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東京五輪で携帯・Wi-Fiはどうなる? 都が主要キャリアにヒアリング
(2014/6/3 19:57)
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックで、携帯電話はさくさく繋がるのか、Wi-Fi環境はどうなっているのか――そんな観点から、訪日外国人を含めて、ユーザーにとって快適な通信が利用できるよう、東京都では3日、携帯各社に対して意見を聞いた。
会場には、NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏、ソフトバンクモバイル代表取締役社長兼CEOの孫正義氏、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏、そして、無線LANビジネス推進連絡会会長の小林忠男氏(NTT-BP社長)が集まった。冒頭、舛添要一都知事は「2020年の東京オリンピック・パラリンピックにあわせて、東京を世界一の都市にすべく、さまざまな施策に取り組んでいる。情報通信関係も世界一にしたい」と説明。訪日外国人にとって使いやすい環境の実現だけではなく、大規模災害発生時にもコミュニケーション手段を確保するという目的を掲げ、都の政策として今後推進する姿勢を示した。
携帯各社からは、これまで進めている、災害対策や最新のサービスなどが紹介された。大会が開催される2020年代には、2010年と比べて、1000倍のトラフィックになると予想されているほか、首都圏は関係者や観戦のために訪日する外国人でトラフィックが局所的、かつ急激に増加するとの予測が示され、通信各社だけではなく主催者側を交えた対策を検討していく必要がある、との声が挙がった。
都への要望として挙がったのは、たとえば、公共設備における装置の設置について。KDDIの田中社長は、海外では道路標識や信号などに携帯電話基地局が設置されている事例があるとして、都の協力を求めた。また、無線LANビジネス推進連絡会の小林会長は、Wi-Fiアクセスポイントの設備を設置する際、飲食店のオーナーなどからはすんなりと設置が受け入れられず、交渉~工事まで現在は一定の期間が必要となっているため、都が周知を図り機運を盛り上げることで、よりスムーズに導入できるようにしてほしい、と要望する。
都側から、設備の共同利用について尋ねられたKDDI田中社長は「そういうことも、今回の会合直前の控え室で孫さんとも話した」と述べ、今後、事業者間で協議する可能性を示唆した。
孫氏、「普段使っていない周波数を活用すべき」
ソフトバンク孫氏は、ロンドン大会での取り組みとして、Wi-Fiでのオフロードが五輪史上、初めて実施されたこと、そして期間中に防衛用途の周波数を特別に開放して、トラフィック増に対応したことを紹介。それをヒントに、とした孫氏は、今ある電波では2020年になるとパンクすることは間違いなく、2020年の大会では観客がみな動画を撮って、アップロードすることが一気に発生する可能性を指摘。国に対して、東京都と通信各社が一緒になって「電波特区」のようなものを作り上げるべき、として、利用できるWi-Fi用、携帯電話用の周波数帯を速やかに拡大することを求めるべき、と提言する。Wi-Fi用周波数拡大は、総務省の電波政策ビジョン懇談会でも提案中とのこと。携帯電話用周波数については、海外で使われている帯域をそのまま国内でも使えるようにする、という施策。具体的には1.7GHz帯(Band3)、2.3GHz帯(Band40)、3.7GHz帯(Band43)という帯域が紹介された。
「こういうことは1社が言ってもダメ。しかも普段、闇雲に言ってもダメ。オリンピックという機会にあわせて、都知事から政治的なリーダーシップを発揮できるテーマ」と孫氏は語り、舛添知事にアクションを起こすよう求めた。
またセキュリティ面でも包括的な議論をすることも提言。これについて、事業者間だけで調整できるのか、と舛添知事が問うと、孫氏は「知事から声がけがあると、普段競争し合っている事業者でも集まりやすい。前向きな話をしやすい、という環境ができる」と応えた。
キャリアフリーなWi-Fi
また、都側からは「訪日外国人の利用を念頭に置いたキャリアフリーのWi-Fi」に関する質問も投げられた。これに対しては、ドコモ加藤社長は「ロンドン大会でも、キャリアが提供する、ある種、セキュリティ高いものは、有料だったと聞いている。(無料との)ミックスで、どのようなものが一番いいのか。多角的な検討が必要」とコメント。
孫氏は「世界中の人々がスマートフォンを持っている。キャリアにかかわらず、世界中の人々が来たときにすっと繋げられることが重要。Wi-Fiは必要不可欠なソリューションだと思う。無料でサービスとして開放する。オリンピック会場で、ビデオのやり取りとか無料でWi-Fiを使ってサービスを提供する。なおさらWi-Fiの特区のような電波の開放は、日本人のおもてなしの気持ちとしてやるべきだと思う」と回答した。