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薄さを極めたスーパースリム「P504i」
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Pシリーズの逆襲が期待できるP504i
NTTドコモの端末ラインアップの中で、常にNシリーズとともに双璧をなしてきたPシリーズ。昨年のシェア争いではやや陰りが見られたが、P211i以降、急速に巻き返しを狙っている。そして、Pシリーズのいよいよ真打ちとも言える「P504i」が登場した。筆者も機種変更で端末を購入したので、レポートをお送りしよう。
「折りたたみデザイン」ながらも驚異の薄さを実現
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NTTドコモ/松下通信工業『ムーバ P504i』。サイズ:50(W)×100(H)×16.8(D)mm(折りたたみ時)、99g。オニキスブラック(写真)、グレイスシルバー、シルキーピンクをラインアップ。
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この連載の中で、過去にも何度も触れてきたが、「折りたたみデザイン」の端末はコンテンツやメールの閲覧に適した大画面液晶を搭載できるというメリットを持つ。わずか1~2年ほどの間に、これほどまでに折りたたみデザインが普及するとは、数年前に誰も予想しなかっただろう。
これだけ支持された折りたたみデザインだが、デメリットがないわけではない。たとえば、折りたたんだときの厚さはストレートタイプのときに比べ、やや厚くなる傾向にある。折りたたみデザインの端末は「胸ポケットに入らない」「上着のポケットで落ち着かない」といった指摘が男性を中心に早くから出ていたが、折りたたみデザインをいち早く支持したのが女性だったため、厚さに対する不満はそれほどクローズアップされていない。ちなみに、今さら説明するまでもないが、多くの女性は端末をカバンに入れて持ち歩くことが多いため、現状程度の端末の厚さにはそれほど大きな不満を持たないからだ。
今回紹介する松下通信工業製「P504i」は、この厚さに対する不満点を解消し、新しい折りたたみデザインの流れを感じさせる端末だ。折りたたみデザインの端末としては、驚異的とも言える「16.8mm」という薄さを実現し、他の504iシリーズのモデルと一線を画す存在感を示している。メカニズム的にはワンプッシュオープン機構を採用することにより、折りたたみボディをカンタンに開けられるようにするなど、新しい工夫も取り入れている。
また、同社製「Pシリーズ」といえば、NTTドコモの端末ラインアップにおいて、NEC製「Nシリーズ」と双璧をなしてきたブランドだ。しかし、iモード登場以降、Pシリーズの神通力は徐々に弱まり、昨年はついにシェアでもNECに首位の座を明け渡すことになってしまった。特に、503iシリーズでは不具合という残念なアクシデントもあり、一部の口の悪いファンから「Pもここまでか」という声も聞かれたくらいだった。しかし、今年はじめに発売されたP211iでは復活の兆しを見せ始めており、今回のP504iは復活の真価が問われる端末ということになる。「Pシリーズの逆襲」ははたして本当に可能なのか。端末の出来を見ながら、その行方を占ってみよう。
薄さと剛性を兼ね備えた折りたたみボディ
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とにかく薄いボディ。両面に液晶ディスプレイがあることを考えると、驚異的とも言える。
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製品のスペックや細かい仕様については、NTTドコモや松下通信工業の製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が実際に試用した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。
まず、ボディは折りたたみデザインのボディを16.8mmと極めて薄く仕上げているのが特長だ。Pシリーズの折りたたみデザインはP209iSに始まり、昨年のP503iSに継承されているが、P503iSは約27mmとボディが厚かった。この点は松下通信工業としても反省していたようで、P504iの開発では薄さの追求を強く意識したという。薄さの追求はP503iSの反省だけでなく、ストレートデザインを好むユーザーの取り込みも考えたそうだ。ちなみに、過去に本連載で取り上げた端末を調べてみたところ、NEC製「N209i」が17mmと最も薄く、次いでDDIポケット向けの九州松下電器製「KX-HV200」の19mm、NEC製「FOMA N2001」の20mmの順になっている。カタログスペックで見る限り、N209iとの差は1mm以下だが、N209iは液晶ディスプレイ背面側にアンテナ格納部が出っ張っていたため、実際に持った感覚はP504iの方がはるかに薄い。比喩としてはあまり適切ではないかもしれないが、P504iは板チョコのような薄さという印象だ。
松下通信工業ではP504iの薄さを追求する上で、いくつか新しい工夫を試みている。たとえば、本体右側面にはイヤホンマイク端子が装備されているが、一般的な円形のプラグではなく、FOMA P2101Vに採用されている薄型プラグを採用している。このプラグにはオプションで販売されている「平型スイッチ付イヤホンマイクP01」が装着可能だが、既存のイヤホンマイクも「イヤホンジャック変換アダプタP001」を組み合わせることで利用できる。
また、ヒンジの部分についてはP503iSなどのものよりも細くなっているが、同社によれば、P503iSのものより細くしながらも高い強度を実現しているという。さらに、液晶ディスプレイ部が薄くなっているが、ボディにマグネシウム合金を利用することにより、これもP503iS以上の強度を確保しているそうだ。
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本体左側面のヒンジ部横にあるワンプッシュオープン機構のボタン。KX-HV200のボタンよりも柔らかい印象だ。
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P504iのもうひとつの特長とも言えるワンプッシュオープン機構は、ヒンジ部左側のボタンを押すことで、カンタンに折りたたみボディを開くことができる。P504iは元々、ワンプッシュオープン機構を採用する予定がなかったが、ボディの薄型が可能になり、実際の使い勝手を向上させるために、開発途中から機構として加えられたそうだ。
同様の機構は九州松下電器製のDDIポケット向け端末「KX-HV200」でも採用されている。同じ松下電器グループということもあり、同じメカニズムを継承したと考えていたが、実はまったく別のメカニズムを採用しており、特に関連性はないそうだ。実際の使用感はKX-HV200がやや固めのボタンでカチッと約90度まで開くの対し、P504iのボタンはややソフトで、一度に約110度くらいまで開く。最大開度まで開くときの操作感もKX-HV200よりやわらかい印象だ。
液晶ディスプレイは176×132ドット/6万5536色表示が可能な2.1インチのTFTカラー液晶を採用し、背面には『プライベートウィンドウ』と呼ばれるサブディスプレイも備える。メインの液晶ディスプレイは最新モデルの中でも標準的な解像度であり、視認性や発色にも不満はない。プライベートウィンドウはP503iSのものより縦方向に広くなっているが、表示できる情報が多彩になったことも見逃せないポイントだ。特に、iアプリ待受画面にも対応しているため、iアプリによってはプライベートウィンドウにも何らかのキャラクターなどを表示することができる。ちなみに、プリインストールされているiアプリもプライベートウィンドウに対応しているものがある。
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176×132ドット表示が可能な液晶ディスプレイは、今年の標準的なスペック。
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プライベートウィンドウ対応iアプリではこのようなキャラクターも表示される。
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ボタン類はP211iと同じ系統のレイアウトを採用。キータッチも良好だ。
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ボタン類は方向キーと決定ボタンを組み合わせたコマンドナビゲーションボタンを中央上部に配し、左上に[電話帳]ボタン、右上に[リダイヤル・クリア]ボタン、左下に[メール]ボタン、右下に[改行・問い合わせ]ボタンをレイアウトしている。コマンドナビゲーションボタンの左右上にある2つのキーは従来のPシリーズ端末同様、場面によって割り当てられる機能が切り替わる仕様になっている。
また、ボディ回りで特徴的なのはP211iと同じように、液晶ディスプレイ下にスピーカーを内蔵するフロントスピーカー構造になっている点だ。実際に着信メロディなどを聴いてみると、背面にあるときよりも自然に着信メロディを楽しめる印象だ。ちなみに、ボディを閉じたときでも聞こえるように、背面の[メモ]ボタン上にもスピーカーのメッシュカバーが装備されている。
ところで、端末そのものにはあまり関係ないが、Pシリーズの折りたたみデザインの端末では従来から本体を立てかけるタイプの充電台が採用されており、今回のP504iにも同様の充電台が採用されている。折りたたみデザインの端末の場合、本体をそのまま置く平らなスタイルの充電台が一般的だが、実は机の上に置いてみると、意外に邪魔なのだ。その点、P504iのような充電台は設置スペースも少なく、着脱も容易で使いやすい。Pシリーズの折りたたみ端末の隠れた魅力のひとつと言えるだろう。
「育てて!いぬともP」は遊ぶべし
一方、機能面については504iシリーズ共通の機能を搭載しながら、P503iSの機能をベースにさらなる強化が図られている。
まず、個人的に注目したのは、購入直後の設定に便利な「カンタン設定」だ。現在の携帯電話には多彩な機能が搭載されているが、購入直後に設定したい機能もある。たとえば、ボタン確認音や発信者番号通知、着信音、待受画面などがこれに該当するが、こうした最低限の機能をパソコンのウィザード形式と同じように、質問に答えながら設定できるようにしている。同様の取り組みはソニー・エリクソンのSOシリーズでも試みられているが、P504iは設定できる項目が多く、かなり実用的になっている。
こうした取り組みは初心者、特に中高年層を意識したものと考えられがちだが、筆者や編集スタッフのような慣れたユーザーにとっても各機能を呼び出しながら初期設定を行なうのは面倒であり、そういう意味から考えても便利な機能と言えるだろう。
また、Pシリーズは以前から日本語入力が今ひとつだった印象があるが、P504iではオムロンソフトウェアの「モバイルWnn」を採用しており、一度使った単語であれば、一文字目の入力だけで変換候補がリストアップされる「インテリジェント変換」が搭載されている。辞書については標準辞書に加えて利用できる辞書ダウンロードにも対応しており、同社の公式サイト「P-SQUARE」で方言やスポーツ用語などの辞書が公開されている。
画面周りはPシリーズ特有のアイコンメニューを採用しているが、機能を選んだ先の画面の一部もアイコンメニューになっており、視覚的に操作しやすくなっている。P211i同様、メニューアイコンが2種類から選べるが、気分転換にはいい機能なので、できれば、何種類も保存できるようにして、ユーザーがもっとたくさんのメニューアイコンを選べるようにして欲しい。メール画面などでの表示フォントについては10/12/16ドットフォントの3種類から選ぶことが可能だ。P211iで今ひとつと評価した標準で提供されている壁紙もバリエーションが増えている。
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「カンタン設定」には3つの項目が用意されている。いずれも初期段階での使用頻度が高い機能が設定できる。
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質問に答えながら設定するウィザード形式を採用。説明も画面に表示されるので、初心者にもわかりやすい。
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意外に楽しい「育てて!いぬともP」。思わず、毎日、世話をしてしまう。
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また、504iシリーズの共通仕様である「待受iアプリ」だが、この連載で紹介した504iシリーズでは唯一、起動時間を1~15秒まで5段階で設定することが可能だ。この機能は待受Javaアプリをいち早く開始していたJ-フォン端末の一部でも採用されており、実用面を考えれば、個人的には必須機能と見ている。
P504iにプリインストールされている2種類の待受iアプリの内、個人的に気に入ったのが「育てて!いぬともP」だ。NTTドコモの夏野氏が504iシリーズの発表会で、「これ、楽しいですよぉ。ボクのところのワンちゃんは……」などと楽しげに話していたが、実際に遊んでみるとなかなか楽しい。購入直後から遊び始め、今では毎日、欠かさずに愛犬の世話(?)をしている(笑)。すでに、最後まで遊ぶことができた(しかも100点で終了)ので、今度は有料版にチャレンジしようかと考えているくらいだ。
ちなみに、同じ504iシリーズではN504iがイルカと遊べる「Happy Dolphin」をプリインストールしているが、個人的には「育てて!いぬともP」の方が楽しめた印象だ。好みの問題もあるかもしれないが、今後はどんなiアプリがプリインストールされているのかも端末選びの重要なポイントになりそうだ。
P504iのiアプリの環境についてはベンチマークテストこそ行なっていないが、他の504iシリーズに比べ、処理が速いという印象だ。松下通信工業によれば、iアプリのためのハードウェアを追加したわけではなく、内部的なソフトウェアのみで高速化を実現したそうだ。
この他にもメールの「フォルダ管理」、電話帳で指定した人のメールを見せない「シークレットメール」、頻繁に使う機能を8件まで登録できる「プライベートメニュー」など、使い勝手の面も改良されている。
名機を予感させる完成度は「買い」
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P503iS(右)の反省を活かしたP211i(左)。P504i(中央)はこれらをさらに進化させて完成度を高めている。
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さて、最後にP504iの「買い」を診断してみよう。Pシリーズはiモード開始以前、常にトップシェアを確保していた人気ブランドだったが、iモード開始以降は「折りたたみのN」などにシェアを奪われた形で、端末そのものも今ひとつ話題性に欠ける面があった。しかし、今回のP504iは薄さやワンプッシュボタンという個性を持ちながら、内容的にもかなりブラッシュアップされており、使いやすく、持ってうれしい端末に仕上がっている。特に、スペック的な面だけを追うのではなく、「カンタン設定」や「待受iアプリ起動時間設定」、「辞書ダウンロード」のように、本当にユーザーが役立つ機能をきちんと搭載してきたことは評価に値する。今年はじめに発売されたP211iもなかなかの出来だったが、P504iはPシリーズの歴史の中で名機と言われたモデルに匹敵するレベルの完成度と言っても過言ではないだろう。
まず、P504iをおすすめしたいのは、折りたたみボディの厚さに疑問を持つユーザーだろう。特に、普段から背広を着るようなビジネスマンには、ぜひ店頭でその「薄さ」を実感してもらいたい。もちろん、女性もカバンの中でかさばる折りたたみボディが気になるのなら、要チェックの存在だ。また、昔はPシリーズを使っていたのに、最近は他のシリーズに「浮気」をしているようなユーザーにも試してもらいたい。
本連載ではすでに三菱電機製のD504iを除く3つの504iシリーズを紹介してきた。あくまでも個人的な見解でしかないが、現時点ではP504iがベストチョイスだと見ている。N504iの「高解像度液晶とT9入力」、SO504iの「POBox&センタージョグ」、F504iの「セキュリティ」なども魅力的だが、P504iは持つうれしさのあるデザインとサイズを実現しており、機能面も満足できる仕上りとなっている。ただ、こうした細かい部分を含めた仕上りの良さはなかなかユーザーに伝わりにくい面もあるため、今後は松下通信工業やNTTドコモがしっかりとプロモーションを進めていく必要があるだろう。「Pシリーズの逆襲」が成功するか否かは、そこに掛かっているのかもしれない。
・ ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/02/whatnew0603.html
・ 製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/504i/p504i/p504i.html
・ ニュースリリース(松下通信工業)
http://www.mci.panasonic.co.jp/nws/article/2002_20.html
・ 製品情報(松下通信工業)
http://www.p-keitai.net/main.html
・ P504i(オニキスブラック)
・ ドコモ、ワンプッシュオープンボタン付きの「P504i」
・ ドコモブースは504iシリーズとSH251iで大盛況
・ スリムな折りたたみボディを実現した「P211i」
・ ようやく発売された第3の折りたたみ「P503iS」
(法林岳之)
2002/07/30 11:29
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