「au版iPhone」発売イベント、田中社長がエリアなどアピール


KDDI田中氏
KDDIデザイニングスタジオの壁面に沿って、内側から垂れ幕も

 10月14日、アップルの「iPhone 4S」が発売された。今回からはau(KDDI)のラインナップの1つとしても提供されることになり、14日朝、東京・原宿にあるKDDIデザイニングスタジオでは発売記念セレモニーが開催され、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏が挨拶した。

 KDDIデザイニングスタジオでは、通常、auやKDDIの固定サービスなどの紹介が行われ、端末販売は行われていないが、14日は臨時店舗が設置され、前日に配布された整理券を持つ50名に対して「iPhone 4S」が販売されている。

 開場前から田中氏は、二度、報道関係者の前に姿を現して、雑談するなど落ち着かない様子。8時からの販売開始直前に行われたセレモニーでは、「私の気持ちとしては、auからやっとiPhoneが出る、ということを本当に嬉しく思っている。下半期のメッセージとして『未来が選べる』という言葉を掲げているが、選べる環境ができたことは非常に嬉しい」と述べ、喜びを露わにした。KDDI社長に就任する以前、モバイルWiMAX事業を展開するグループ会社のUQコミュニケーションズの社長時代では、UQ社員にiPhoneユーザーが存在し、エリアなどの課題を認識していたと語る。同氏は「(UQの社屋がある)品川は、通信事業者にとって、大変混んでいる場所ではあるが、『auから(iPhoneが)でれば何とかなるんじゃないか』といった声を聞いており、今回、我々の本当に自慢できるエリアをiPhoneユーザーに使っていただけるのは、本当に嬉しい」と、同時にiPhone 4Sを発売するソフトバンクモバイルを牽制するように、エリア面でのアドバンテージをアピールした。

 また田中氏は、「料金がなぜ他社より高いのか、というのが主な質問の1つだと思う」と料金プランの説明に入った。オプション料金を含むと、他社とあまり差がないとした同氏は、キャンペーン価格で、パケット定額プランの「ISフラット」を従来よりも525円安価にしたことを紹介し、「ネットワークを訴求する我々の想いから、こうした形になった」と理解を求めた。

 同氏は「Wi-Fiスポットも9月末時点で3万カ所くらいまで来ており、年度末の10万カ所という目標を達成したい。マルチユースの世界でもこれからもっと面白い世界を提供したい。1年前、スマートフォンで出遅れたと述べたが、今回、やっとここまで来た、これが全ての始まりだと思う。既にiOS 5を昨日ダウンロードして試したが、これから面白い世界が広がるのではないか」と期待感を示した。

 セレモニー後半では、整理券の1番を手にした専門学校生の女性(20歳)が登壇し、田中社長からiPhoneが手渡された。

販売開始の午前8時を迎えた瞬間田中社長は笑顔を見せた
整理券1番の女性前日に整理券を入手してオープンを待つユーザー
2階は臨時店舗にKDDIデザイニングスタジオ1階のタッチ&トライコーナー

 

ネットワークの強みを強調、通信以外のサービス展開も示唆

 セレモニー後の囲み取材で、予約台数は明らかにされなかったが、「IS03」と比べ、「結構いい」と予約数を評価した田中氏は、現時点ではまだauショップの1/4程度でiPhoneを販売するに留まっていることを説明し、今月末までに販売の準備を整え、auショップ全店でiPhoneを販売する方針を示した。また在庫が潤沢かどうか、という問いについては、「店頭ではまだ混乱がある。どんどんお店に供給するが、これからどの程度ユーザーが増えるか予測できず、まだ厳しいかもしれない。11月になったら落ち着けるようにしたい」とコメントした。MNP(携帯電話番号ポータビリティ)についても、予想以上に利用され、auに乗り換えているという。

 料金競争について、田中氏は否定的な見解を示す。同氏は「僕らが自信を持つネットワークにiPhoneが繋がったら、こんな風に使い方が変わるんだ、というのを体験していただきたい。いきなり割引競争などを行うのはよくないと思っている」と述べ、これから迎える冬商戦においても値引き合戦などは行わないとした。

 これまでauでは、さまざまなサービスを展開してきたが、「土管屋(通信部分だけ担う役割)に徹するのか」という問いには、「それじゃいかんと思っている。いろんなことができるのではないか。楽しみにしていて欲しい」と述べた。iPhoneが増加しても、余裕は充分ある、としつつ、今後はWi-Fiのオフロードのほか、ネットワークのレスポンスを向上させる仕組みが重要として、先日発表されたコンテンツ配信(CDN)の取り組みなども重要な施策とした。

 iPhoneそのものについては、「個々のアプリよりも、ちょっとした操作感、動きが心地良く、満足度を上げるのでは」と評価。自らをたびたび「オタク」を評する同氏は、「渡米した1984年に『Macintosh』に発売され、幾度か購入して好きな製品だった」として、iPhone 4S発表直後に訃報が伝えられた、米アップル会長のスティーブ・ジョブズ氏についても「この世界をお作りになった人だと思う。心からお悔やみ申し上げる」とした。

 同社では、スマートフォンの出荷数について400万台という数値を業績目標に織り込んでいるが、iPhoneの登場で「上方修正するだろう」との見込みも明らかにされた。これまでのAndroidスマートフォンの販売数も順調に伸びているとのこと。2011年9月末時点で、MNPが転入超になったのは、同社内の計画よりも半年ほど前倒しする形で達成できたことだったという。iPhone 4Sの登場で、他のスマートフォンとユーザーを取り合う面はわずか、とした同氏は、「Androidスマートフォンの販売は落ちていない。こうした業界は、新製品が発表されると買い控えのような現象が起きるが、落ちていない。実際にiPhoneが発売され、どういった影響がでるかわからないが、Androidは『+WiMAX』でより高速、ということでポートフォリオ(製品のラインナップ)がハマってたのではないか、と思う。純増数ばかり気にされるが、我々は、一般の端末はMNPが実力の精度、と思っている」と語った。

 このほかWindows Phoneについては、「売れ行きはまあまあ」とした田中氏は、キャリアメールへの対応がまもなくとして、今後も注力するとした。iPhoneの法人展開については、「これから」と述べるに留まった。

価格表iPhone 4S

 




(関口 聖)

2011/10/14 11:10