孫氏、スマートフォンシフトを鮮明に
ソフトバンクモバイルは、2011年秋~2012年春にかけて発売する、新製品発表会を開催した。発表会では代表取締役社長の孫正義氏が登壇し、ラインナップや同社の戦略を説明した。
孫氏のプレゼンテーションの流れは、ハイエンドモデルの説明に続いて、女性向けとしてラインナップした端末を紹介し、これにディズニー・モバイルの端末も加えた。その後、Wi-Fiや基地局など、電波改善宣言に関連した現状報告と、今後の取組を解説し、ネットワークを進化させたものとして「SoftBank 4G」を紹介した。
孫氏は冒頭、東日本大震災の影響で、春に開催予定だった新製品発表会を自粛したことに触れ、この話題に関連して、今回発表したいくつかの端末では、緊急地震速報に加えて災害・避難情報の配信にも対応した「緊急速報メール」を提供することを紹介した。
同氏はまた、現在の状況について「スマートフォン花ざかりで、普及期がやってきた。さらに、人類にとって最大の資産はクラウド。当社の30年ビジョンでも触れたが、これから現実のものになる」とクラウドの重要性を改めて主張。「欠かすことができないのは、通信速度。キャパシティ(容量)も重要で、高速化、大容量化が重要。こだわっているのは、超高速のネットワークを作り、活用するようなスマートフォン・通信機器を増やしていくこと」と語り、プレゼンテーション全体のトピックを予告した。
■21Mbps対応の“ULTRA PHONE”
孫氏が最初に紹介した端末は、「ULTRA SPEED」の名称で提供している、下り最大21MbpsのHSPA+に対応する3機種。「AQUOS PHONE 104SH」は、「非常に薄く、TIのデュアルコアを搭載する。3.89mmと狭額縁で、中のディスプレイが大きくなっている。フルハイビジョンの動画撮影も可能」と紹介した。「LUMIX Phone 101P」については、「まるでデジカメ。私自身こだわって、見た目はLUMIXのデジカメそのものにして下さいとお願いした。日本のユーザーが欲しがる機能が全部入っている」と、カメラ然とした見た目や、日本仕様に仕上がっている点もアピールした。「102SH」は、今回発表のシャープ製端末に搭載される「エコ技」機能をピックアップし、「アンケートを行うと、電池が持たないという点がスマートフォンの最も大きな不満点。エコ技では最大50%ダウンできる」と従来と比較して省電力になっている様子を解説した。
同氏はこれらの“ULTRA PHONE”として紹介した端末について、「新しい周波数帯(1.5GHz帯)を利用し、道路でいえば混んでいない状況。全国で広いエリアをカバーし、次世代の通信サービスでは最もカバーエリアが広いのではないか」と、速度を活かせるエリアの展開にも自信をみせた。
■「スマートフォンは一般の人にも当たり前になる」
「みまもりホームセキュリティ 101HW」を紹介する孫氏 |
続いて「AQUOS PHONE 103SH」「MEDIAS CH 101N」「STAR7 009Z」「DELL STREAK PRO 101DL」「PANTONE 4 105SH」「みまもりホームセキュリティ 101HW」の6機種が紹介された。
孫氏は、「スマートフォンは2~3年前までは一部のマニアが使うイメージだった。しかしこれだけ揃ってくると、スマートフォンは当たり前。ハイスペック好きだけのものではなく、一般の人にも当たり前になる。日本仕様の端末も続々と登場している。スマートフォンを出すだけではなく、ニーズに合わせて、幅広く出していくことが大事。新しいスマートフォンで新しい使い方を提供していきたい」と、ラインナップの中身も充実しているとした。
その同氏が“変わり種”と改めて紹介したのが、通信機能を備えた「みまもりホームセキュリティ 101HW」。「(異常を検知すると)自分の携帯に自動的に送られてくる。全自動で、しかも月額料金が安い」と、簡単に使え、手軽に始められる様子をアピールした。
■10代女性向けを明確に打ち出した2機種
さらに孫氏は、バリエーション豊かなスマートフォンのラインナップとして、女性向けを強く打ち出した端末も「for Girls」と題して紹介した。同氏によれば、スマートフォンの新規契約に占める女性の割合は、2011年8月時点で53%。そこで、調査に基づき、10代の女性が重視するポイントとして、1)カラー、2)デザイン、3)カメラ機能、4)文字入力のしやすさ、の4点を挙げる。
女子中学生向けとしてまず紹介されたのは、ウィルコムでおなじみの「HONEY BEE」ブランドを冠したスマートフォン「HONEY BEE 101K」。ステージにはティーンズファッションに身を包んだモデルが登場し、インカメラで“自撮り”する様子などをアピールした。また、スライド式ボディにテンキーを備えた「AQUOS PHONE THE HYBRID 101SH」も同様にモデルが登場して紹介された。
孫氏は、「若い女性向けも手を抜かない。若い女性が好む機能が盛りだくさんで、丁寧に作り込んでいる。機能も重要だが、かわいさの追求も重要ではないか。もちろん、スマートフォンとしての機能を満たしている」と、細部まで作りこんだとし、9月28日に発表されたディズニー・モバイルの2機種を紹介した上で、「もはや単に機能だけではない。今回の発表会をみてもらえれば分かるが、ユーザーが何を求めているか、という心理に、真正面から取り組んでいく」と語った。
■電波改善への取り組み、現状を報告
孫氏からはまた、「Wi-Fi」「基地局」「フェムトセル」の3つのポイントで、電波改善に関する取り組みが紹介された。
まず、積極的に設置箇所を増やしている「ソフトバンク Wi-Fiスポット」については、10万スポットを突破したことを明らかにした。競合他社と比較して圧倒的に数で勝り、銀座駅周辺で1527カ所、渋谷駅周辺で2333カ所、新宿駅周辺で2312カ所と、多数のスポットが設置されている様子を示し、「全自動でつながるのはソフトバンクだけ。パスワードとか、いちいち入れなくてもいい」と使い勝手にも言及した。
また、都営地下鉄の全駅のホームでも利用可能になっていることを紹介。加えて、10月中には東京メトロの全駅の駅構内にも拡大する予定とした。なお同氏は、Wi-Fiスポットとは異なるものの、地下鉄の駅間のトンネル内を携帯電話のエリアとできるよう、ドコモ、KDDI、イー・モバイルと共同で取り組んでいるとし、「今年度末には、続々と繋がり始める」という見通しも明らかにしている。
基地局については、2011年9月時点で約16万局を設置したとアピール。これには、Wi-Fiスポットやフェムトセルは含まれてないとし、「自宅圏外率」が他社と同程度の1%にまで改善したとする調査も示した。また、グラフなどでは示されなかったものの、屋外についても「かなり改善したという結果が上がってきている」と自信を見せた。
孫氏は今年と来年の2年で1兆円をかけて基地局を増加させていく方針をすでに明らかにしているが、16万局を達成した基地局について「私自身、まだ満足していない。もっともっと強化していきたい」と、さらに拡大していく構え。
自宅が圏外などの場合に設置を申請できるフェムトセルについては、6万カ所に設置が完了したとのこと。「来年1月からは、もっと促進する方法を考えている。自宅に訪問して取り付けるようなものを計画中」と、こちらも設置を促進するような施策が予定されている。
Wi-Fiスポットの拡大 | |
基地局数 | フェムトセル設置数 |
■高度化XGPを「SoftBank 4G」としてサービスイン
孫氏はこれらのエリア、ネットワークへの取り組みを報告すると、そこから発展し、「さらなる快適性」を実現するものとして、「SoftBank 4G」を発表した。これは、Wireless City Planning(WCP)が提供するサービスで、2.5GHz帯を利用した「高度化XGP」方式の通信サービスをウィルコムからWCPが承継したもの。ソフトバンクモバイルはMVNOとして、「SoftBank 4G」の名称で提供する。
孫氏は、LTE方式の1つであるTD-LTEと「100%互換」と発言。主にハードウェア面で、中国やインドといった市場のエコシステムに組み込まれることが可能になっているという。下り最大100Mbpsという通信速度は「今までの3Gと比べて圧倒的にハイスピード、ハイキャパシティ(大容量)、ハイレスポンス(低遅延)」と、速度以外の特徴もアピールした。孫氏は「1番でないと気が済まないソフトバンク、他社を圧倒的に凌ぐソフトバンク」と意気込み、エリアについても急拡大させていく方針。
孫氏からはその「SoftBank 4G」に対応するモバイルWi-Fiルーター「ULTRA WiFi 4G 101SI」の説明も行われ、「4Gが生活をどう変えていくのか」として、スペシャルゲストの上戸彩、ウルトラマンを壇上に招待した。
ステージ上では、3Gと「SoftBank 4G」の速度比較のイメージや、クラウド連携サービスなどで本領を発揮するといったデモが紹介され、上戸彩は地図サービスの高速な通信と描画に驚いた様子。ロケで訪れたというローマの様子が映し出されると「歩いてきたところが見えるなんてすごい」と感激していた。また、「あの芝居がパッと見たい、と思ったら、すぐに調べられる。バッグに入れるものが少なくなりますね」と、高速な通信速度でライフスタイルが変わる様子にも期待を寄せていた。
「SoftBank 4G」 | |
上戸彩とウルトラマンが登場した |
■「意図的に、戦略的にスマートフォンシフトを進めている」
孫氏は質疑応答後、囲み取材にも応じた |
質疑応用の時間では、1年前の発表会でiPhoneが中心とアピールしたことと比較して、今後の対応や棲み分けについて聞かれた。孫氏は、iPhoneについて「依然として、業界の中でも最も優れたスマートフォンのひとつで、技術革新が続いていく」とコメント。「一方で、Androidも数多くのメーカーがしのぎを削って開発している。若い女性向けや日本固有の機能など、多くのユーザーにマッチするようなものに小慣れてきた」とし、バリエーションを拡大していく中で、Android端末が成熟してきているとの認識を示した。
なお、新型iPhoneなどに関連した質問には、すべて「ノーコメント」と回答した。
“ULTRA PHONE”として紹介されたULTRA SPEED対応機種のテザリング対応については、「検討中です」と回答。また、「SoftBank 4G」の料金プランは、「少なくとも、競合他社と競えるものにしていきたい」との方針が明らかにされた。
SIMロック解除に対応した端末が新たにラインナップされていない点については、「当社でも対応端末(シンプルスマートフォン 008Z)を出しているが、ほとんど需要がなかった。ドコモも数機種を出したが、どこに行った(他社のSIMを挿した)とかほとんど聞かない。需要があればいくらでも作る」とし、現時点でユーザーの需要が無いとした。
フィーチャーフォンの新機種が1機種にとどまっている点には、「大きな時代の流れ。意図的に、戦略的にスマートフォンシフトを進めている」と、戦略的なものであるとし、「従来のにおいを残したものは、スマートフォンの一部としてラインナップする。若干は常に新機種を出すだろうが、基本はスマートフォンシフト。店頭については、在庫として従来機種の販売は継続する」として、スマートフォンを中心にしていく方針を明確にした。
■プレゼンテーション
2011/9/29 19:02