レビュー

プラス800円でVIP気分。“優先レーン”で高速なmineoの「プレミアムコース」

さらにスイッチ1つで全てが“カウントフリー”になるヒミツとは

mineoのプレミアムコースとmineoスイッチで、スマートフォンはもっと楽しくなる!

選択肢が増えたMVNO

 格安SIM、格安スマートフォンを取り扱うMVNO事業者による販売競争はますます激化している。総務省が発表したデータによれば、2016年度第1四半期までで、MVNO事業者は580、MVNOを通じた契約数(通信モジュールなどを含む)は1300万件を超えており(※関連記事)、この拡大の流れは今後も続きそうだ。

 MVNO事業者が増加したことで、各社それぞれが考案した格安プランが大量に世の中にあふれるようになった。ユーザー側からすれば選択の幅が広がったと言えるが、単に“低料金”を打ち出している事業者が多いようにも見え、似たような料金体系ならどれを選ぶのがベストなのか、迷いやすい状況になってきているとも言える。

 そんなこともあって、近頃は安易に安さで勝負するのではなく、他社との明確な差別化を狙った、おトク感のあるサービスを提供する事業者も増え始めた。より大容量の高速データ通信を割安に利用できるプラン、家族や友人とデータ容量をシェアできるサービス、SNSなど特定サービスの利用時のみデータ容量に反映しない「カウントフリー」プランなど、趣向を凝らして新たな魅力を訴求している。

 なかでも、とりわけ個性的かつ意外性のあるサービスを次々に投入しているのが「mineo」だ。ユーザー数は着実に増えているようで、10月末時点での契約数は約43万件になっている。最近では、2016年7月から「プレミアムコース」をトライアルとしてスタートしており、そこから少しさかのぼってちょうど1年前の2015年6月より「mineoスイッチ」を展開している。

 その他にも、以前からさまざまな独自サービスを投入してきているmineoだが、この比較的新しい「プレミアムコース」と「mineoスイッチ」という2つの取り組みはどういったものなのだろうか。改めてじっくりと紹介したい。

通常コースと「プレミアムコース」の差は?

 2016年7月に提供が開始された「プレミアムコース」は、当初は無料トライアルという位置付けで、この10月からは有料トライアルとなり、新たなスタートを切ったばかり。有料トライアルからは同社の「通常コース」の料金に800円を追加で支払うことでプレミアムコース会員の「専用帯域」を利用でき、通常よりも高速で安定したモバイル通信を行なえるのが特長だ。

「プレミアムコース」の公式案内ページ

 ただし、現在は抽選で選ばれた数少ないユーザーのみが利用できる状態。本格サービスの開始時期は、今後アナウンスされるとのことだが、通常コースとプレミアムコースでどれくらいの違いがあるのか知っておきたいところだ。

 すでに述べたように、プレミアムコースでは、通常コースとは異なる、特別に確保された「専用帯域」で通信できる。ご存知の通り、通常コースは多くのユーザーが共用するため、混雑時は通信速度が低下しやすいが、プレミアムコースの専用帯域は利用者数が限られているため、混雑が起こりにくく、安定して高速通信できる可能性が高い。言ってみれば、プレミアムコースのユーザーだけ“優先レーン”を通過できるのだ。

 では、実際にその通信速度の差はどれほどなのか、単純に速度を計測して比較してみた。mineoが提供している「ドコモプラン(Dプラン)」のSIMカードを装着した富士通製のスマートフォン「arrows M03」を2台用意し、一方は通常コースのまま、もう一方はプレミアムコースに加入し、「Speedtest.net」(リンク)を用いて検証している。

富士通のSIMフリースマートフォン「arrows M03」を2台使用した
測定に使ったカラーはピンクとホワイト。ほかにブラックとmineo限定のグリーンがラインナップされている
arrows M03はドコモプランとauプランの両方に対応。MIL規格に準拠し、高い耐久性を備える。mineoでの一括支払い時の端末価格は3万1800円。

 場所は都内。朝の通勤ラッシュが終わって利用者数がある程度落ち着いたであろう午前11時台前半と、混雑しがちな昼食時間帯の午後0時台後半の2回に分けて計測している。結果は下表の通り。

【午前11時台の通信速度】(単位:Mbps)
コース名平均値最大値最小値
下り/上り下り上り下り上り下り上り
通常コース10.8125.4214.1236.49.6618.91
プレミアムコース43.5723.1763.837.4933.935.9
【午後0時台の通信速度】(単位:Mbps)
コース名平均値最大値最小値
下り/上り下り上り下り上り下り上り
通常コース1.223.221.3633.730.7415.17
プレミアムコース24.2130.5728.3834.8910.8217.26

※平均値は、それぞれ5回計測し、最大値と最小値を除いた残りの3回分を平均化した
※最大・最小値は、それぞれ5回計測したうちの最大値と最小値をピックアップした

 この結果からは、さほど混雑していない時間帯は、通常コースでも下り平均10Mbpsほど、最大で30Mbps超と、それなりのスピードで通信できることが分かる。実際の使用感としても、Webブラウジングやアプリを使ったデータ送受信の速度に不満はないし、YouTubeの動画視聴もフルHDコンテンツまでであればコマ落ちや画質の劣化もなかった。しかし、混雑する時間帯になると通常コースでは一気に速度が低下し、WebアクセスやSNSの利用は問題ないものの、動画視聴はさすがに厳しくなった。もっとも、これはどのMVNOでも傾向は同じだ。

通常コースの端末上での速度計測の様子。空いている時間帯はそこそこのスピードで通信できるが、混雑時は重いコンテンツを開くのが厳しくなる

 対してプレミアムコースは、混雑していない時間帯は平均でも下り40Mbps超で、通常コースの最大値を軽々とオーバーした。明らかに通常コースとは違うレベルで通信できており、混雑時間帯になっても20Mbps以上をキープしている。混雑していてもしていなくても、プレミアムコースなら一切のストレスなく、Webもアプリも動画視聴も楽しめるわけだ。

プレミアムコースの端末上での速度計測の様子。下りは平均で40Mbpsを超えた

“全部カウントフリー”を実現する「mineoスイッチ」、どれだけ使える?

 もう1つ、2015年6月から投入されている機能が「mineoスイッチ」だ。mineoスイッチは、ユーザー自身が意図的に速度制限を加えるもので、その間はどれだけデータ通信したとしても、契約している月間のデータ容量を消費しない仕組み。制限時の上限速度は200kbpsで、データ容量を使い切って速度制限が行なわれた時の値と同等となる。

 mineoのユーザーなら誰でも無料で利用できるのもポイントだ。専用の「mineoスイッチ」アプリ(AndroidiOS)を使えば、画面上のボタンをタップするだけで速度制限(節約)のオン・オフを簡単に切り替えられる。

ダウンロードした「mineoスイッチ」アプリ(左から2つめ)をタップ
mineoのアカウント(eoID)でログインすると、当月の使用量・残容量と、mineoスイッチのボタンが表示される。「節約ON」で通信速度が200kbpsに制限される

 mineoスイッチをどんな時に使うかというと、ズバリ、200kbps程度の通信速度で十分なサービスを利用する時、ということになるだろう。動画視聴は難しいかもしれないが、WebブラウジングやTwitter、Facebookのようなどちらかというと文字主体のSNS、あるいはLINEなどでのテキストチャットであれば、数Mbps以上の高速な通信でなくても問題ない。

 mineoスイッチを「節約ON」にしている間は、契約している月間のデータ容量を消費することがない。ということは、すなわち、他社が提供しているSNSなどのデータ通信に限定した「カウントフリー」プランを、すべての通信に拡大したものがmineoスイッチ、と考えることもできる。ある意味で、任意のタイミングで“全部カウントフリー”を実現する機能なのだ。

 もちろん、使用するアプリに関係なく速度が200kbps以下に制限されるので、どんなアプリやサービスでも快適に利用できるわけではない。

 そこで、制限下でどのアプリがどれくらい使えるのか、あるいは使いにくいのか、筆者が普段よく利用するアプリを中心に実際に試してみた。ちなみに、mineoスイッチを「節約ON」にした時の通信速度は以下の通り、下りはやはり200kbpsに満たない状況だった。

【mineoスイッチ 「節約ON」(200kbps制限)時の通信速度】(単位:Mbps)
下り上り
平均値0.180.15

※5回計測し、最大値と最小値を除いた残りの3回分を平均化した

 各アプリでの動作検証結果は◎○△で記載している。◎は利用に当たって大きな支障がないもの、○は一部で気になるところがあるもの、△は快適な利用は望めないもの、といったように、筆者の感じるざっくりとした基準で快適度を示している。

【mineoスイッチ 「節約ON」(200kbps制限)時のアプリの快適度】
アプリ名快適度所感
Facebook全体的に快適に閲覧可能。まれに画像の表示に時間がかかることがある
Twitterタイムラインはサクサク表示。ニュース機能ではサムネイル表示がもたつく場合がある
Webブラウジング(Impress Watch Headline)サムネイルの読み込みに待たされることはあるが、他は特にストレスなく閲覧可能
マップスポット検索、目的地までのルート検索などすべて快適で、高速通信時と差は感じられない
Yahoo!乗換案内ルート検索は一瞬。マップと同様、高速通信時と差は感じられない
LaLa Call(IP電話)音声通話の音質は良好。音声が途切れることはなく、高速通信時と比較して遅延が大きいと感じることもない
LINEメッセージ送受信、音声通話ともに全く問題なし。ビデオチャットは不安定で実用は難しい
Amazon ショッピングアプリ軒並み快適に商品の検索・閲覧ができる。時々ページ表示に時間がかかることがある
Pokémon GO地図表示は遅いことがあるが、ゲームプレイに大きな支障はない
Spotify通常音質、高音質の設定では劣化・途切れなし。再生開始時に時間がかかる
radiko.jp音声の劣化・途切れはないが、タイムフリー聴取でシークに時間がかかる
Netflix画質の劣化は大きいものの、停止したり音や映像が途切れたりすることはなく、十分に楽しめる
Amazon Video画質は低く、ストリーミング再生中にたびたび停止してしまう。再生開始にも時間がかかる
dアニメ最も低画質の「普通画質」でもストリーミング再生中に頻繁に停止してしまう
Facebookの閲覧は200kbpsに制限されていても快適
IP電話のLaLa Callも途切れず、聞き取りやすい音質でやりとりできた
Pokémon GOは地図(道路)表示が遅くなることがあるものの、プレイ時の操作性や楽しさが損なわれることはない
音楽配信サービスのSpotifyは、最高音質(プレミアム会員のみ)に設定しなければ問題なし
動画は全く見られないかと思いきや、Netflixだけは停止したりせずに視聴できた。回線速度に応じて画質を細かく調整しているようだ

 mineoスイッチを「節約ON」にした時は、実は「バースト機能」というものが働いており、通信し始めの最初の一瞬だけ通信速度を200kbps以上に高める工夫が盛り込まれている。これによって、体感上の通信速度は200kbpsよりもずっと高速だ。

 例えば上の表に示したなかで、「画像(サムネイル)の表示に時間がかかることがある」とコメントしているところ、これがまさにバースト機能の影響と思われる。テキストなどのサイズの小さいデータはバースト時に受信しきってしまい、画像のいくつかもその流れで受信できるが、バーストが終わった後は、受信できなかったデータの大きい画像を徐々に読み込んでいくことになる。

Webサイトの一部の画像が遅れて表示されるように感じるのは、バースト機能によってその他のデータが高速に受信できているため
ダウンロード速度とアップロード速度それぞれの数値の下にある小さなグラフを見ると、通信し始めの左端の値が大きくなっていることがわかる。これがバースト機能の効果と思われる

 見かけ上は一部画像の受信が遅いように思えるが、むしろ画像以外は、バースト機能により、本来の上限通信速度よりもずっと高速に受信できている、と考えるべきなのだ。

価格以上の価値を感じられる、mineo独自の取り組み

 mineoが提供するプレミアムコースは、これまでMVNOに対して抱きがちだった「安価だけれど帯域が狭くて遅い」というイメージを完全に払拭するもの。大手キャリアの通信品質に迫るこの環境を800円追加するだけで体感できるのは、リーズナブルとしか言いようがない。ユーザー枠が少しでも早く広がることを祈りたいところだ。

 また、mineoスイッチは、SNSなどに限定せず、すべてのアプリ・サービスについて一時的に「カウントフリー」化できるという感覚のもので、うまく切り替えながら使うことで、確実にデータ通信量を節約できる。場合によっては今契約している基本データ容量を1段階下げ、月額費用を抑えることにもつなげられそうだ。

 mineoではこの他にも、データ容量をすべてのmineoユーザー間で共有できるようにする「フリータンク」というサービスを提供している。自分のデータ容量を使い切ってしまっても、フリータンクから毎月1GBまで引き出して追加料金なしに再び高速通信を続けられるのは、ユーザーにとってうれしい仕組みだ。この「フリータンク」は2016年度のグッドデザイン賞も受賞している。(※関連記事

 これらの独自性あふれる数々のサービスは、他のMVNOではなかなか見ることができない。もともと月額基本料金が700円(データ容量500MB)からという安価なサービスとしても定評のあるmineoだが、こうしたプラスαのサービスによって、価格以上の価値を感じられるのではないだろうか。