ソフトバンク、iPhone 5でテザリング提供へ


 ソフトバンクモバイルは19日、都内で記者向けに説明会を開催し、9月21日に発売される「iPhone 5」を念頭に、LTE方式の通信サービスやスマートフォンの下取りなどの新たな施策を発表した。ソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏が登壇し、説明を行った。

LTE端末でテザリングを提供へ

 これまで非対応とされてきたLTEスマートフォンにおけるテザリングについて、19日の説明会では一転して孫氏から対応が表明された。テザリングは、端末をモバイルWi-Fiルーターのように使える機能。「SoftBank 4G LTE」向けのオプションとなり、iPhone 5や、今後発表・発売されるLTE対応スマートフォンが対象。申込みはiPhone 5の発売と同じ9月21日から受け付けるが、サービスの提供は3カ月後となる2013年1月15日から。孫氏はサービス提供が3カ月後となる点について、「エリア展開がかなりできる」とし、準備が整うのが3カ月後としている。

 テザリングオプションの利用料は月額525円。ただし、2012年12月31日までに申し込むと2年間はテザリングの利用料が無料になる。なお、テザリングオプションを契約すると、LTE端末のパケット定額料は月額5985円から5460円に値下げされる。また、iPhone 5では、テザリングオプションを利用しない場合、LTEは通信量制限の無い“使い放題”と案内されているが、テザリングオプションを契約すると、通常のLTEサービスと同様に月間の通信量は7GBに制限される。7GBを超えると、通信速度は128kbpsに制限される。2GBごとに2625円を支払えば、制限を解除することも可能。

 なお孫氏は、19日の会見で、テザリングは3Gネットワーク(W-CDMA)に接続した状態でも利用できると回答している。iPhone 5本体については、サービス開始までにソフトウェア更新でテザリング機能を有効化する方針。

 テザリングの料金や、月間7GB超で速度を128kbpsに制限すること、2GBあたり2625円で制限を解除するといった内容は、NTTドコモの「Xi」やKDDIの「4G LTE」と同じ。孫氏は、他社が値下げなどを行った場合は追随する方針も明らかにしている。


LTE端末でテザリングを提供利用料は他社と同じ

LTE端末向けの通話定額、割引施策

 「24時間通話定額オプション」は、iPhone 5を含むLTE端末向けに設定される通話定額オプション。LTE対応スマートフォンからソフトバンクへの国内通話が、24時間無料になる。利用料は月額500円で、申込期間は9月21日~12月31日。サービス提供開始は2013年1月15日から。

 「4G/LTE スマホ BB割」は、固定回線とのセットで、パケット定額料を割り引くサービス。ソフトバンクが指定する固定通信回線とLTE端末をセットにすると、2年間、スマートフォンのパケット定額料が1480円割り引かれる。3年目以降も毎月980円が、「パケット定額 for 4G LTE」の場合は毎月455円が割り引かれる。申込期間は9月21日~12月31日。

 「4G/LTE スマホ家族キャンペーン」は、iPhone 5などのLTE端末に機種変更したユーザーが、それまで利用していた3Gのスマートフォンを家族に渡すなどの理由で新規で回線を契約した場合に、2年間、パケット定額料が月額1980円になるというもの。機種変更前の回線に残っている「月月割」は、新規契約の回線に引き継げる。

 条件はiPhone 4/4SからLTE対応スマートフォンに機種変更することと、それまで利用していたスマートフォンは、同一名義・同一請求先で回線のみ追加で契約することなどとなっている。キャンペーン実施期間は9月21日~11月30日。


LTEでソフトバンク同士の24時間通話定額サービス月額500円
固定回線とのセット割も用意機種変更で余ったiPhoneは、家族なら安く使えるように
パケット定額料は月額1980円 

「スマホ下取り」を強化

 9月14日に発表された「スマホ下取りプログラム」は、ユーザーからの反応を受け、価格の一部を改定することや、対象機種の追加が発表された。同プログラムは、LTEスマートフォンを契約する際、それまでに利用していたソフトバンクのスマートフォンを下取りするというもので、発表当初、下取り価格はiPhone 4が8000円、iPhone 4Sが1万2000円と一律的な価格が案内されていた。しかし、内蔵メモリの容量が異なっても下取り価格が変わらないことや、下取り価格そのものに不満が寄せられたことなどを受け、下取り価格はメモリ容量ごとに細分化されたほか、iPhone 4Sの64GBモデルで2万円と、上限額も引き上げられた。加えて、iPhone 3GS、iPhone 3Gを対象にすることも明らかにされた。さらに、HTC製のAndroidスマートフォン「X06HT」「X06HT II」「001HT」、デル製の「001DL」「101DL」も下取りの対象機種に加えられた。実施期間は9月21日~11月30日まで。

 下取りの金額は、請求金額からの割り引きという形で提供される。下取り金額が2万円の場合は毎月1000円が20カ月、1万2000円の場合は毎月1000円が12カ月、といった形になる。

 孫氏は、下取りプログラムを、流通を含めて全国的に整備することで、ユーザーが新しい端末に乗り換える際にも気兼ねなく乗り換えられる点をアピール。自動車を新車で買って、買い替える際には中古として売るといったサイクルと同じであるとし、長い期間で見れば安く済むといった点を訴求していく。この下取りプログラムは全国ネットでテレビCMも放映する予定。

 なお、下取りプログラムでは、本体が正常に動けば下取りするとしており、付属品の有無などは問われず、審査無しで一律的に下取りされる見込み。内部データの消去は下取りを受け付けたその場で行う仕組みを用意する。下取りされた端末は、基本的には途上国など海外市場向けに提供(リユース)される予定だが、国内でまとまった要望があれば検討するとしている。またこうしたことから、下取りの対象となる端末は、グローバルモデル、もしくはグローバル市場での利用が容易な端末が選ばれている。なお、キャリア自らがiPhoneを下取りして海外市場に転売することについて、孫氏は、「アップルの承認は得ている」としている。


9月14日に発表した下取りプログラムへの反応スマホ下取りプログラムを強化
下取りの上限は2万円に引き上げられた下取り価格は内蔵メモリの容量などで細分化され、一部Android端末も追加された

ソフトバンクのiPhone 5は「速い」「広い」「安い」

ソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏

 孫社長は説明会の冒頭で、プラチナバンドとして展開している900MHz帯の基地局が申請計画を上回る速度で展開している様子を紹介。現在6300局を設置し、2012年度中に2万局近くまで設置を進めるとし、「垂直立ち上げで、進捗に大変満足している。これからソフトバンクの電波が急激に良くなっていくことを、実感していただけるのではないか」と自信を見せた。

 またプラチナバンドの事例として、郊外の大学や都市部の病院、郊外のゴルフ場、山間部など、これまで圏外やほどんど電波表示が無い状態だったところが、プラチナバンドのエリアになることで劇的に改善されたとし、「基地局は同じ場所に設置している。なんの発明もいらない。技術的工夫もいらない。これだけでよくなる。今までどれほど、これだけのために苦労してきたのか。改めて威力を思い知らされた」と900MHz帯による自社ネットワークの拡充を称賛した。

 公衆無線LANサービスの「ソフトバンクWi-Fiスポット」については、9月19日時点で全国約31万カ所に拡大していることを紹介。また、iPhone 5では従来のiPhoneには無かったWi-Fiの5GHz帯がサポートされているが、ソフトバンクでは「ソフトバンクWi-Fiスポット」のWi-Fiルーターについて、既に5GHz帯の対応を始めているとしており、順次対応していく方針。


 LTE関連では、KDDIのLTEサービスと比較して、周波数幅が将来的に10MHz幅×2、下りの通信速度が最大75Mbps(サービス開始時点では5MHz幅×2、下り最大37.5Mbps)で、iPhone 5に限れば両社ともに2GHz帯で展開することなど、仕様が同じであることを列挙。

 KDDIは800MHz帯を含むLTEの実人口カバー率の目標を96%としているが、孫氏は「800MHz帯はiPhone 5では関係ない」とし、iPhone 5で利用する2GHzのみに焦点を絞り、同社の2GHz帯のLTE実人口カバー率は、2013年3月時点で91%を目指すと言及。「実現できると考えている」と自信を見せる。

 またLTEの基地局の免許許可数は2012年8月時点で1万673局で、KDDIの4516局の倍以上として、「ことiPhone 5のLTEに関しては、KDDIの倍以上は先行している」とアピール。「実際は1万局以上設置していく。急ピッチで進めており、プラチナバンドとLTEの両方を進めているということ。iPhone 5のLTEでは、大いに競争しましょうということ。大いに受けて立つ。またプラチナバンドという意味でも、1年後、2年後は急激に良くなる」として、電波施策についても自信のほどを語った。

 孫氏はこうした当初のLTEのカバーエリアがKDDIよりも広いことで「ソフトバンクのiPhone 5が、一般的に速いという傾向が見られるのではないか」と予想。3GのiPhone 4Sではソフトバンクの平均速度が上回っていたとする調査結果なども示し、通信速度の面でも優位に立てるとした。LTEのエリアについては、37.5Mbps、75Mbpsのエリアについても公開する方針。

 LTE端末におけるテザリングについては、前述の通り提供する方針に変更された。孫氏は18日夜に海外出張から帰国したとのことで、このタイミングでテザリングへの要望に対し、Twitterで「検討しましょう」と発言。14日の時点でCTOの宮川潤一氏からは、テザリングは難しいとの見方が示されていたが、対応の最終的な決断もこの18日の夜に行われたという。発表会では正式に「テザリング、やりましょう。」というスライドを表示して、やりましょう。の歴史に新たな1ページを加えた。


新しい概念“実質パケット定額料”で安さを訴求

 同氏はまた、乗り換えやMNPなど、キャンペーン施策などにより“実質パケット定額料”なるものが安くなるとアピールしており、料金面でもKDDIより安いと訴求する。ただし、「のりかえ割」「かいかえ割」や「下取りプログラム」といった各種の割引施策には、パケット定額料を直接割り引くものと、そうでないものがあり、“実質パケット定額料”で示される金額は、請求書の明細とは異なる場合がある点には注意が必要。


 孫氏はこれらの内容をまとめ、ソフトバンクのiPhone 5について、「他社よりも速い」「サービスエリアが広い」「確実に安い」とアピール。「さらに情熱がすごい。お金で買えるものではない」とも付け加え、「ひとりでも多くの人に体験していただきたい」とした。

 なお19日時点でiPhone 5の予約は「圧倒的」とのことで、初回入荷数は以前よりも「格段に多くなっている」とするものの、それを上回る予約がきているとのことで、「初回入荷分は予約で完売状態」であることを明らかにした。初回入荷分が完売した後の入荷予定は「分かりません」とし、すでに21日時点で入手できないユーザーがいる見通しであることも明らかにされている。


囲み取材に応じる孫正義社長




(太田 亮三)

2012/9/19 18:09