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“クラウドSIM”でリモート設定、国内外で使えるモバイルルーター「G3000」

 BroadLineは、日本国内のほか約100カ国で利用できるモバイルWi-Fiルーター「G3000」を7月21日に発売する。価格は1万9800円(税抜、以下同)。家電量販店などで取り扱われる。

 「G3000」は、SIMカードの情報をクラウドで扱うSIMクラウド技術と、香港のGWiFi社のシステムを利用し、国内外でSIMカードを入れ替えることなくLTEなどのモバイル通信が利用できるルーター。必要な通信量を購入して利用する形となり、基本料や解約料はかからない。また1日あたりの通信制限がない。日本での通信量は購入後30日間有効。一方、海外分は1日単位で購入する。「G3000」にはSIMカードスロットもあり、好みのSIMカードで利用することもできる。LTE対応バンドは1/2/3/4/5/7/8/17/19/28A、最大速度は下り150Mbps。2800mAhのバッテリーを内蔵する。大きさは100×70×15mm、重さは150g。

 「G3000」を購入したあと、会員登録を行い、ルーターのシリアルナンバーを入力するなどユーザー情報と購入した端末を紐付ける。その後、必要なデータ通信量を購入する。海外で利用する場合は利用する国や使用予定容量をあらかじめ会員サイトで入力する。

 利用料は3GBで1480円、5GBで2280円など。海外ではエリアによって異なり、対象国Aでは300MBにつき1日580円、500Mにつき680円など。海外で利用する際、申し込み時点では決済が完了しておらず、そのまま使わなければ請求されない。ルーターの電源がONになり、通信すれば、その実績に基づいて請求することになる。

 2017年中には対応エリアが120カ国に増える見通しとのことで、主にアフリカ方面でエリアが拡大するという。各地の事業者とは、仕組みの一端を提供するSimgo社と、GWiFi社が交渉している。

クラウドSIM、標準規格に準拠

左からBroadLineの長岡氏、Simgoのスルーシュ氏、GWiFi CEOのKenny Wing Kin, WONG氏

 BroadLine代表取締役社長の長岡守氏は、「G3000に内蔵されたモジュールと、独自のCMSシステムを組み合わせ、個別設定をリモートでカスタマイズできる」と語る。日本でも海外でも、現地で利用するキャリアのSIMカードのプロファイルをダウンロードして利用する形。日本ではいわゆるMVNOは介さず、ローミングでもなく、大手キャリアのSIMカードとして振る舞うため、通信速度は大手キャリアの通常のSIMカードと同等になるという。

 クラウドSIMのような仕組みを使う類似サービスは既に存在するが、長岡氏は、個別のAPIを使って、パケット容量や使う期間、どこの国で使うかリモートで全て設定できることを挙げる。

 なお、2016年第4四半期(10月~12月)には通信契約を結んでいない状態でも、G3000からBroadLineのサイトへ無料でアクセスできるようにする。海外渡航時に利用できる回線がなくとも、G3000を使ってその場で契約する、といった使い方ができるようになる。

 仕組みの一端を提供するSimgoによれば、クラウドSIMの仕組みは、GSMAが定めたeSIM(リモートSIMプロビジョニング)に準拠したものとのこと。ただG3000に内蔵されているモジュールの詳細など、詳しい内容は明らかにされなかった。

 Simgoは2016年秋に札幌で開催されたスタートアップ対象のイベント「B Dash Camp」で優勝を果たしており、一部で注目を集めているとのことで、説明を行ったSimgo CEOのAvi Ben Shlush(アビ ベン スルーシュ)氏は、国内外を良く旅する人というコンシューマーや海外出張などの法人といった用途のほか、将来的に車載端末、あるいはIoTデバイスといった機器でクラウドSIMを使うことで、SIMカードの交換が必要なく、利便性が高まると解説する。