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「Pokémon GO Fest」レポート、現地参加者に“伝説ポケモン”ルギアがプレゼント

 22日、米シカゴで、スマートフォンゲーム「Pokémon GO」のリアルイベント「Pokémon GO Fest」が開催された。事前の予告では、一定のチャレンジをクリアすれば“伝説のポケモン”に挑める、とされていたが、最終的には参加者に“伝説のポケモン”「ルギア」が配付されることになった。

 20ドルで発売されたチケット2万枚が30分で売り切れ、6~7割がシカゴ以外から訪れたというこのイベントは、ナイアンティック主催のものとしては初めてのリアルイベント。2016年夏のサービス開始からちょうど1年を迎え、ボスポケモンに挑むレイドバトルやリニューアルしたジムバトルなど、最近になって立て続けに導入された新機能を、1つの公園に集まって楽しむ形だ。8月には横浜でも「Pokémon GO」のイベントが予告される中、伝説のポケモンがなぜ配付されることになったのか、シカゴでは何か起こったか、レポートしよう。

RFIDとQRコードで

 2万人分のチケットが販売されたという「Pokémon GO Fest」は、会場となったシカゴの大規模な公園「グラントパーク」の一角を占めて実施された。公園そのものは出入り自由だが、「Pokémon GO Fest」の会場はフェンスで区切られ、イベントのために設置された専用ゲートからのみ入場できる形。

 参加者は「Pokémon GO Fest」専用で、RFIDタグを内蔵したリストバンドを身に着ける。入退場の際にはゲートにあるリーダーにかざすという仕組みだ。リストバンドは当日受け取るほか、前日には米携帯電話事業者で「Pokémon GO」のスポンサーでもあるSprintの一部店舗で受け取れるようになっており、記者が訪れた店舗では100人以上が行列を作っていた。

 リアルでの入退場はRFIDで管理する一方、ゲーム世界では、参加するトレーナーと、参加チケットを持っていないトレーナーをどう区別していたのか。実は今回、参加者にはQRコードが配付されており、それを読み取ればイベント参加を示すメダル(実績を示すアイコン)がもらえるようになっている。このQRコードが参加者/非参加者を分ける仕掛けでもあった。つまりQRコードを読み取れば「Pokémon GO Fest」のコンテンツを表示できるようになっていた。

ポケモンを集めてボーナスをゲットせよ!

 予定よりも1時間ほど早めて、23日9時ごろに開場。中には充電設備も設置された陣営ごとの休憩スペース、トレーナーのスマートフォンを繋げてジムバトルの様子を表示する巨大ディスプレイ、Pokémon GOのAR機能を模した撮影スペースなどが設置されている。急病人を受け付ける場所ももちろんある。

多くのトレーナーであふれた
boost mobileのブース
スプリントブースでは来場者にプレゼント
フードコート
アイテムショップのすぐ横にはATMが臨時で設置

 ゲーム内では、イベント限定のポケストップ、ジムが用意された。また会場内は、特定の場所には「ほのお」系、別の場所ではまた違う系統のポケモンが出現しやすい設定になっていた。

ボーナスの内容
ポケモンを捕まえることでミステリーチャレンジが開示される、と案内

 11時からは、事前に予告されていたとおり、特定の種類を集めることでボーナスがもらえるチャレンジイベントがスタート。参加者が集めた種類のポケモンのうち「くさ」ポケモンが多ければ「星の砂」が多くもらえる、といったボーナスが、シカゴのプレイの結果によってグローバルで影響するというもの。さらに捕まえたポケモンの数に応じて何か起こる……と案内された。こちらは直前に発表された「伝説のポケモン」の出現に繋がるものと見られ、会場内のトレーナーの奮起を促すものだ。

プレイできない

 ところがチャレンジイベントが案内された10時半になる前から、会場内のいたるところから「Wi-Fi!」といった言葉が挙がるようになる。筆者やその周囲を見ると「Pokémon GO」がプレイできない。つまり携帯電話のネットワークが繋がらないことから、代替手段として、Wi-Fiでプレイさせろ! と「Wi-Fi!」と叫ぶ人が出てきたのだった。

記者のスマホももちろん繋がらない

 当初はPokémon GOのサーバーの容量不足のように思えたが、数時間にわたりPokémon GOのみならず、他のアプリまで通信できなくなったことから、現地携帯電話会社のネットワークそのものの収容力が不足していたようだ。日本でもかつては花火大会など大規模なイベントがあれば必ず繋がりにくくなったものだが、まさに同じ状況がシカゴで再現された格好。イベント開始にあわせた10時半過ぎ、ナイアンティックCEOのジョン・ハンケ氏がメインステージに登壇すると、繋がりにくくなってプレイに支障を来たしているトレーナーからは会場からは大きなブーイング。これにハンケ氏は改善を約束すると、参加者からは期待の声があがったが、しばらく、繋がったり繋がらなかったりといった不安定な状況が続く。

ハンケ氏
登壇後はトレーナーと交流

 記者が使っていたiPhone(au回線でAT&Tにローミング)も一時、Pokémon GO以外のアプリも通信できない状態に陥ったが、14時過ぎになって、ようやくPokémon GOにログインできるようになった。それでもレイドバトルに挑戦しようとするとエラーばかり表示されたり、再び繋がらなかったりすることもあった。

 イベント開始から4時間以上が経った時点で、少なくないトレーナーが満足にプレイできない状態になったようだ。会場内のブーイングは、時間が経つに従って、徐々に怒号混じりとなり、不穏な空気さえ感じ取れるようになった。

チケット返金、そして伝説のポケモンは……

 そこでナイアンティックでは急遽、「チケット代20ドルの返金」「さらに100ドル分のコインをプレゼント」といった対応を発表。また、会場内では「アンノーン」など珍しいポケモンが出現していたが、会場周辺2マイル(約3km)四方で24日(月)朝まで、イベント参加者限定でレアポケモンを出現させることもあわせて発表された。

レアポケモンの出現などが発表されたことで、会場から去る人も増えた

 参加者はイベント参加メダルを取得するためQRコードを読み取っており、その仕掛けを使ってトレーナーを絞る形でレアポケモンを出現させるというわけだ。

 そしてイベント終盤の17時を迎えるころになって、「伝説のポケモン」についてのアナウンスがあった。それが冒頭に触れたイベント参加者に対する「ルギア」のプレゼントだ。事前の案内ではレイドバトルも行われると見られたが、満足にプレイできない環境であり、急遽、方針を変更したと見られる。それまでは、ブーイングもたびたび発生していたが、ルギアのプレゼントが発表されるやいなや、会場のトレーナーたちからは歓びにあふれた声が挙がり、ナイアンティック側の対応にひとまず満足した様子のように思えた。

ルギアがプレゼントされると発表された瞬間、会場は歓声に包まれた

 またあわせて、ルギア、そして伝説のポケモンのうち「フリーザー」がレイドバトルに登場することも明らかにされた。今後48時間以内に日本を含むグローバルでそうしたレイドバトルが発生するようになる見込みだが、詳細はナイアンティックから発表されるようだ。

日本ではどうなる?

 8月には横浜でのポケモン関連イベントにあわせて、Pokémon GOのイベントも開催される。その詳細は今後あらためて案内される見込みだが、気になるのは、こうした障害が日本でも起き得るかどうかだ。

 そもそも今回のシカゴのイベントは販売されたチケットが2万に達しており、それが広大な公園とはいえ一カ所にトレーナーが集中した。ナイアンティックでは、かねてより通信事業者とやり取りして、繋がりにくくなることはある程度想定して対策を進めたとのことだが、その予想を遙かに超えたがために、多くのトレーナーが強い不満を抱えるほどプレイに支障を来たす状態に至った。

 チケット返金などの対応が発表される直前、本誌ではナイアンティックの川島優志氏と須賀健人氏にインタビューをしており、ナイアンティック側ではサーバー増強などで対処していることが明らかにされた(インタビューの詳細は別記事でお届けする)。日本でのイベントもシカゴでの経験が活かされるだろう。一方、携帯電話のネットワークについてはもともと日本の通信品質は世界でもトップレベルにある。今回、記者が米国滞在中に利用したAT&Tは、屋内に入ると電波が弱くなる場面が多々あり、エリア品質が日本ほどのレベルではないことが強く伺えた。また日本ではLTE-Advanced方式のような最新の通信技術が導入されており、通信容量の拡大が進んでいる。こうしたことから、きちんと関係者間で調整がされれば、シカゴでの障害のような状況を避けられるのではないだろうか。

多様な参加者

 会場には、カンサスシティから8時間かけてクルマでやってきた親子、ダラスやルイジアナ、ペンシルバニア、そしてカナダのモントリオールと別々の地域からやってきたものの、現地で初めて会って一緒に行動するようになった人などがいた。コスプレやチームカラーにあわせた衣装を楽しむ人々も多くおり、またその年齢層も幅広いように感じられた。

行列先頭の人は朝5時から並んでいたという
カンサスシティからの親子
ルイジアナから着たという2人
シカゴ近郊に住むノリノリの2人
さまざまな地域から来て、初対面ながら一緒に行動していた5人
ポケモンに扮す人も
1年間ずっとプレイしてきたという2人。レベル32だった
コイキング型のニット帽をかぶった人。コイキングのかぶり物を身に着ける人はほかにもちらほら

 通信面で残念な形となったものの、「Adventure on Foot with others」(誰かとともにその足で冒険を)というナイアンティックの掲げるコンセプトが、まさに体現されたイベントだったのは間違いない。「Pokémon GO Fest」ではレアなポケモンに数多く出会えたが、それだけではなく、ポケモンという日本から生まれた世界に冠たるコンテンツを通じて、世界のさまざまな人々と出会い、交流できる機会にもなっており、日本でも一度だけではなく、継続的にそうしたイベントが開催されることを期待したい。