプメニュー」を採用する。
ストライプメニューは「Tools」「Setting」「Player」「Web」「Mail」「Applications」「Phone」「Data Folder」のグループに分かれており、これらの内、待受画面には3つのグループが縦のストライプに分かれて表示され、横方向にタッチしながらスライドさせることで(ドラッグ)、パネルがめくられるように、次のストライプが表示される。ちょうどブラインドや回転パネル式の広告に似たようなイメージで、画面が軽やかに切り替わる。それぞれのストライプには3つのアイコンが表示されており、縦方向にスライドさせることで、合計9個までのアイコンを表示させ、アプリケーションや機能を呼び出すことができる。ストライプメニューに表示するアイコンは、ユーザーが自由にカスタマイズすることが可能で、各グループのカラー表示も3種類のカラーバリエーションが用意される。
ストライプメニューが表示された待受画面には、時計やカレンダー、ToDoリスト、お知らせなどを表示できるGadget機能も用意される。時計については、海外での利用なども考慮し、2都市の表示が可能で、お知らせ表示は未読メールや不在着信、アラーム設定などを表示する。Gadgetの表示は待受画面で、画面上部右側付近をタッチすると、アイコンが表示され、それぞれのアイコンをタッチすることでGadgetを切り替えることが可能だ。
ユーザーインターフェイスにおけるもうひとつの特徴は、ディスプレイ下に装備された「フローティングタッチパッド」だ。T-01Aには4.1インチのフルワイドVGA液晶という大画面ディスプレイが搭載されているが、通常のWebページを閲覧中、特定の場所を拡大したり、Webページ全体を見るために縮小表示をしたいといったことがある。このようなとき、ディスプレイ下に装備されたフローティングタッチパッドを左右に操作することで、Webページの拡大や縮小を容易にできるようにしている。ちなみに、T-01Aのディスプレイが抵抗膜方式のタッチスクリーンであるのに対し、フローティングタッチパッドは静電容量式を採用する。フローティングタッチパッド左側にあるホームのアイコンをタッチすると、NFWidgetPlayerが表示される。これはACCESS社標準のWidgetで、標準では世界時計や電卓、カレンダー、Google Search、メモなどが用意されている。
データ通信については、HSDPA方式による下り方向で最大7.2MbpsのFOMAハイスピードに対応するほか、GSM/GPRSにも対応し、国際ローミングも可能だ。国内での利用については、NTTドコモが提供する「Biz・ホーダイ ダブル」を契約することで、端末のみでのパケット通信を定額で利用できる。IEEE802.11b/g準拠の無線LAN、Bluetooth2+EDRにも対応しており、公衆無線LANサービスやオフィスの無線LAN環境でも利用することができる。それぞれの接続については、ワイヤレスマネージャでon/OFFを切り替えることができる。
スマートフォンを利用するうえで、通常のケータイのネットワークサービスの対応が気になるところだが、留守番電話については[設定]に項目が用意され、iモードメールについては「iモード.net モバイルモード」のメニューが用意されている。利用制限についてもマナーモードや公共モードが利用可能だ。
アプリケーションについては、Windows Mobile 6.1 Professional標準搭載のもののほかに、国語/英和/和英の辞書、カメラで撮影した静止画や動画の編集が可能なArcSoft社製「PhotoBase」及び「VideoEditor」、内蔵GPSで地図や周辺検索が可能なゼンリン製ナビゲーション「いつもNAVI」、マルチメディア系多機能アプリケーション「Kinoma Play」などがプリインストールされている。
メールについては、POP3/SMTP形式のメールのほか、SMSが利用可能だ。日本語入力はQWERTY配列のソフトキーのフルキーボード、通常のケータイと同じダイヤルボタンのソフトキーを使ったマルチタップ入力に対応し、予測変換などの機能も備える。入力についてはタッチ操作なので、ある程度の慣れは必要だが、高速CPUのSnapDragonの効果もあり、従来のWindows Mobile端末に比べると、かなり快適に使うことができる。
■ 快適なネット環境を実現できる新カテゴリーの端末
国内市場ではケータイの高機能化が進む一方、モバイル環境についてはスマートフォンへの関心の高まり、ネットブックの台頭など、フルサイズへのインターネットをいかに快適に使えるかにも注目が集まっている。
今回紹介したT-01Aは、言わば「インターネットを快適に使うために開発された新カテゴリー端末」ということになる。高速な1GHzのCPUは今までのWindows Mobileのイメージを大きく変えてしまうほどの快適性を生み出し、4.1インチという大画面のフルワイドVGA液晶を搭載しながら、1cmを切るという超スリムボディを実現し、ポケットに入れて持ち歩くことができるインターネット端末に仕上げられている。
東芝はここ数年、デザインを重視したケータイが増えてきているが、T-01Aはデザイナーのこだわりとエンジニアの技術の追求によって生み出された「エンジニアモデル」だとしている。まだ、製品の発売は少し先になる予定だが、従来のスマートフォンとは一線を画した期待値の高い端末であることは間違いない。
■ URL
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/pro/t01a/index.html
製品情報(東芝)
http://www.toshiba.co.jp/product/etsg/cmt/docomo/t-01a/t-01a_menu.htm
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/090519_00.html
ニュースリリース(東芝)
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2009_05/pr_j1901.htm
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(法林岳之)
2009/05/19 22:54
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