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ドコモの“実使用時間”を最新3機種で比較

ドコモの“実使用時間”を最新3機種で比較

輝度を統一、SH-01F、F-01F、SO-01Fで検証

 スマートフォンの普及にあわせて、ユーザーの間で大きな不満になっていることの1つは、電池の持ち時間だろう。スマートフォンの省電力化や電池の大容量化は現在も注目を集める要素だ。

 そんなユーザーの不満や不安に応える形で、NTTドコモは2013年の夏モデルから、「実使用時間」という指標を公表している。ドコモ広報部によれば、「実使用時間」の測定方法やその内容について、Webサイトで案内されている内容より詳しいことは非公開とのことで、詳細は不明だが、条件を揃えて各機種を測定することで、実利用の場面に近い数字を示しているのは参考になる。

 一方で、多くのスマートフォンを見ていると、特に最近のモデルでは、各メーカーが省電力機能を非常に細かく作りこんでいることが分かる。液晶パネルやチップセットなどハードウェアの省電力機能を活かしたものからソフトウェア制御まで、さまざまな取り組みが行われており、メーカーの技術力やノウハウが試される新たな分野となっている。

 そこで、今回はドコモが公表している測定基準を参考に、編集部で測定できる範囲でルールを作り、3機種を同時に使用して「実使用時間」を測ってみることにした。内容はドコモの測定方法をイメージしているが、3機種同時ということで、利用時間の絶対値よりも、条件を揃えた際の比較を重視したものになっている。

「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」「Xperia Z1 SO-01F」「ARROWS NX F-01F」の3つを用意。輝度の測定器も準備した

 今回選んだ機種は、シャープ製の「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」、富士通製の「ARROWS NX F-01F」、ソニーモバイル製の「Xperia Z1 SO-01F」の3つ。

 「SH-01F」は省電力駆動で有名なIGZO液晶パネルを搭載しており、ドコモが公表している実使用時間は98.9時間、搭載されるバッテリー容量は3000mAhだ。「F-01F」も「SH-01F」と同様に「余裕の3日間」と謳われている機種で、省電力駆動が可能な「WhiteMagic ディスプレイ」がポイント。ドコモ公表の実使用時間は97.1時間で、バッテリー容量は3200mAhだ。「SO-01F」は人気機種ということで選んでおり、ドコモ公表の実使用時間は約57.7時間、バッテリー容量は3000mAhとなっている。

ディスプレイ輝度を一定に揃えて比較

 ディスプレイの輝度を自動調節する機能は初期設定でオンになっているが、各モデルで輝度調節の動きや考え方は異なる。ユーザーの使い勝手としては同じように見えることが大事だろうということで、今回は初期設定でオンになっている自動調節機能をオフにして測定している。“実利用環境”という考えからは少し離れてしまうが、ソフトウェアではなく、液晶パネル自体が持つ省電力性能は駆動時間への影響も大きいと考えられるので、いわばディスプレイの“素の性能”のような部分を明らかにしようという試みだ。

 しかし、事前の考えが甘かったため、ここで問題が発生する。3機種はいずれも端末をリセットし、購入直後の状態でソフトウェア更新などを適用して、測定用として準備したのだが、ディスプレイの明るさの設定で自動調節をオフにすると、「SH-01F」だけ真っ暗になってしまったのだ。これは、初期設定の輝度がほぼ下限に近い設定だったためで、布団の中で見るのにちょうどいいという明るさだった。「SH-01F」ほどではないにしても、ほかの2機種も自動調節機能をオフにした直後の輝度設定は異なり、輝度の自動調節をオフにしただけでは比較が難しいことが分かった。

室内にて、ディスプレイの「明るさ自動調整」がオンの状態。端末はリセット後の初期状態だ
ディスプレイの「明るさ自動調整」をオフにすると、「SH-01F」だけ輝度設定のスライドがほぼ左端になってしまった

 そこで、以下の実使用時間の比較では、最初に液晶ディスプレイの輝度を計測し、数値を揃えた上で実験することにした。やや大掛かりになってしまったが、測定器を用意して画面輝度を測定し、同じ輝度になるように調節、「同じ輝度における実使用時間」を比較した形だ。この関係で、エコモードといった省電力モードもオフにしている。

 なお、輝度については480cdで統一している。これは、用意した3機種の最高輝度を測定したところ、「SO-01F」の最高輝度が3機種の中で最も低く、480cdだったためだ。印象に個人差はあるが、480cdという輝度は、明るい室内では眩しいほどでもない、という印象だ。

用意した「SO-01F」の最高輝度は480cd。「F-01F」は800cd、「SH-01F」は525cdだった

1日あたり計約80分間の利用

 ドコモが公表している測定内容は、「Web閲覧などを約40分、メールや電話を約20分、ゲームや動画、音楽を約15分、その他(アラームなど)を約5分の1日あたり計約80分間の利用」というものだ。ドコモ広報部に聞いたところ、「ゲームや動画」などと簡単に書かれているものも、実際には細かく内容が決まっているとのことだが、その内容は非公開とのこと。ゲームなどのコンテンツは、ユーザーの利用動向を反映したタイトルを選んでおり、今後は変更される可能性があるともしているが、少なくとも2013年の夏モデルと冬モデルについては、すべて同じ条件で計測されているという。通信方式や測定場所についても測定の条件は揃えられ、内容は非公開だが、「移動もしているようだ」とのことだった。

 編集部ではこのドコモの測定内容を手本に、1日あたり計約80分間の利用方法を決めた。Webサイトの閲覧では本誌のWebサイトを表示し、メール送受信では本文の内容も統一するなど、3機種で操作方法などを含めて条件を揃えている。ゲームには「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)を選んだ。通信方式はLTE(Xi)のみだ。

 朝の9時から夜の9時にかけて、これらの利用を分けて行い、1日の使用時間が計80分になるようにした。メールやゲームなど、各操作が終わった段階で電池残量の%表示をメモし、0%になって電源が切れた時刻をチェック、計測開始からの合計駆動時間を出した。

3機種を同じ条件で使用

 下記の表で電池残量は、それぞれの操作開始時の数値。21時以降は待受画面で翌朝9時まで放置した。操作時刻と内容は、抜粋して表記している。2日目以降は1日目の内容の繰り返し。

【1日目】
時刻操作主なアプリSH-01FF-01FSO-01F
09:00~Eメール操作docomoメール100%100%100%
11:00~カレンダー操作docomoカレンダー99%99%99%
12:00~動画、音楽の視聴YouTube、メディアプレイヤー97%98%97%
12:30~通話、Web閲覧電話、LINE、ブラウザ95%96%95%
15:00~Eメール操作docomoメール87%89%84%
18:00~Web閲覧ブラウザ85%87%81%
18:30~通話、ゲームなど電話、パズドラ82%85%77%
20:00~Eメール操作docomoメール78%81%74%
20:30~通話、Web閲覧LINE、ブラウザ77%80%72%
21:00Eメール操作docomoメール72%75%65%
【2日目】
時刻操作SH-01FF-01FSO-01F
09:00~1日目と同じ69%72%62%
21:0041%47%26%
【3日目】
時刻操作SH-01FF-01FSO-01F
09:00~38%45%23%
18:26ゲーム操作中20%29%0%
21:0010%20%-
【4日目】
時刻操作SH-01FF-01FSO-01F
09:00~7%17%-
12:30Web閲覧中0%10%-
18:31ゲーム操作中-0%-

1位は「F-01F」

 実験の結果、1位が「F-01F」(81.5時間)、2位が「SH-01F」(75.5時間)、3位が「SO-01F」(57.4時間)になった。ドコモ公表値とは測定内容が違うので、ドコモ公表値との駆動時間の比較は難しいが、ディスプレイの輝度を固定した比較実験ではWhiteMagicディスプレイと3200mAhのバッテリーを擁する「F-01F」に軍配が上がった。ドコモ公表値と順位が変わってしまったのは、輝度に対する省電力性能などが影響しているものと考えられる。

 「SO-01F」については、ドコモ公表値と近い結果になっている。これは、液晶パネルをはじめ、端末内部のさまざまな省電力機能がほかの2機種と比べて単純になっているため、測定内容による差が出にくく、結果的にドコモ公表値と近い数字になったと考えられる。

【電源が切れるまでの時間】
SH-01FF-01FSO-01F
ドコモ調べ約98.9時間約97.1時間約57.7時間
編集部調べ75.5時間
(75時間30分)
81.5時間
(81時間30分)
57.4時間
(57時間20分)

 注意してほしいのは、これらはあくまで一定の条件に揃えて比較したものであり、ユーザーや読者の手元で、実験結果の実利用時間を必ずしも再現できる訳ではないという点だ。今回は3機種同時ということで制約もあり、端末を移動させず、会議室で計測している。輝度に対する性能や、3機種の比較にポイントを絞った格好だ。

 スマートフォンの電池が持たないと叫ばれ始めてから月日が経ち、ディスプレイの省電力性能に代表されるようなハードウェアからソフトウェア制御まで、駆動時間を長くする技術やノウハウはかなりの勢いで進化している。また、従来の慣習にとらわれず、ドコモが「実使用時間」という形でユーザーの不満や不安に応えようとしているのは評価できる取り組みだ。今回の実験結果はドコモ公表値とは順位が異なっているが、新モデル購入時の参考にしてほしい。

太田 亮三