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従来比2倍も、クアルコムが「Snapdragon 835」の詳細を北京で解説

Xperia XZ Premiumにも搭載の旗艦プラットフォーム

クアルコムがSnapdragon 835を解説

 米クアルコムは22日、中国・北京で同社の新しいモバイルデバイス向けプラットフォーム「Snapdragon 835」の詳細な解説を行なった。

 「Snapdragon 835」はスマートフォンだけでなく、VR/AR用ヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのなど、モバイル・IoT機器全般に適した“モバイルプラットフォーム”としての位置付けをより鮮明にし、さまざまな分野のモバイルデバイスで高いパフォーマンスを発揮することをアピール。リファレンス端末による実際のベンチマークテストでは、前世代の「Snapdragon 820」と比べ、一部ではおよそ2倍もの性能を叩き出した。

イベント会場の様子
Qualcomm Technologies Marketing部門のSenior Directorを務めるMike Roberts氏が解説した

基本性能はもちろん、VR/AR、オーディオ、人工知能も高機能・高精度に

 クアルコムのSnapdragon 835(MSM8998)は、モバイルデバイス向けチップセットとしては初となる10nmプロセスで製造された、30億個以上のトランジスタを内蔵する新世代モバイルプラットフォーム。前世代のSnapdragon 820/821と比較して、大幅に処理速度を向上させたCPUの「Kryo 280」と、GPUの「Adreno 540」を採用し、機械学習をサポートするHexagon DSPに加え、ギガビットクラスのLTE通信を実現するX16 LTEモデムなどを統合する。より高機能、高性能、低消費電力を実現しながら、プロセスルールの進化などによりダイサイズ(チップの面積)は縮小した。

CPU、GPU、モデム、オーディオコーデックのほか、カメラ制御用のISPや機械学習をサポートするDSPなどを統合
モバイル向けチップセットでは初の10nmプロセスで製造される
左がSnapdragon 835、右がSnapdragon 820
Snapdragon 801との比較では50%もの消費電力低減を果たしているという

 具体的には、Kryo 280はパフォーマンス重視の4コアCPU(最大2.45GHz)と、効率重視の4コアCPU(最大1.9GHz)が組み合わされたオクタコア構成となっており、従来より高い処理性能と低消費電力を両立。

 GPUのAdreno 540は前世代からグラフィックスレンダリング性能を最大25%アップさせた。映像面ではHDR10に対応し、対応ディスプレイへの出力時により高い色再現性を発揮する。

パフォーマンス重視の4コアと効率重視の4コアを組み合わせたオクタコア構成
ゲームなどの3Dグラフィックスの処理性能が最大25%向上
HDR10に対応し、微妙な階調を滑らかに表現するなど、高い色再現性を実現する

 通信周りは、X16 LTEモデムがダウンリンクにおいてLTE Category 16に対応。3波キャリアアグリゲーションに、256QAM、4×4 MIMOという3つの技術を掛け合わせることで、理論値の最大速度は979Mbpsに達する。

 Wi-FiにおいてもMU-MIMO対応の2×2 802.11ac(11ac Wave2)と、近距離高速通信規格の802.11adに対応。LTEのアンテナとWi-Fiのアンテナは一部を共用できるようにし、端末の筐体サイズを抑えながら設計できる工夫も加えられている。

X16 LTEモデムにより最大約1GbpsでLTE通信が可能
街中で従来のCat 6と新しいCat 16による一般ユーザーの通信が混在しているときのシミュレーション
Cat 6など従来方式での通信が多い状況だと、Cat 16では100Mbps弱で通信が可能
Cat 16で通信するユーザーが多いと、効率は高まり、全体的に通信速度がアップすると見る
4K解像度の360度映像のオンライン再生にも対応する。ビットレートは100Mbps以上

 カメラを制御するSpectra 180 Camera ISPは、広角用と望遠用の2つのカメラセンサーを同時に扱うことができ、スムーズで高精細な光学ズーム機能を実現する。ジャイロセンサーによりヨー方向(上下方向を軸とした回転運動)とピッチ方向(左右方向を軸とした回転運動)のブレ軽減が可能で、動画撮影時はローリングシャッター歪みも軽減する。

広角用と望遠用の2つのセンサーを制御し、滑らかな光学ズームを実現
意図的に振動を発生させ、ブレ補正がオンの時とオフの時とで、映像の見え方が異なることがわかるデモを行なっていた

 年々注目が高まっているVR/ARに対しては、ヘッドマウントディスプレイなどにおいて「6DOF(6 Degrees of Freedom)」による高速かつ高精度なモーショントラッキングを可能にする。上下左右前後方向の動きに加え、各軸の回転運動も認識し、仮想空間内でユーザーの動きを正しく反映させることが容易になる。

「6DOF」により高速、高精度なモーショントラッキングが可能
ヘッドマウントディスプレイのカメラセンサーを利用して、ユーザーの手の動きを正確にトラッキングできるように
ヘッドマウントディスプレイの“額”にあたる部分にカメラセンサーが内蔵。これによりユーザーの前後左右移動や手の動きをトラッキングする
VRスコープを使った体験デモ。ユーザーが歩いて動き回ると仮想空間でも歩き回ることができる

 オーディオは、Aqstic Audioという名称で、オーディオチップ「WDC9335」を統合。立体音響のためのオブジェクトオーディオとシーンベースオーディオをサポートし、PCMでは最大384kHz/32bitのハイレゾ音源や、DSDフォーマットにもネイティブで対応した。Bluetoothで利用できる、クアルコム開発の高音質コーデック「aptX HD」も利用できる。

据え置き型DACとクアルコムのリファレンス端末の両方で、DSD音源を聞き比べできるデモ。ブラインドテストでは据え置き型DACの方がわずかに音の広がりがあるように感じたが……

 ヘッドフォン内蔵のマイクと連携しノイズキャンセルも行なえる。会場ではコネクター部分にWDC9335のチップを単独で内蔵するだけでノイズキャンセルを実現したヘッドフォンのデモも披露していた。

WDC9335によるノイズキャンセル機能のデモ。コネクター部分にWDC9335が搭載され、ヘッドフォン側のマイクと連携してノイズキャンセルする。実際に視聴すると、効果的にノイズが低減されていることが実感できた

 Hexagon DSPは、機械学習による高速・高精度な物体認識、音声認識を実現する。機械学習フレームワークのCaffeとTensorFlowをサポートし、人工知能技術による処理を効率化する。また、Haven Security Platformでは、指紋認証と音声認証に加え、人物の目と顔を元にした認証にも対応した。

機械学習フレームワークのCaffeに加え、GoogleのTensorFlowもサポートした
CPUのみでの物体認識と、GPUでの物体認識とでは、後者の方が明らかに高速。DSPを使用するとさらに高速になるという
奥にあるスピーカーで環境ノイズを再生しながら、ボイスアクティベーションの応答精度をチェック。Hexagon DSPを利用した方が高い精度を示していた
顔および目を元にした認証も可能に。サングラスをかけていても認証OK
紙にプリントしたものでは認証不可
立体的に作ったお面でも認証はできない
音声認識機能により、声をパスワードにすることも可能になった
登録してある本人が特定の言葉をしゃべると、認証OK
しかし他人が同じ言葉をしゃべっても認証は通らない
マルウェア入りのアプリを実行しようとすると、自動で挙動を判定して警告を発するセキュリティ保護機能にハードウェアレベルで対応。ゼロデイ攻撃にも対処できる

 充電速度はさらに高速化される。新規格の「Quick Charge 4.0」により、わずか15分の充電で50%(2750mAh容量時)まで回復することが可能。USB-PDとUSB Type-Cにも当然ながら対応する。

Quick Charge 4.0では、15分の充電で50%までバッテリー残量を回復する

 Snapdragon 835が採用される予定のデバイスは、すでにいくつかが明らかにされている。ギガビットクラスのLTE通信に対応する端末としては、ソニー(Xperia XZ Premium)、ZTE、モトローラの3社から発売されることが決定済み。

 インフラも日本、韓国、米国、オーストラリア、ヨーロッパ、ロシアなど11カ国の通信事業者15社が対応を進めているか、もしくは一部で商用サービスを開始している。

 さらにVR/ARヘッドセット(グラス)としては、サンフランシスコに本拠を置くスタートアップ企業Osterhout Design Groupの「ODG R-8」などが開発中であり、中国企業のGoertekと、クアルコムと中国Thundersoftとの合弁会社であるThundercommの2社も、ODM生産を計画している。

ソニーはSnapdragon 835搭載スマートフォンとしてXperia XZ Premiumのリリースを予定
ソニーを含め3社がSnapdragon 835搭載のギガビットLTE対応デバイスを開発中。世界の15の通信事業者が対応を計画・実施済み
米ニューオーリンズ(Sprint)とオーストラリア(Telstra)の一部では、ギガビットLTEの商用展開が始まっている

マルチコア性能の向上が目立ったベンチマーク結果

 発表イベントでは、リファレンス端末(Qualcomm Reference Design)を用いたベンチマークテストも実施できた。結果は以下の通りで、特にCPUのマルチコア性能とグラフィック性能が大きく向上していることがわかる。いずれ登場することになる製品でも高いパフォーマンスを発揮することが期待される。

ベンチマークテストの結果
Snapdragon 835Snapdragon 820
AnTuTu Benchmark181228121861
Geekbench 4 シングルコア20482065
Geekbench 4 マルチコア64845367
GFXBench 4 Car Chase884.1(15fps)558.5 Frames(9.4fps)
GFXBench 4 Manhattan1219(20fps)886.0 Frames(14fps)
GFXBench 4 T-Rex3346(60fps)1712 Frames(28fps)
Kraken Javascript Benchmark2327.8ms2464.3ms
Octane 2.0 JavaScript Benchmark1417011742
SunSpider JavaScript Benchmark229.3ms-
3DMark(Sling Shot)3840-
PCMark8042-

※Snapdragon 820のベンチマーク結果は2015年12月のもの
※ベンチマーに使用した端末の大まかな仕様は以下の通り
OS:Android 7.1.1
チップセット:Snapdragon 835 MSM8998
ディスプレイ解像度:1440×2560
メモリサイズ:約6GB

リファレンス端末でベンチマークを実行。CPU性能を測るGeekbench 4やPCMark、グラフィックス性能を判定する3DMarkなどで高いスコアを示した