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新生BIGLOBEは「“SIM替え”に注力していく」、まずはブランド再構築にチャレンジ

 ビッグローブ(BIGLOBE)は28日、新たなコーポレートロゴを発表した。あわせてMVNOサービス「BIGLOBEモバイル」で、YouTubeなど一部サービスの通信量が無料になる「エンタメフリー・オプション」が自動的に選択される「エンタメSIM」を提供する。

まずはブランドの建て直し

 1986年にパソコン通信(PC-VAN)をはじめて30年。NEC傘下の老舗インターネットプロバイダが、日本産業パートナーズの投資ファンドを経て、KDDIに買収されたBIGLOBEは、28日、2年ぶりとなる記者説明会を開催した。

30年に及ぶBIGLOBEの歴史
有泉社長

 新たなコーポレートロゴを発表し、あわせて、染谷将太、池松壮亮、山本美月といった人気俳優を起用したCMを、テレビとWebで展開することになった。

左から染谷将太、池松壮亮、山本美月

 KDDIで16年にわたり法人向けソリューションを担当し、新たにビッグローブ社長に就任した有泉健氏は、PC-VAN時代からの積み重ねで、BIGLOBEには信頼と品質について高いブランド力があるとアピールする。そのブランド力は、主に40代以上のユーザー層が中心だっが、それでもBIGLOBEのMVNOサービスは徐々に若年層が増えてきた。今回のCMは、BIGLOBEのブランドイメージをあらためて強調すべく、若手俳優を起用したという。有泉社長は「一度CMを打っただけではブランドは構築できない。第2、第3とサービスを打ち出していく必要がある」と語る。

旧来のロゴ
こちらが新ロゴ
BIGLOBEに関するイメージ
BIGLOBEモバイルに統一

 質疑の際にも有泉社長は「(楽天によるフリーテル買収を受け、BIGLOBEへの影響は? という問いに)まずはBIGLOBEのブランドを磨くことに集中している。買収などは考えていない」と説明。

 またMVNOサービスについても、「BIGLOBE SIM」などいくつかの名称に分かれていたが、今回をもって「BIGLOBEモバイル」に統一し、訴求していくことも明らかにされた。

au回線のサービスは準備中

 3人の俳優を起用し、ブランド名をアピールするCMの演出に、報道陣の一部からは、三太郎シリーズのauや、「UQ、だぞっ」で展開するUQ mobileとの類似性を見出す声も上がるが、有泉社長はそれを否定。KDDIからは、現在、BIGLOBEにないノウハウや知識を吸収しようというフェーズという。

 これまではNTTドコモの回線を利用したMVNOサービスを展開してきたが、au回線に切り替える考えは? と問われると「準備中。近くお知らせできるタイミングが来れば」と予告した。同社によれば、ドコモ回線を利用するサービスに加えて、au回線を利用したサービスの追加を検討しているとのこと。ただその時期はまだ未定で、その詳細は別途案内される見通し。

 2016年12月にKDDIがBIGLOBEを買収した際には、au経済圏など、通信以外の分野でシナジーをはかる考えが明らかにされていた。BIGLOBEに赴任して半年という有泉社長は「今は、BIGLOBEの色を再確立することにフォーカスしている。差別化要因をまず磨く。シナジーなどはまだ検討段階」と述べるに留まる。

“SIM替え”ニーズの獲得目指す

 あわせて打ち出したのは「SIM替え」という言葉。これは、スマートフォンはそのまま、SIMカードだけ差し替えることで、より割安な料金で利用できる、という格安スマホ/格安SIMの使い方をアピールするものだ。

 有泉社長は「これからのマーケットはお客さまの端末を変えず、SIMだけ格安に変える。そのSIM交換が大きく成長すると予測している」と語り、“SIM替え”に注力していく姿勢を示す。そこでBIGLOBEがアドバンテージとするのが「家族でのシェア」「エンタメフリー・オプション」「サポート」の3本柱だ。

 「家族でのシェア」とは、複数枚のSIMカードで通信容量を共有できるサービス「シェアSIM」のこと。たとえば、音声通話対応のSIMカードを4枚利用する場合、主回線で12GBのプラン(3400円)で、子回線3枚のSIM(900円×3)であれば6100円で家族4人分になり、どれくらい節約できるか実感できるはず、と有泉社長。

 エンタメフリー・オプションは、YouTubeやSpotifyなど現時点で9サービスを利用する際の通信量がカウントされない、つまり無料扱いになるサービス。28日には最初から同オプションが選択されている3GB付きの音声通話SIMカード「エンタメSIM」が発表された。2018年2月4日までに申し込めば、24カ月間、100円引きの月額1980円で利用できるキャンペーンも開始された。

 エンタメフリー・オプションの裏側では、視聴開始時には高速で通信しつつそこからは速度を絞って、またデータが滞ってくれば高速にする……と通信品質を監視・運用している、と有泉社長は語り、BIGLOBEの技術力に胸を張る。

 サポートについては、10月から全国でスマートフォンの使い方をレクチャーする教室を開催する。自宅を訪問して利用開始までサポートするサービスも同じく10月から開始する予定だ。

 こうしたBIGLOBEならではのメリットは「Bで行こう」というメッセージとともに、テレビCMなどを通じてアピールしていく。

有泉社長囲み取材、主な一問一答

――MVNOでは端末とのセット売りが増えている。あえてSIM替えを推す理由は?

有泉氏
 我々も端末は売っている。だが端末を長期に使う人が増えており、SIMだけ替えたいという人が増えていくのでは、というのが我々の読みです。

――今回は既存プランをアピールする形だった。SIM替えを促進するための次の手は?

有泉氏
 まだお知らせはできないが、考えていることはある。

――auからSIM替えというのも考えているとのことだが。

有泉氏
 まずはお客さまの選択肢を増やす。中立の立場で打ち出していこうと考えた。

――サポートに注力し、テレビCMも展開するがKDDIが親会社になった恩恵か?

有泉氏
 KDDIではなく、当社のコストでやっている。私が若いころはBIGLOBEのプレゼンスは圧倒的だったが、この2~3年、活動が沈静化していた。ブランドをリブートしたい。そのためにお客さまの懐に入っていくサポートなどもやらなければいけないのではないか。BIGLOBEはかつてPC教室も手がけ、わからないことがあればBIGLOBEへ、という時代もあった。スマホ教室の狙いはそこのポジションに戻していきたいということ。

――BIGLOBEのブランド力はある程度高い年齢層ではないか。一方でCMは若年層に向けた印象がある。

有泉氏
 サービスとしては全ての年齢層を狙っている。以前は40代から上という形だったが、最近のユーザーは30代、20代にも拡がりつつある。エンタメフリー・オプションの効果かわからないが、格安SIMの利用意向は30代以下にも増えており、今回はあえて若い層に向けて、もう一度フレッシュな目でBIGLOBEを見てもらおうということで、若手俳優を起用した。

――CMのテイストがKDDIグループ感があった。社名やブランド連呼、3人の起用とか。

有泉氏
 そう見えますか(笑)。そこまでは想定していなかった。

――KDDI側のリソースをBIGLOBEに活用して効率化する取り組みは?

有泉氏
 それはまだまだこれから。BIGLOBEにないノウハウやナレッジがあれば率先して吸収する。まずBIGLOBEとしての独り立ち、ブランドを磨く。KDDI側とのシナジーはまだまだ。

――リアル店舗はまだないと思うが、今後は?

有泉氏
 ビックカメラやヨドバシカメラ、キタムラといったパートナーと展開している。自社Webサイトに集客して獲得するのがBIGLOBEの色だった。今はバックヤード、マーケットオートメーションのような仕組みを磨いている。お客さまに来ていただく仕組みをうまく使って、Web側で集客していくところを磨きたい。

――楽天に買収されたFREETELは大きな赤字を抱えていた。同程度のユーザー規模であるBIGLOBEは?

有泉氏
 早くブレイクイーブンポイント(損益分岐点)に持って行くのが私のミッション。BIGLOBEには光回線、バリュー、法人などの事業がある。MVNOだけがブレイクイーブンにいっていない。黒転させるのがミッション。

――契約者数で言うとどれくらいで損益分岐点に?

有泉氏
 環境などによるため一概には言えないが、今の料金体系では、三桁(100万台のことと思われる)はいないと難しいのではという肌感覚はある。

――何年以内に?

有泉氏
 自分の中でミッションだと思っているが、2020年にはなんとか、と思う。

――iPhoneは取り扱うのか?

有泉氏
 何も決まっていない。

――KDDIパワーでUQのように扱えないのか。

有泉氏
 まったく何も決まっていない、ということで(苦笑しつつ)。

――iPhoneに魅力を感じていないわけではないのか。

有泉氏
 あれだけの魅力ある端末ですから……うちのほうで扱う形には今のところ決まっていない状況です。

――KDDIに買収された際には、通信以外の領域でのシナジーという話があった。進捗は?

有泉氏
 au経済圏などの話があって、一翼を担うミッションがある。まだ赴任して半年で、BIGLOBEとしての色を再確立することにフォーカスしている。シナジーなどはまだ検討段階で発表できる段階ではない。