パナソニック、2011年前半にAndroidスマートフォン投入へ
パナソニック モバイルコミュニケーションズは、2011年前半に「Android」搭載のスマートフォンを開発、投入する。16日の下期製品説明会で、同社代表取締役社長の脇治氏が明らかにした。
■遅れを認め、2つのコンセプトを軸に据える
パナソニックの脇氏 |
同社では過去3年間でVIERAケータイを約880万台出荷したほか、2010年度下期に、NTTドコモやソフトバンクモバイル向けに「LUMIX Phone」などを供給する。これらの製品は、従来型の携帯電話となり、スマートフォン新製品は発表されていなかった。
脇氏は、2011年がスマートフォン本格普及期になるとして「総力を結集しないと勝ち目がないのではないか」と、スマートフォンへの意気込みを見せた。
国内外メーカーのなかで、スマートフォンへの取り組みはやや遅れた格好だが、その理由を質疑応答で問われた脇氏は「日本市場において、ここまでスマートフォンが早く普及する、高まってくるとは、と(状況を)見誤った。Windows Mobileなどスマートフォン開発を並行して行っているが、Androidは世界の主流になると(その方向性が)固まったのが(Android採用の)最大の要因」と説明する。
同氏は、プレゼンテーションの中で、国内携帯市場の動向予測レポートを示し、「注目すべきは、スマートフォンの比率。もっと遅く来ると予測していたが、予測調査によれば2013年にシェア41%となっている。昨今の状況を見ると、さらに加速すると認識している」と述べ、スマートフォンへの強化が急務との認識を示す。2010年は市場の立ち上げ時期であり、本格的普及期は2011年から、として、スマートフォン開発が今後の重要な取り組みとする。
同社が手がけるスマートフォンについては、オーディオや映像関連といった電機メーカーとしての特徴を打ち出す「AV融合」「生活サポート」を挙げる。AV融合は、パナソニックグループが手がける製品群の技術力を反映し、従来行ってきたVIERAケータイ、新機種のLUMIX Phoneのような製品がイメージされている。一方「生活サポート」については、DIGAやLUMIXのような映像・写真を楽しむ「モバイルビューワー」、健康家電などの技術を活かして生活を快適にするという「モバイルハウスキーパー」、白物家電と連携する「モバイルゲートウェイ」といったコンセプトが掲げられた。2011年前半に投入する第1号機は「生活サポート」型の端末になるとのことだが、続けて「AV融合」型を含む、複数台のラインナップを揃える方針だ。
パナソニックグループ全体としては、三洋との統合により、体制再構築が現在進めれており、モバイル事業は通信事業者相手のビジネスということから、コンシューマ-部門ではなく、法人向けジャンルを含むソリューション部門の“セキュリティ&コミュニケーションソリューションズ”に位置付けられている。この枠組みの中で、パナソニックの強みを活かして製品開発を進めるとした脇氏は「LUMIX Phone、VIERAケータイのような機種をAndroidで投入しながら、(先行する他社を)キャッチアップしたい。スマートフォンを成長エンジンとして、新たなスタートを切りたい」と語った。
■コンセプトは“マイファーストスマートフォン”
こうした説明から、パナソニックが進めるスマートフォンは、Androidベースであり、同社独自の付加価値を備える製品になる方向が明らかにされる中、質疑応答で登壇した同社取締役の石井圭介氏は、「1号機は、社内で“マイファーストスマートフォン”というコンセプトで開発している」と語り、本格的な普及期に向け、高価格帯の携帯電話を利用してきた一般的なユーザーが違和感なく、乗り換えできるような機種を目指すとする。
パナソニックの石井氏 |
おサイフケータイやワンセグなど、日本独自の機能の搭載を示唆する発言だが、会見後の囲み取材で、同氏は「(国内のスマートフォン市場は)第1ステップがiPhone、第2ステップが日本独自の仕様、次いで全てがインターネットへ繋がる時代ということになれば、次のステージはどうなるのか。現在は過渡期だから日本独自仕様に注目されているが、(そうした独自機能の)良し悪しではなく、ネットワークの連携が最も重要になり、Androidのバージョンにどの程度追いついてやっていけるか。その時々で重視しているもので出していかなければいけない」と語る。
またグーグルとの協力関係については、「グーグルと言えども、人員から言って、端末メーカーと協力して開発する体制ではないと思う。日本メーカーは現在、サードティア的な扱いで、ファーストティア的な扱い、それに準ずる形、単独かどうか含めて検討しているところ。先述した日本仕様へこだわりすぎるというものは、しっかりした試験をするのであれば、『できあがって、すぐ搭載してOSを変えていく』というのは技術的に困難。このあたりは考えどころだが、グーグルとの連携はしていかなければならない」と説明した。
製品ラインナップのうち、スマートフォンが占める割合については、「2013年に、市場の過半数をスマートフォンが占める、という前提に立った場合、現在は投入が遅れているが、(パナソニックのラインナップは)1年前倒しして、そういう方向に持って行きたい。シフトを急いでいきたい」と述べ、2012年にはラインナップの半数以上をスマートフォンにする可能性を示した。
海外市場には2012年前半に投入し、スマートフォンを含む同社製品群の出荷数は、2015年には1500万台達成を目指す。海外について脇氏はAndroid自体がグローバルプラットフォームであり、そのままで投入できるとしながらも、先行する他社との差別化要因は必要との認識を示した。また石井氏は「現在、国内では600万台規模でビジネスをしているが、2015年に1500万台、というのは最低限やっていきたい数値。国内外の比率は半々程度になるのではないか。海外の進出地域は現在検討中」と述べた。また、LTE対応のスマートフォンについて石井氏は「キャリアの動向次第だが、はやければ来年~再来年。先頭グループでやっていきたい」とした。
国内での投入先については、マルチキャリア展開を前提にした開発にするとのこと。端末の形状については、「インターネット連携はパナソニックグループのうち、モバイルだけでやることでもない」(石井氏)、「パナソニックグループ全体でAndroidプラットフォームを使うのは確かな流れで、各ドメインでさまざまな計画がある」(脇氏)とのことで、パナソニックグループ全体で、携帯電話以外の形状のデバイスが投入されるとしたものの、具体的な計画、製品については触れられなかった。
■ソーシャルゲームにも進出
パナソニックの津村氏 |
2010年下期に投入する製品群の説明は、パナソニック商品企画グループ グループマネージャーの津村敏行氏から行なわれた。同氏のプレゼンテーション後半では、コンテンツへの取り組みが紹介された。
同社では、2000年からいわゆる“メーカーサイト”を開設し、現在では3キャリアあわせて約60万人(月間平均のユニークユーザー数)に利用される。待受画像の配信やメニューカスタマイズにもいち早く取り組んできたとのことで、今年5月からは有料コンテンツ販売サイト「P-SQUARE MARKET(ピースクエア マーケット)」がオープンしている。また12月6日からは、同社の携帯電話に対応するきせかえツールも配信する。
さらに今冬からは、ソーシャルゲームも提供することが明らかにされた。具体的なゲームの内容などは不明だが、第一弾は「マジックアバターバトル」と呼ばれるもので、カードを集めて、ある王国最強の魔法使い打倒を目指す、という内容になるという。年明けにもオープンする見込みで、他社製の携帯電話を利用するユーザーでもプレイできるとのこと。ただし、パナソニックの携帯電話を持っていれば、何らかの特典はある模様だ。
現在、従来型の携帯電話で進めているコンテンツ販売への取り組みは、スマートフォンでも継続するとのことで、囲み取材でコンテンツへの取り組みを問われた石井氏は「現在、国内でパナソニック製携帯電話の稼働台数は約1200万台。(コンテンツの売り上げ予測は、との問いに対し)一般的なコンテンツ利用率からすると、来年には億で一桁、再来年には二桁になるのでは」とした。
■2010年度下期の目玉“LUMIX Phone”でニーズに応える
今期商品のフラッグシップモデルとなるのは、NTTドコモとソフトバンクモバイルでそれぞれ販売される予定の「LUMIX Phone」だ。機能的にはほぼ同等(ソフトバンクモバイル向けではWi-Fi機能でWPSをサポート)となるが、こうした機種が登場した背景について、脇氏は「話題はスマートフォン一辺倒だが、ユーザーにアンケート調査を行うと、昔も今も、ニーズはさほど変わっていない」と述べ、カメラ機能が依然として重要視されているとする。
同氏が掲げたデータによれば、「購入時に重視するもの」として、デザイン(86%)、本体色(71%)、液晶の綺麗さ(68%)に次いで、カメラ性能が67%を占めている。カメラ機能についてはメール送信手順やパソコンへのバックアップがもっと便利に、という声が大きい。つまり、今回「LUMIX Phone」で基本的なニーズの一大要素であるカメラ機能を訴求し、そのカメラ機能でも暗がりなどで手軽に撮影できるようにするとともに、“ピクチャジャンプ”と呼ばれる機能で手軽に写真を扱えるようにした、ということになるという。
また同社ラインナップで継続的に投入されている“スリムケータイ”について津村氏は、現在も過去のスリム端末が150万人以上に利用されているとして、今回「P-01C」でもその方向で、ボタンを押しやすくして、高機能化を図るなどブラッシュアップを進めたとする。このほか、VIERAケータイで防水対応の「P-02C」、ソフトバンクモバイル向けで多色展開の「COLOR LIFE2 002P」などが紹介された。また、展示コーナーでは、実際に利用シーンが紹介され、「LUMIX Phone」で暗がりを撮影できるデモなどが披露された。
■ドコモ向けLUMIX Phone P-03C
■ドコモ向け「P-01C」
■ドコモ向け「P-02C」
■ソフトバンク向けLUMIX Phone「001P」
■ソフトバンク向け「COLOR LIFE2 002P」
2010/11/16 14:13