「INFOBAR A01」発売、六本木でトークセッション開催


 auのiidaから、初のスマートフォンとなる「INFOBAR A01」が発売された。6月30日、六本木の東京ミッドタウンにおいて、INFOBARの魅力を伝えるイベント「INFOBAR A01 DEBUT EVENT」が開催された。

 会場には、KDDIのプロダクト企画本部長である増田和彦氏、ユーザーインターフェイスを担当したWebデザイナーの中村勇吾氏、そしてケータイジャーナリスト石野純也氏が登場し、INFOBARにまつわるさまざまな話が語られた。



INFOBARの意義

KDDIの増田氏

 「INFOBAR A01」は、2003年にau design projectから登場したストレート型携帯電話「INFOBAR」の流れをくみ、タイル状のカラフルなキーが象徴的に採用されたAndroidスマートフォン。プロダクトデザインは、第1弾から深澤直人氏が手がけている。「INFOBAR A01」の開発はシャープが担当している。

 KDDIの増田氏は、2001年に深澤直人氏のアイデアを元にコンセプトモデルを発表した当時、携帯電話はオシャレなものではなかったとする。この頃はNTTドコモのブランド力が非常に強く、KDDIでは差別化軸としてデザインへの取り組みを開始したという。

 深澤氏が当初考えたデザインは、ブロックを組み合わせたようなもので、色のバリエーションが非常に特徴的だった。コンセプトモデルは、情報(information)を見るためのバータイプの端末として「info.bar」と名付けられた。当初のアイデアは、ストレート型携帯電話として使え、背面側は全て情報画面になっているというものだった。石野氏は「そういう意味ではINFOBAR A01は最初のコンセプトに近い」と語った。

 au design projectでは、デザイナーのコンセプトに限りなく近いモノを開発するという、これまでの携帯電話開発とは異なる挑戦を行った。2003年に登場した最初の「INFOBAR」について増田氏は、「世の中がモバイルインターネットの黎明期だった中で、デザインが1つの価値になった」と話した。この端末の登場以降、auのブランドイメージは飛躍的に向上することになる。

キー部分が取り外せるモックアップ

 初代INFOBARは、携帯電話のカラーバリエーションや、形状に影響を与えるだけでなく、塗料技術の向上にも大きく貢献したという。くしくも「INFOBAR A01」の塗装メーカーは初代INFOBARと同じメーカーとなった。なお、今回も色については試行錯誤が繰り返された。3つしかないハードキーでいかにINFOBARらしい配色を導き出すか。KDDIでは、キー部分が取り外しできるモックアップを作り、配色パターンについて検討に検討を重ねた。こうした結果、「INFOBAR A01」はスマートフォンのカラーバリエーションとしては、グローバルモデルの中にあっても大変珍しい存在となっている。

 このほか増田氏は、デザイン面だけでなく「INFOBAR A01」の仕様面もアピールした。同氏が「今回は“全部入り”の旬なスペック」と語ると、石野氏が「GSMの国際ローミングに対応している。auのほかのシャープ製端末ではサポートされていない」と続けた。増田氏は「海外でも目立つ。シャープにはチャンスがあれば海外でも売っていただきたい」などと語った。


一番最初のアイデアコンセプトモデル第1弾INFOBAR
INFOBAR 2のコンセプトモデルINFOBAR 2INFOBAR A01


「普通は縦」のスクロールUI

中村氏
石野氏

 「INFOBAR A01」は、Android端末でありながら、Android端末らしくない。それはひとえにユーザーインターフェイス(UI)が独特なものに感じるからではないだろうか。「INFOBAR A01」は、端末ロックを解除させると、サイズの異なるタイルが並んだ縦スクロールの画面UIに遷移する。

 一般的なAndroidのUIであれば、複数あるホーム画面を横にスライドさせて切り替える。縦スクロールのUIをFlashで提案された増田氏は「コレだ! と思ったが、Flashのインターフェイスのようなパフォーマンスが出るのかわからずチャレンジだった」と話した。

 このUIを手がけたのが、デザイナーの中村勇吾氏だった。中村氏は、縦スクロールにした理由を明快に語り、「iPhoneは確かに横、でも普通は縦じゃないですか! スマートフォンでは特殊に見えるけど、携帯電話もWebも縦スクロールは見慣れたものだと思う」と話した。

 UIのプロジェクトは1年前から動き出した。イベントに中村氏は、当初KDDIに披露したプレゼンテーション資料を持ち込んだ。同氏は一覧性の良い新聞、そしてiGoogleのようなカスタマイズできる環境を「INFOBAR A01」のUIに取り込もうと考えた。また、ソニーのコンポ「Liberty」を紹介し、コンポーネント毎に機能がまとめられた一体感のあるデザインを意識したという。


言葉ではない伝え方

 UIデザインを検討していく上で、中村氏が採用した手法はKDDIのスタッフを驚かせた。通常ならば、デザイナーは職人であるエンジニアに対してイメージを伝えて形にしていく。Webデザイナーである中村氏は、シャープの開発陣に対して、Flashで作成した実際に動作するUIをデモンストレーションした。シャープ側はそれをJavaに変換し、いかにサクサク感、ヌメヌメ感を出すか注力していく。タッチした際に指に吸い付くようなニュアンスを出すため、あえて少しテンポを遅らせるといった細やかな演出はプログラムコードで示していくことになった。KDDIの増田氏は「スマートフォンのUIはなんといってもiPhoneがお手本となっているが、コードをそのまま渡し、言葉ではなくリファレンスを渡していく」と中村氏のやり方を賞賛した。

 Androidにはさまざまなアプリがある反面、「Androidのアイコンはしょっぱいのが多い」(中村氏)という。iidaというブランドの性質上、そしてINFOBARの世界観の上でも“ダサいアイコン”はそぐわない。「INFOBAR A01」では、アイコンの下に統一された画像レイヤーを配置し、世界観に調和するよう工夫されている。

 その一方で、Androidの魅力は、世界観が統一されていない、柔軟でオープンな環境という側面も持ち合わせる。「INFOBAR A01」では、縦スクロールのUIを横にスライドさせると、いわゆるAndroidらしいUIを表示させることも可能だ。中村氏は、左にフリックした際のAndroidらしいUIを「左に行くと原野」、INFOBARの世界観で統一されたUIを「右に行くとauの庭」などと表現していた。

 また、自身が手がけた縦スクロールのUIについて「見てくれはこれまでのAndroidとはだいぶ違うが、基本的にAndroidのマナーに則している。特別なことはしていない」などと話した。増田氏は、スマートフォンというとグリッド型のUIというイメージがある中で「今回のUIによって、まだまだいろいろなUIの可能性があるなと思った。今回のUIはAndroidのUIへの1つの提唱になる。Geekの部類に入る私も素直にすごいと感じた」とした。

 このほか中村氏は、iidaウィジェットの開発について、「個人的にはAndroidアプリを作っている人たちにSDKを提供していきたい。テーマも追加でダウンロードできるようにしていきたい」などと拡張性についても言及した。これを受けたKDDIの増田氏は、「アイデアをなんとかものにしていきたい」と述べた。



質疑応答

 イベントの最後、来場者からの質問時間があった。実現が難しかった部分についてKDDIの増田氏は「デザイナーのコンセプトにどれだけ忠実にできるか? 少し違うだけも大きく変わってしまう」と話した。

 また、これまでのINFOBARシリーズでは追加色が登場していることから、追加色の可能性も問われた。増田氏は「売れ行き次第。ただ、今回は色の選定に相当の時間がかかっている」と話した。INFOBARのタブレット型端末の可能性について問われると「面白い発想、検討する」とした。

 なお、中村氏がKDDIに提案した際のFlashのUIは、iidaのWebサイトで公開されている。


 



(津田 啓夢)

2011/6/30 22:50