レビュー

ドコモの「みえる電話」をさっそく使ってみた

 通話内容を自動的にテキスト化するNTTドコモのサービス「みえる電話」のトライアルがはじまった。19日からモニターを募集していたところ、26日から当選者へ通知が送られ、アクティベートできる環境が整った。開発者のコメントを交えつつ、現時点での使用感をお伝えしたい。

まだまだ多い電話必須の窓口

 水道のトラブルや病院の予約、飲食店の予約、そして緊急通報と、日常生活で今も電話が活躍する場面は多い。それは裏返すと、難聴者にとってハードルになっていることを意味する。

 「みえる電話」は、音声を自動的にテキスト化して、通話内容を“みえる化”してくれるサービスとして開発された。

050電話を利用

 「みえる電話」は専用アプリから電話をかける。インストール後は、IDとパスワードを入れてログインする必要がある。ユーザーには050で始まる電話番号が発行され、電話の発着信には050番号を経由する形になる。

 たとえば、「みえる電話」から電話をかけると相手には050番号が通知される。逆に「みえる電話」ユーザーへ電話をかける際、自動テキスト起こしを利用するには050番号へ電話することになる。

 「みえる電話」アプリから電話をかけると、相手にはまず「こちらはNTTドコモです。通話相手の方が『みえる電話』サービスを利用しています。このサービスは音声を録音して相手に文字でお伝えします。録音した音声、文字でお伝えした内容は、サービス性向上のため、利用させていただくことがあります」と断りを入れて案内する。

 電話が繋がれば、「みえる電話」アプリの画面に、相手の話した内容がテキストで表示されていく。

使ってみた

 使い方はアプリから電話をかけるだけ、といたって簡単だ。実際に編集部の固定電話宛てに電話をしてみたところ、体感では、7割程度の内容が正しくテキスト化されたように思えた。

 電話窓口との応対という事例が想定される「みえる電話」だが、ひとまず編集部では、一般的な会話や、前後の脈絡のない言葉を使って話してみた。

 「もしもし」「もしもし、お世話になっております」といったワードはほとんど問題なくテキスト化されたが、「お世話になっております関口です」と喋ったところ、筆者の名前が「木口」とテキスト化されたり、「みえる電話」が「ニール電話」になったりするなど、単語のはじめの音が少し弱いのか、異なるワードになったりことが幾度かあった。話す側が少し強めに発声すれば解決しそうではあるが、このあたりは話す人によって影響の度合いが異なるのかもしれない。また「ケータイ Watch編集部です」という言葉が「携帯を突き編集部です」と変換された例もあった。

 その一方で「きしゃのきしゃがきしゃできしゃした」という同音異義語を交えたワードは、きちんと「貴社の記者が汽車で帰社し。」とほぼ満点の変換で、編集部でも思わず「おおー」と驚きの声が上がった。

 ちなみに専用アプリの発信履歴から、テキスト化された内容をあらためて見ることもできるが、他のアプリへコピーするといった利用はできないようだ。

履歴からテキストをみることもできる

精度はこれから、今後には大いに期待

 その精度は、今の段階ではまだ発展途上にあると言わざるを得ず、難聴者は正しい内容がわからないまま、誤って変換されたテキストを含めて読んでいくことになる。ただ、そもそも何らかの目的があって電話をかけて会話するため、誤って変換されたワードがいくつか含まれていても、前後の内容で意図を汲み取ることはできるようにも思う。

 精度については、トライアルとして利用されていくことで着実に向上していくだろう。企画担当のNTTドコモ サービスデザイン部の河田隆弘氏は「うまく電話を聞き取れないことで悩み、やりたいことをあきらめてしまう方の想いに応えたい一心で、必要最低限の機能で早く提供を開始することで全力を尽くした」とコメントし、いち早い提供を目指したと説明する。

 河田氏の言葉通り、トライアルサービスとしてスタートする「みえる電話」の精度や機能は、今の段階ではまだ成長の余地を大いに残している。

 しかし、「みえる電話」の本誌記事には、TwitterやFacebookなどを通じて少なくない反響があった。その背景には、音声認識の精度向上がもたらす難聴者への新たなコミュニケーション手段が登場したという技術の先端性がもたらす魅力や社会的な意義、そして応用範囲への期待などがある。難聴者でも健聴者でも、話した内容をそのままテキスト化できれば、通話だけではなく会議における議事録の作成や、LINEのようなメッセージングアプリでの音声入力、はたまた人工知能のアシスタントサービスへの音声での指示の高度化など、ちょっと想像するだけでも、未来への期待が膨らむ。

 「みえる電話」は、来年度に正式サービスが登場する予定だ。携帯電話会社らしい意義のあるサービスであり、その後の進化が楽しみだ。