未来は、選べる。――auの秋冬は選べるラインナップ


KDDIの田中氏

 2011年の秋冬モデルとして、年内に発売される予定のスマートフォンや携帯電話を発表したKDDI。登壇した代表取締役社長の田中孝司氏は、auの今後のコンセプトである「未来は、選べる。」についての考えを語った。

 今回の商品ラインナップはいずれも2011年内に発売される予定のモデルで、いわゆる春モデルは含まれていない。端末数で競い合っていた昨年までの流れにauは一足早く終止符を打った形になる。



ワクワク感に繋がるauの施策

 KDDIは、2010年の秋冬モデルの製品発表会において、「Android au」のキャッチコピーとともに、シャープ製のAndroid端末「IS03」を華々しくデビューさせた。IS03は、Android搭載のスマートフォンでありながら、ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信、「@ezweb.ne.jp」のEメール対応などが盛り込まれ、スマートフォンの“1台持ち”ができるような端末としてアピールされた。

 その後の春モデル、夏モデル、さらにiida初のスマートフォンとなった「INFOBAR A01」の登場など、KDDIはスマートフォンのラインナップを拡充し、8月にはWindows Phone搭載の「IS12T」なども発売、スマートフォン購入時の選択肢を着実に広げている。

 春モデルの「HTC EVO WiMAX ISW11HT」でauは、3GとWiMAXのデュアル端末を投じ、サービス面では、Skype|auやFacebookとの協業、音楽サービス「LISMO unlimited」などもスタートさせた。

 田中氏は、「スマートフォンが選べるということ、その思いがワクワク感に繋がるのではないか」と話し、サービス関連については「楽しみ方が選べるということも、ワクワク感につながる」とした。

 IS03以降、スマートフォンへの注力を本格化させたauは、2011年の秋冬のテーマを「未来は、選べる。」とした。田中氏は「フィーチャーフォンの時代はキャリアの垂直モデルの中にあって、選択の余地は示せなかった。ユーザーの心の中で想像したものを、選べる形で提供したい」と話す。auは、「もっと○○したい」「もっと○○できたら」というユーザーの求める世界をスマートフォンで提供するとした。



提供側の論理が通じない時代

 なお、調査会社の資料によると、フィーチャーフォンのネット利用時間は1日60分程度だったが、スマートフォンになると約170分と3倍弱にまで利用時間が延びるという。

 秋冬モデルのスマートフォンにおいて、WiMAX対応モデルを6モデル投入する背景には、ネット利用時間の拡大に伴う、利便性の向上という面がある。また、データ通信を3Gから引き離すことで、急増するデータトラフィックのオフロード策としての活用の道もある。

 田中氏は、春モデルで先行して発売された「HTC EVO WiMAX ISW11HT」について、ユーザーの82%が通信速度に「満足」と回答し、さらに91%が「テザリング」に「満足」と回答したと紹介した。「こんな高い満足度調査を見たことがない」と話していた。

 このほか、「auのこれから」として田中氏は、ユーザーが願う「こんな世界が来たらいいよね」というものが個人で異なると話し、「提供側の論理を押しつけるのではなく、ユーザーが選ぶ時代。キャリアはユーザーの要望に応えられるのか。ユーザーが欲しい未来を選べる自由を提供する」とした。



KDDIのデータオフロード策、WiMAXの通信障害に陳謝

 KDDIは、電気通信事業者協会(TCA)が発表する毎月の実績の中で、ここしばらく月間純増数が3~4番手に甘んじている。田中氏は「ワクワク感」ということでauの勢いを回復することを目標に掲げている状況だ。

 ただし、TCAの数値は現在も一定の指標となっているものの、契約形態や販売形態などが多様化したことで、かつてのように純増数でキャリアの好不調を図りにくくなっている。田中氏は、純増数ではなく電話番号を変更せずにキャリアを移動できるMNP制度の結果を重視しているとし、この1年間で流出が少なくなっている状況を説明した。秋冬モデルのWiMAXスマートフォンでも、ドコモのXiにエリアカバーの広さで勝負できるとの見方をした。

 なおKDDIでは、データトラフィックのオフロード対策として、2013年頃にWIMAXやWi-Fi、固定通信などを絡めて半分程度のトラフィックを3G以外にオフロードしていく計画だ。

 データオフロード対策の1つとして期待されるWiMAXだが、9月21日夕方より東日本で大規模な通信障害が発生し、通信が利用できない状態に陥った。この通信障害について田中氏は陳謝するとともに、その原因を説明。原因は、台風が近づいてきたことで通常の9倍のアクセスが集中した結果、高トラフィック時の輻輳のコントロールにバグがあり、システムダウンしてしまったという。現在詳細について調査中とした。

「ノー・コメント」をつらぬく田中氏

 このほか発表会の後の囲み取材では、田中氏に対してたたみかけるようにiPhone関連の話題が浴びせられた。

 これは先週、auから新型iPhoneが登場するのではないか、とする一部報道を受けて、メディアの取材合戦が続いているためだ。田中氏の回答は先週のKDDIの公式コメントと変わらず、「大変申し訳ないが、ノー・コメント」とするのみでそれ以上のコメントはない。メディア各社も、1社独占の状態について意見を聞く、プラットフォームの拡大によるユーザーの選択肢拡大の可能性について聞く、といった工夫をこらしてコメントをとろうとしていたが、田中氏は憶測で記事を書かないよう伝えるなど慎重な姿勢を見せていた。


 




(津田 啓夢)

2011/9/26 17:03