新世代の通信サービス「AXGP」先行レポート
SoftBank 4Gで採用、「次世代PHS」を受け継ぐ新データ通信方式
ソフトバンクグループのWireless City Planning(ワイヤレス シティ プランニング、WCP)が2012年2月以降に予定する高速データ通信サービスは、新たな通信方式であるAXGP方式を採用し、下り最大100Mbpsを超える高速通信が特徴だ。一般ユーザー向けのサービス開始に先駆けてテスト機を利用する機会を得られたので、その使用感をレポートする。
■ウィルコムの「次世代PHS」を受け継ぎ発展させた「AXGP」
WCPが採用する高速データ通信の技術「AXGP」は、もともとはウィルコムが総務省から割り当てられた2.5GHz帯を利用し、「次世代PHS」として展開する予定だった技術だ。その後次世代PHSは「WILLCOM CORE XGP」という名称で一部ユーザーを対象としたエリア限定サービスを展開していたが、ウィルコムの会社更生手続きを受けてXGP事業はソフトバンク子会社の「Wireless City Planning」が継承。WCPではXGPを発展させた通信形式「AXGP」としてサービスを提供する。
AXGPは、PHSの特徴だった“マイクロセル”を継承しつつも、次世代PHSとして開発されたXGPに手を加えて、TD-LTE方式との互換性を持つようになった。中国やインドをはじめ、世界各地での拡大が見込まれるTD-LTE方式と互換性を持つことで、国際的な展開が期待できるというメリットが期待される。
■当初は最大76Mbpsでサービス開始。第1弾製品はモバイルルータ
AXGPは現状のところ、旧ウィルコムのXGP試験サービスを利用していたごく一部ユーザー向けにサービスが提供されているが、ソフトバンクモバイルがMVNOとして2012年2月以降には一般ユーザー向けサービス「SoftBank 4G」を開始する予定だ。通信速度は下り最大110Mbps、上り最大15Mbpsと、下り速度に関しては100Mbpsを超える速度が特徴となっている。
サービス開始時には、セイコーインスツル(SII)製のモバイルルータ「101SI」が同時に発売される予定。ただし、101SIはサービスの理論値である下り110Mbpsに対して下り最大76Mbpsとなっており、サービス開始段階ではフルスペックでは提供されない。AXGP対応端末はその後も提供予定で、2012年中にはAXGP対応のスマートフォンも投入予定とされている。なお、「101SI」はソフトバンクモバイルの「ULTRASPEED」(下り最大42Mbps、上り最大5.7Mbps)をサポートする。
ファーウェイ製のUSBデータ通信カード。テスト用で、販売予定はない | |
なお、今回利用テストに利用するファーウェイ製のUSBスティック型端末はテスト用の先行的な機種となっており、実際の販売はない。あくまでユーザー向けにはモバイルルータ型の「101SI」が第1弾製品になる。また、スペック面では101SIと同様、下り速度は最大76Mbpsと抑えられている。
発売予定のない製品ながら製品スペックを簡単に簡単に触れておくと、本体は両側面にそれぞれSIMスロットとmicroSDカードスロットを搭載。ソフトウェアはゼロインストールに対応しており、USBポートに接続することでソフトウェアのインストール画面が起動、ファーウェイ製のデータ通信機器でおなじみのユーティリティがインストールされる。
端末を装着するとインストーラーを起動できる | ファーウェイ製のユーティリティ |
■エリアは山手線圏内が中心。通信速度は実測で40Mbps超を実現
エリアはまだサービス提供前につき拡張段階であり、現時点のテストで利用できるのは山手線内が中心。今回は山手線で乗降者数の多い駅からいくつかをピックアップ、駅前を中心に測定を行った。
測定に利用したPCはCPUにCore i7-2677M 超低電圧版を搭載したASUSのウルトラブック「ZENBOOK UX21E」。測定サイトは「speed.rbbtoday.com」を利用し、各エリアで5回ずつ測定を行い、その平均値を算出した。
単位はMbps、赤字はその場所での最高値 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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結果は非常に高速。屋外測定かつまだサービス提供されていないために他のユーザーもほぼ存在しておらず、高速な結果が出やすいという要素はあるものの、どのエリアでも数十Mbpsは超える結果となり、有楽町では下りが40Mbpsを超えることもあった。
室内に関しても、四方に窓がない見通しの悪い場所ながらも有楽町駅前のビル内では30Mbps以上の数値を計測した。場所によって異なるだろうが、建物の外まで電波が届いていれば屋内でも十分通信は可能なケースもあるようだ。
一方で地下には弱いようで、同様に有楽町駅前のビル地下1階では電波が一切届かなかった。また、屋外であってもエリアによっては電波が届かない場所があり、秋葉原から少し歩いた末広町付近では電波の感度が低かった。このあたりはまだユーザーが利用できるサービスの提供前ということもあり、実際のエリア拡充に期待したいところだ。
■エリア内では超高速。サービス時のエリアと料金プランに期待
限られた屋外のエリアでの測定とはなったものの、通信速度に関しては非常に好成績を収める結果となった。サービス開始前で他ユーザーもほとんど存在しない好条件とは言え、すでに高速データ通信としてサービスを提供している、NTTドコモの「Xi」(クロッシィ)の屋外理論値である最大37.5Mbps、あるいはUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」の最大40Mbpsをも超える数値となったのは、非常に期待が持てる。
とはいえ、モバイルデータ通信の決め手は通信速度だけではなく、「つながりやすさ」も含めたエリア展開、そして使いやすい通信料金という3つの要素が重要となる。エリア内では非常に高速ではあるものの現時点では山手線内に限られており、サービス前のために当然のことではあるが、実際のつながりやすさはまだ未知数の部分も多い。また、どのような料金体系でサービスが提供されるかも気になるところだ。
しかしながらソフトバンクでは、これまでにも他の携帯電話事業者に先駆けて自社ユーザー同士の音声定額を導入し、iPhoneでも低廉なパケット定額キャンペーンなどを展開。さらには加入者減少が続いていたウィルコムでも「だれとでも定額」により加入者増加に転じさせただけの実績がある。同じソフトバンクグループであるWCP、そしてMVNOとして展開するソフトバンクモバイルにも、AXGPを利用したサービスのリリース時にはソフトバンクならではの大胆なサービス展開を期待したい。
2012/2/15 11:18